東京都内の某SIベンダーの共通技術SE。現在社会人大学院に在学中。

この先、生き残っていけるのかしら?

»

 30才を超えたあたりから、なんとなく将来を考えることが多くなってきました。技術力はもちろんですが、何ができれば、この先、生き残れるんだろうか、とか、そんなことです。

 考え出すといろいろ出てきて、例えば「数字に弱い」(理系なのに……)とか、「あちこち痛い」(まだ30代前半なのに……)とか、いろいろあって困るぐらい。といういか、思わずしょんぼりしてしまったりしてたのですが、いろいろ考えたうえで、結論としてたどり着いたのが、

 【経験のないところでも理論的に考えていく力】

 これが、ずばりこの先も生き残っていくために必要だと思いました。

■普遍的な技術、ノウハウってなんだろう?

 ある日、こんな質問を受けました。

 「XXをやりたいんだけど、どう考えていけばいいか?」

 これだけだと、具体的に何に困っているかわからないので、わたしが、「何が課題ですか」と聞くと、

 「これから検討していくので、まだ課題はわからないので、一般的な考え方を教えてほしい」

というような答えが返ってきました。具体的なシーンが想像できないので、「うーん、例えばここではこんなことをやった、っていうことはいえるけど、“一般的な考え方” かぁ」ということで、困ってしまったことがありました。

 この、“一般的には”って、けっこうくせ者だと思っています。経験や事例は話せるけど、“一般的な考え方”を聞かれると困ってしまう、こんなこと、皆さんも経験ありませんか?

 その時は、業種違いではありますが、詳しそうな人に来てもらって、いろいろ語ってもらいました。その時感じたのは、「この人はきっとずーっと飯食っていけるなぁ」ということでした。

 じゃあ、自分と何が違うのかな、と考えてわたしなりにたどり着いた結論は、

 「この人は、自分の中でちゃんと整理できていて、ノウハウが普遍化しているのではないか?」

ということでした。経験だけだと、前提条件が違ってしまうとそこでおしまいですが、いろんな経験を整理・昇華して、前提条件が違っても、「変わらない考え方」として、普遍化? というか、概念としてちゃんととらえている、ということかな、と思ったわけです。

■モデリング、ということ?

 事例は役に立つ、もっとも必要とされる情報ではありますが、その背景(たとえば業務の特性、規模、利用者数/層、性能……)で、実現方式が全然変わってしまって、「ぴったり合う」事例って、なかなか見つからないのが現実です。

 経験はもっとも重要ですが、変化の早いこの業界。技術トレンドがどんどん変わっていく中で、経験や事例は数年すれば陳腐化してしまって、使い物にならなくなってしまうような気がしています。一方、自分を振り返ってみると、まさに「経験で勝負」している状況で、数年先のことを考えるとそら恐ろしくなってしまいました。

 やっぱり、さまざまな経験を、“概念”として、自分の中で形を作っていく、この辺をしっかり見直さないとなぁ、と思ったわけです。

 「概念」といってしまうと、何となく上流工程技術チックですが、たとえば開発言語のスキルでもにたような話かと思います。 

 言語って、どれか1つちゃんと覚えれば、割と流用効くじゃないですか? これって、言語特性によらない概念(考え方)としての、「プログラミング技術」とか、「アルゴリズム」の考え方が身についているからではないでしょうか?

 それが頭の中に入っていると、あとは、「この言語でどう書く?」「こんなAPIあるかな?」っていう、言語特性だけの話になるわけです。だから、どれか覚えていると、言語が変わっても何となくコード読める、習得も早い、ということですよね(きっと)。

 で、「概念でとらえる」、ということで、ふと気づいたのですが、これっていわゆる「モデリング」だよなぁ、と思ったわけです。

■外部刺激とシミュレーション

 さて、じゃあ自分の経験をモデル化、っていっても、はっきりいってどうすればいいかさっぱりわからなかった訳で、あの手この手を思いつくままに試している訳ですが、とりあえず効きそうかなと思っていることが2つあります。

