イノウーの憂鬱 (24) 存続の危機
「イノウーくん」木名瀬さんはぼくを睨んだ。「あなたはマリちゃんに何をしたんですか」
以前も、こんな感じで木名瀬さんに詰問された気がする。ぼくはデジャヴを振り払って訊き返した。
「マリちゃんがどうかしたんですか」
「さっきTeams で連絡がありました」静かな声で木名瀬さんは説明した。「しばらく休みたいと」
「休みですか」ぼくは驚いて訊き返した。「体調不良か何かでしょうか」
「それはわかりません。返信してみましたが、既読になりませんでした。これまで休むときには、きちんと理由を添えてきていました。体調が悪いときでも、具体的にどこが悪い、という具合に。イノウーくん、昨日まで、例の特訓をやっていたんですよね。何か問題はありませんでしたか」
「ない......と思いますが」
ぼくは昨日の夜、会社を出たときのことを思い浮かべた。19 時頃、特訓を切り上げようとしたが、与えた課題が終わっていなかったため、マリは仕上げてから帰る、と言ったのだった。ぼくが先に退社したとき、マリは真剣な顔でモニタを見つめていた。
「その課題というのは?」説明を聞いた木名瀬さんは訊いた。
「DB の更新を絡めたロジックです。終わったらGIT にコミットしておくと言っていたんですが」
「ありますか?」
リポジトリを確認してみたが、マリがコミットした記録はなかった。そう言うと木名瀬さんは腕を組んだ。
「ということは終わらなかったということですね。その件について、イノウーくんに連絡は?」
「ありません」ぼくはTeams とメールの両方を確認してから言った。「そういう連絡を欠かしたことはないんですが」
「つまりマリちゃんは、課題を途中で放り出し、連絡もなく、今日になっていきなり休むことにしたというわけです。私の経験からすると、そのような行動を取るのは、だいたい精神的にキャパオーバーになったときです。改めて訊きますが、マリちゃんに何をしたんですか」
「特訓ですが」
「どんな風に特訓したんですか」木名瀬さんは時計を気にしながら訊いた。「もうすぐ課長が来ます。手短に」
壁の電波時計は9 時5 分前を指していた。伊牟田課長は人を待たせるのは平気だが、自分が主役の定例ミーティングには1 秒も遅れたことがない。ぼくは特訓の内容を簡単に説明し始めたが、半分も聞かないうちに、木名瀬さんは首を横に振った。
「イノウーくん。私、言いませんでしたか? イノウーくんは自分と同じスキルを周囲に求めている、と。イノウーくんがマリちゃんにやったのは、まさにそれです。Java に関してはほとんど初心者に近いマリちゃんに対して、プロ並みの成果を期待し、さらに要求したんです」
「でも」ぼくは反論した。「短期間で戦力にしてほしい、と言ったのはマリちゃんなんですよ。多少、厳しいぐらいは......」
「私にはテストファーストのメリットやデメリットはわかりませんが、マリちゃんのスキルで乗り越えられる試練だったのですか?」
「でも......」
「1 分前です」木名瀬さんはぼくの言葉を遮った。「続きは後にしますが一つだけ。今日からシステム開発室において男子は"だって"と"でも"は禁止にします。いいですね?」
ぼくが問い返す前に、伊牟田課長が勢いよく入室してきた。
「おはヨーグルト」
ぼくたちは口々に挨拶を返すと、それぞれの席に座った。伊牟田課長はマリの席に視線を向け、空になっている理由を斉木室長に訊いた。体調不良で休み、という答えを聞くと、ふーんと言いながら、意味ありげにぼくを見たが、揶揄するような言葉は口から出なかった。
「今朝はいつもとちょっと違った段取りでやるぞ」伊牟田課長は時計を見ながら言った。「これから大竹専務がお見えになる。君らを激励してくださるそうだ。心して傾聴するように」
数秒後、大竹専務が入室してきた。ぼくは興味を持ってマーズ・エージェンシーの実務上のリーダーを見た。これまで社内報やコーポレートサイトの画像でしか見たことがない人物だ。全体的に小柄な男性で、それほど特徴的な風貌ではないが、なぜかすれ違った後、振り返りたくなるような印象を受ける。今日も暑い日なのに、スリーピースにネクタイまできっちり締めていた。
大竹専務は伊牟田課長に小さく頷くと、ぼくたちの顔を見回した。
「おはよう」甲高い声が響いた。「すまんが君たち、マスクを外してもらえないか。顔を覚えておきたい」
その言葉に従い、ぼくたちはマスクを外した。大竹専務は一人一人の顔を数秒間ずつ見つめた後、マスクを着けるように言った。
「始めに言っておく。私はこのシステム開発室の設立には反対の立場だった」
その後に「しかし」とか「だが」などの逆接の接続詞が続くのだと思っていたが、その予想は外れた。
「その考えは今でも変わっていない」大竹専務は遠慮なく宣言した。「システム開発室の設置を認めるというのが、エースシステムとの事業統合における条件の一つだったので、私の一存で廃止するわけにはいかない。実に残念な話だと言わざるを得ない」
湧き起こったのは驚きというより疑問だった。エースシステムとの事業統合における条件? 何のことだ。ぼくは斉木室長と木名瀬さんを見たが、どちらも無表情だったので、今の発言について、どう考えているのかはうかがい知れなかった。
「ただし、君たちが役に立たないことを証明できれば、その条件の見直しを役員たちに要求する理由となる。その理由ができた場合、私は躊躇なく、このシステム開発室の廃止に向けて動き出すことを宣言しておく。今、エースシステムとの受発注データのやり取りと、受発注システムダリオスのリニューアルが動いていると報告を受けている。その結果を、私は非常に興味深く注視していることを忘れないように」
木名瀬さんが手を挙げた。
「よろしいでしょうか」
「木名瀬くんか」大竹専務は頷いた。「何か」
「なぜシステム開発室が無用だと思われているのか、その理由をお聞かせ願えますか」
大竹専務の目元が嫌悪で歪んだ。
「わからんのか。開発部門など誰も望んでおらんからだ。うちの会社ではプログラミングなどという下流工程に手を染める必要などない」
「開発業務を商品としているわけではありません。社内システムを社内の人間の手で開発、保守しようというだけのことです」
「そんなものは外注すればいい。会社のステータスというものを少しは考えたらどうだ。今は二次請け、三次請けがほとんどだが、いずれはK自動車クラスの企業の一次請けになることが目標だ。そのために求められるのは、下請けを厳密に管理するスキルであり、管理体制であり、社員一人一人の意識改革だ。システム開発室でプログラミングごっこをさせておく余裕などない」
「成果は出していると思います」気が付いたときには、挙手もせずに発言していた。「ごっこなどではありません」
「おい、イノウー」慌てた様子の伊牟田課長が怒鳴った。「お前の発言なんか求めとらんぞ」
なおも何か喚こうとした伊牟田課長の舌は、大竹専務によって沈黙を強いられた。
「君がイノウーか」大竹専務はぼくの顔をじっと見た。「成果とは具体的には何を指しているんだね」
「PC 貸し出し申請フォームや、検温登録フォームなどです」
「ああ、あれか。なるほど。君は成果の意味をはき違えているようだな」
「どういう意味ですか」
「今言ったシステムを外注したとして」大竹専務は落ち着き払っていた。「ベンダーが切ってくる請求書の金額より、君たちがかけた工数を給与に換算した額が小さくなるのか?」
ぼくは言葉に詰まった。そういう視点で自分の仕事を見たことはなかった。
「納期もそうだ。外注するよりも短期で開発ができるのか。もちろんシステムのクオリティを落とすことなく、だぞ」
「それは......」
「外注するよりも安く早く作り上げることができて、初めてそれが成果だと言えるんではないかね」
「......」
「伊牟田くんはどう思う」大竹専務は隣を見た。
「はい」伊牟田課長は勢い込んで言った。「厳選したベンダーに出せば、もっと安く作れたと思いますね。いえ、確実に作れていました」
「部門長もこう言っている。つまりイノウーくん、君がやっていることは、社の内部留保を無駄に消費していることになる。違うかね」
「土日も会社で勉強とやらをやっていたなあ」伊牟田課長は底意地の悪い声でぼくを糾弾した。「それで笠掛ちゃんは休んでるじゃないかな。人員を無駄に消耗させてると言われてもしゃーないな」
ぼくが何も言い返せないでいると、木名瀬さんが反論してくれた。
「失礼ですが、課長には実装レベルの工数を正確に算出することはできないのはないでしょうか」
「木名瀬さんか」大竹専務は視線を移動させた。「君も少し誤解しているようだな」
「どういうことですか」