◆外部刺激をうける

 なにか考えるとき、やっぱり参考が欲しいですよね。ということで、まず1つ目「外部刺激」をうけることから始めました。

 その1つが、このコラムのタイトルにもある「社会人大学院」にいってみよう、ということでした。

 自分でこつこつできればいいのですが、根がめんどくさがりやなので、強制的にそういう環境に身をおいてみたわけです。改めて、世の中の一般的な考え方やすでにあるメソドロジー、この辺をちゃんと見返して、自分の経験と照らし合わせて、「ああ、この時考えたのはこういうことだったのか」といったところを見返してみる、非常にいい機会だったと思います。

 しかし、学校も今年の2月で終わってしまい、そういう環境から離れてしまうとじっくり考える機会が少なくなってきます。で、やっぱり環境作りとして、研修を受けたり、無料セミナーにいったり、自学したり、というところは欠かせなくなります。

◆シミュレーション(妄想?)

 2つめ、これはよくやっているのですが「シミュレーション」してみるということです。シミュレーションっていうと大げさですが、例えば、「出身校に呼ばれて、全然知識のないような学生に情報システムとはなんぞやって説明して」って言われた、とか、そういうシーンを想像して、自分がそのことを話すとしたら、どう話すのか、っていうのを脳内シミュレーションしてみる訳です(人はこれを妄想っていうかもしれませんが……)。

 これは、脳みその中でできるので、密かにけっこうやっています。時々、セミナーとか研修の間にやりすぎて肝心の話が上の空になってしまうこともありますが、これ、わたし的にはけっこう効くとおもってます。

 まあ、余裕があればこれをマインドマップで思いのままに書き連ねてみたりしています。

■まだまだ先が長そうですが…

 と、ここまで書いてきて、「例えば」って話を書こうとしたら、ぱっと出てきませんでした。考えたことを忘れてる???

 うーん、なにかの形で形式知化する、ってことも必要そうです。まだまだ先は長そうですが、地道に「経験のないところでも理論的に考えていく力」を鍛えていこうと思っています。

Comment(2)

コメント

tetsu

はじめまして、32歳の組み込みエンジニアです。
自分も阿部さんと同じ悩みを日々感じております。
小さな会社でとりあえず日々の業務を懸命にこなしている。
時間ができたらスキル向上や情報収集を行っておりますが
将来が不安な毎日です。

社会人大学院に通っているってとても素晴らしく憧れます。

自分は九州なのでセミナーなども開催も少なく、首都圏の
方に比べて技術的に後れを取っているのではと不安な毎日です。

シミュレーションの話は大変参考になりました。
大学院も残りわずかですが、がんばってください。

阿部

tetsuさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

私自身は30才を境に現場の開発部門から、支援を行う共通技術部門に移ったのですが、自分で開発する立場から、いろいろ聞かれる立場になって、いろいろ考える機会が増えました。そこで気づいたのが、「経験している範囲でしか語れない」ということでした。経験は大事ですが、うまく汎化しておかないと、いつか廃れてしまうことに気づき、今回のコラムのようなことをずーっと考えていました。

逆に、現場から離れることで、実際のものづくり力は下がっていく一方で、汎化と深掘りをどうやって両立させていくのか、悩みつつやっている最中です。

セミナーの数とかは、確かに首都圏は数が多くて、参加機会は多いですね(私は秋田出身ですが、地元は皆無です…)
ご参考ですが、私は時々Oracleのインターネットセミナーを利用しています。インターネット経由で出来るのと、Oracle主催ですが、Oracle技術以外の、例えば財務経理みたいな話から、業務知識基礎のような話もあり、意外とおすすめです。

ちなみに、大学は2009年2月で修了してます(私の書き方が悪かったですね、すみません)。今年一年は振り返りの年にして、来年は科目履修生とか、業務の許す限りチャレンジ再開したいと思っています。

お互い、少しずつですががんばっていきましょう。

コメントを投稿する