「実装の工数など、なぜうちが正確に出す必要がある? うちの会社は、納期と予算を決定するだけだ。工数をどうするかは、案件を受ける下請けベンダーの問題ではないかね。その納期と予算でできない、というのであれば、できるベンダーを探せばいい。それだけだ。ベンダーなど星の数ほどある。このご時世だ。安くても受けたいというベンダーには事欠かん。うちの仕事の本質は、その調整スキルだ。プログラミングの知識など不要だ。全く、社長たちもなんであんな条件を付けたんだかな」
ということは、さっき大竹専務が言及した、エースシステムとの事業統合における条件というのは、社長か役員が出したのだろうか。マーズ・エージェンシーの役員は、代表取締役社長の牧野、取締役の有田、楽木、鈴木の4 人だ。社内では4 人の役員は、ほとんどお飾りのような存在として捉えられている。ぼく自身、直接対面したのは、入社時の役員面接で、鈴木取締役と顔を合わせたのが最初で最後だ。影響力もほとんどなく、各事業部における方針は、全て大竹専務の意志決定によって進むらしい。エースシステムとの事業統合も大竹専務の発案とリードによって実現したそうなので、それは事実なのだろう。
「たとえ本流でなくても、プログラミングの知識を持つ社員がいることは、決してデメリットではないと思いますが」
「デメリットだろうが」大竹専務は木名瀬さんに言った。「ソリューション業務本部かパートナーマネジメント本部で力を発揮すべき人材が、こんな小部屋で埋もれることになるんだからな」
「埋もれているわけでは......」
「木名瀬さんよ」不意に大竹専務の口調が変わった。「あんた、そんなことを心配している場合なのかね。他に心配すべきことがあるだろうに」
木名瀬さんは何も言わずに大竹専務を見つめた。その険しい横顔を見て、ぼくは日曜日に伊牟田課長から聞いた言葉を思い出さずにはいられなかった。
「もう行かなければならん」大竹専務は高価そうな腕時計に目を走らせた。「とにかくシステム開発室に未来などない、ということを言っておきたかった。これは親切な私の心遣いだと思ってもらいたい。通常であれば異動願いは年度末に受付となるが、ここに限っては期間を限定せず、随時受け入れる。将来を考えるなら、早めに決断することだ。私がこの部署を潰す理由を手に入れる前にな。その日は意外に早いかもしれんぞ」
そう言うと大竹専務は、ぼくたちをぐるりと見回した後、急ぎ足で出て行ってしまった。伊牟田課長が慌てて「おつかれさまでございました」と叫んだが、大竹専務は振り向きもしなかった。
「さてと」伊牟田課長は満足そうに振り向いた。「専務の仰ったことを忘れないように。私がコーディネートしたおかげだ。こうでねーとな。専務の意志は、これすなわち会社の意志と言ってもいいぐらいだ。会社が右と言うことを左というわけにはいかんことは君らにもわかるわな......」
ぼくはまだ木名瀬さんの様子が気になっていて、伊牟田課長には注意を向けていなかったが、次の言葉が耳に入った途端、一気に現実世界に引き戻された。
「......外注を基本方針にすることに決めた」
「失礼ですが」斉木室長が戸惑った声で訊いた。「それは具体的にはどういった......」
「わからんかなあ。イノウーや笠掛ちゃんがやってる開発なんかは、もうベンダーに落としていくってことだわさ」
「システム開発室を立ち上げたのは」木名瀬さんが静かに反論した。「経営トップの意志です。その意志に逆らうことになります」
「おいおい」伊牟田課長はせせら笑った。「さっきの専務のお言葉を聞いとらんかったのけ? ここに未来なんかないんだぜ」
「それでも正式に部門解体が決定されたわけではない以上、業務を放棄して外注することはできません」
「あのなあ......」
「外注先のベンダーというのは、マギ情報システム開発を想定してらっしゃるのですか」
「まあ、付き合いもあるからな」伊牟田課長は時計を見た。「おっとっと。今日は時間がなくなったな。会社からの連絡事項も特にはないから、今日はこれで終わりにするめいか。いいかに?」
誰からも異論が出なかったので、伊牟田課長は上機嫌で笑いながらシステム開発室から出て行った。残されたぼくたちは、顔を見合わせた。
「存続の危機ですね」木名瀬さんは他人事のように言った。「専務が明確に意思表示した以上、今、そこにある危機となりつつありますね」
「すぐにどうこういうことはないかもしれんが」斉木室長が呻いた。「困ったなあ」
「さっきの話なんですけど」ぼくは二人に訊いた。「エースシステムとの事業統合にあたる条件の一つ、というやつ。あれは、どういうことなんでしょうか」
斉木室長と木名瀬さんは視線を交わした。ぼくと同じ疑問を浮かべている様子ではなく、どう説明するかを相談しているような顔だ。
「お二人はこのことをご存じだったんですか」
「まあ」斉木室長が言った。「一応ね」
「知っていました」木名瀬さんも頷いた。「社長から直々に話がありましたから」
「どういうことですか」
「マーズ・エージェンシー」木名瀬さんが言った。「イノウーくんが入社したときにはマーズネットでしたが、なぜマーズなのか知っていますか?」
意外な問いにぼくは首を傾げた。
「知りません」というより、気にしたことがなかった。
「2001 年、社長の牧野さんがマキノ・ネットワークサービスとして、ネットワーク機器の販売、保守サービスを行う会社を創立したのが原点です。2003 年に事業再編成で主業務をソフトウェア開発に転換していますが、そのとき、牧野さんと、現取締役の3 人のイニシャルを取ってマーズネットに社名変更したんです」
牧野のM、有田のA、楽木のR、鈴木のS というわけか。この会社の歴史の一端だ。社史編纂室か何かに異動になったときには役立つかもしれないが、大竹専務の話とどう繋がるのかがわからない。
「以前、話しましたが、その後、受注開発で利益を上げることが難しくなったため、仲介サービスへと舵を切ったわけですが、社長以下の役員の方々は、今でも機会があれば開発業務を復活させたいと考えていらっしゃるんです」
「エースシステムとの事業統合がその機会だと思ったんだろうね」斉木室長が続けた。「聞いた話なんだけど、社長は最後の最後に、システム開発室を条件に滑り込ませたらしいよ」
「それから」木名瀬さんの目元が笑った。「イノウーくんも、キッカケの一つだったんですよ」
「はあ?」ぼくは驚いて訊き返した。「ぼくですか?」
「そうです。開発部門を立ち上げたところで、うちにはプログラミングができる人間がいません。いえ、厳密に言えば、いることはいるんですが......」
「へえ。誰ですか?」
「マーケティング課の茅森課長です」
あのVBA の人か。
「受注開発をやっていたとき、茅森さんはプロジェクトリーダーの一人でした。ただ、彼のスキルはVB6 で止まっているので、新しい開発部門には不向きです。だから、どうしてもプログラミングのプロが必要だったんです。今だから言いますが、菅井さんがイノウーくんをスカウトしたのは、実は開発部門の人材としてだったんです」
「......そうだったんですか」
「気付いていなかったかもしれませんが、普通、うちの中途採用はもう少し難易度が高いんです。役員面接で落とされることなどざらにあります。イノウーくんの場合、役員室の意向で、かなり手心が加えられていたと聞いています。もちろんイノウーくんの実力も評価されたことは間違いありませんが」
根回しはしておく、と菅井先輩には言われていたが、裏にそんな事情が隠れていたとは。言ってくれればよかったのに、と口にしかけて思い直した。もし、そんな事情があると知っていたら、転職そのものを考え直していたかもしれない。
「大竹専務はどうしてシステム開発室を潰したいんでしょうか」ぼくは訊いた。「受注開発をやっていたときは、部門のトップだったんですよね」
「それはわかりません。ただ外注してしまえばいい、と考えているのは、大竹専務だけではないんです。はっきり言ってしまうと、社員の大半は、システム開発室が明日なくなったとしても、それほど残念には感じないでしょうね」
「お二人は違うんですか?」
「私はうちの会社のなあなあになっている部分の是正に、システム開発室が役立つと考えているんです」木名瀬さんは微笑んだ。「パートナーマネジメント業務では、実装レベルの正確な評価ができないため、実力ではなく、見積金額だけでベンダーを選定する行為が当たり前になっています。安かろう悪かろうのベンダーにあたってしまうと、スケジュールの遅延やクオリティの低下が頻発し、結果としてうちは元請けの信頼を失い、ベンダーは次の仕事を失い、エンドユーザは満足感を得られない。これでは誰も幸せにはなれません」
「システム開発室が社内のシステムで実績を上げて」斉木室長も言った。「小さな案件で、見積や開発内容の精査に参加できるように誘導していく、というのが、最初の構想だったんだけどね。コロナのせいで、いろいろな案件が中止になったりして、予定が狂ってきてる」
「で、このままだとシステム開発室自体が消滅しかねない」ぼくは言った。「どうすればいいんでしょう」
「いくつか手を打ってはいるんですが、少し時間がかかります。そこで相談ですが、イノウーくん、時間を稼ぐことはできませんか?」
「具体的にはどうすれば」
「マギ情報システム開発を外すことができれば、新しいベンダーを選定しなければならず、時間が稼げます」
「外すって......」ぼくは木名瀬さんを見た。「どうやって」
「手っ取り早いのは、成果物のクオリティの低さを指摘することでしょうね。うちの社内システムとして使うことはできない、と」
「でっち上げろと?」
「必要ならば」木名瀬さんは面白そうに笑った。「でも、おそらくその必要はないと思いますよ」
「どうしてですか」
「いくつかのツテにマギの評判を聞いてみたところ、芳しくないものばかりでしたから」
でも、と言いかけて、ミーティング前に木名瀬さんに言い渡された禁止条項を思い出した。
「成果物ということは、一通りのシステムができあがった状態ですよね。その時点で難癖をつけたところで、伊牟田さんなら、そのまま通してしまいそうな気がしますが」
「でしょうね」木名瀬さんは頷いて同意した。「だから、早い時期にコードレビューを申し出るのはどうでしょう。規定だと言えば、先方は断ることができません」
「そんな規定ありましたか?」
「実はあるんだよ」斉木室長が言った。「コードレビューは、納品物の検査工程に明記してある。でも例外規定がたくさんあって、スルーされてるけどね」
「実際はコードを読める人間がいなかったというだけです」木名瀬さんがじっとぼくを見つめた。「でも、今はイノウーくんがいます」
どうやら選択の余地はなさそうだ。頷きかけたぼくは、あることを思いついた。
「マリちゃんも参加させましょう」
「ああ、いいですね。習うより慣れろ、と言いますから」
ぼくの中途半端な特訓よりも、マリには勉強になるはずだ。
「いつですか」
「m2A が運用開始となるのは、9 月1 日ですね。運用開始直後は修正が入る可能性がありますから、その前にしましょう。マギと調整してみますが、来週の頭ぐらいでしょうね」
(続)
この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。また、特定の技術や製品の優位性などを主張するものではありません。
コメント
匿名
自分からお願いしておいて
言うべき事も言わずに休むって…
匿名
上流下流なんて、こりゃまた高杉上級SEが好きそうなワード…
ちゃとらん
> 言うべき事も言わずに休むって…
いやいやいや、言わずにではなく、言えずにだと思います。
特訓してもらって、イノウー君の期待に応えられず申し訳なく思う気持ちと、できない自分に対する劣等感で、合わせる顔もない、と。
こんな状態でコードレビューにマリちゃんを誘っても、来たとしてもさらに精神的に追い詰められる可能性がありますね。
どうやって立て直すのか?
システム開発室の存続より、はるかに難問でしょう。
なんなんし
前回のひどい特訓法の伏線回収はやいなw
匿名
今回は意味深は引っ張り方がないな。
笠掛は休みます、と言っただけマシだろう。
しばらく、がどのくらいかわからないが、有給を使うなら理由とかは告げる必要はないからな。
匿名
真島ママおるな
匿名
>実際はコードを読める人間がいなかったというだけです
あー・・・
こんなクソコード納品したのに何も言われなかったんですか!?って驚愕した経験が・・・
匿名
休みの理由じゃなくて
できない理由、何がどうわからないか
です。←言うべきこと
あたしを真面目に鍛えてもらえませんか
まず戦力として独り立ちできることを目指しますんで。
血も涙もない鬼軍曹みたいに、あたしを指導していいですよ。いえ、指導してください
ここまで言っておいてすぐ逃げ出すとか。
口だけもいいとこ。
匿名D
マリについては責められないな。
イノウーのやってる特訓とやらが、そもそも的外れなんだし。
判断基準は、自分と同じ事ができるかどうか。
そして、後ろから撃つようにして難癖を付けている。
あんなモノ、特訓に値せんよ。
12回で、自分は失敗を温かく見守ってもらえた、
なんて回想しているくせに。
指導担当のくせに、マリがクチにしたことに甘えるばかり。
イノウーは、指導者として必要な要件を満たしているのか?
なんかイノウー君、責任転嫁ばかりが眼に付くんだが。
大竹専務については、これは突っ込みようが無いわ。
ラスボスとして頑張ってもらおう。
最初から部署を潰すそもそも設立も反対とのことだが、
かつては受注開発のトップ。どんなトラウマがあるのかね。
ちゃとらん
> できない理由、何がどうわからないか
> です。←言うべきこと
出来ない理由が判らない、何がどうわからないかが判らない…状態では?
そこで導き出した結論(できない理由)は、自分の能力が低い、ダメな人間なんだという風に思っちゃったんじゃないのでしょうか?
> 血も涙もない鬼軍曹みたいに、あたしを指導していいですよ。いえ、指導してください
イノウー君もマリちゃんがズタボロになっているのに、ケロッとした態度を取っているのは、その言葉を信じているからでしょうね。
> 口だけもいいとこ。
まあ、結果的にそういわれても仕方ないかもしれませんが、過去の経験から照らし合わせて出来ると思っていたのに想像以上にダメだったという事で・・・
でも、『逃げ恥』じゃないけど、ここですぐに逃げたのは正解だったと思いますよ。
予備役社内SE
出来ることなら、開発案件を行うなら、ソースコードコンペを開催して、コンペに勝ち残ったベンダーをパートナーとするのが良さそうなのだが・・・。「掘り出し物」と言ったら表現は悪いが、今まで知らなかった技術力のあるベンダーとであえるかも。もちろん参加ベンダーには、開催側がベンダーに対して工数費用を負担する、というのが出来ればいいのだが。
匿名
そんなに潤沢にお金、期間のある客にめぐりあいたいわ。
匿名D
大竹専務がクチにした、木名瀬さんの心配事ってなんだろね。
もしかして夫婦仲が不仲だとか?
匿名
イノウーの成長物語なのだから、
「現段階で」教え方やスキルに未熟な点があるのはしょうがないと思いますけどね。
この物語が終わったときに、また一段成長してればいいね、と生暖かく見守ってます。
今回、マーズの変遷やイノウーの入社背景などが判明して、面白かったです。
会社の方向転換を図るのに、たった1名の若手入社だけというのも、どうかと思いますね(笑)
木名瀬さんは、不倫とかじゃなければいいな、と思ってます。
いずれにせよ、業務上の話をしてるのにプライベートを臭わせて黙らせるなんて、最低ですね。
専務、初対面で「イノウー」呼びは、面白かったです。
藤井秀明
「マリが言うべきことを言わずに休んだ」のではなく、「イノウーがマリをそれくらい追い込んでいた」と捉えるべき事象でしょうね。
まぁ、上の方も言う通り、現段階で未熟なのは仕方のないことです・・・マリには可哀想ですが。
専務の話は面白いですね。
正しいか否か、一介の開発者が持つべき視点かっていうのは考える必要がありますが、マリへの教え方とダブってくるような話だと思います。
成果を主張するには外注との比較という視点が欠けていたのと同様に、マリに教えていると言うにはマリがどうかという視点が欠けていた。
成果では無く内部留保を無駄にしているだけなのと同じように、教えているのではなく厳しく当たっているだけ、といったように。
まぁまだまだここからですから、専務に逆転するようにイノウーの成長も期待したいところですね。
なんなんし
〉藤井秀明さん
〉成果を主張するには〜
仕事頑張ったという人のよくある勘違いなんですよね
成果物(output)と成果(outcome)は別物だよという
頑張ったかどうかの自己評価なんか関係なく
他人がどう判断するかなので
一介の開発者関係なく持っててほしいかな
とは思います
ほげ
いやいや、みんなマリの休みの理由を特訓のトラウマだと勝手に想像してるけど、理由は他にもあるかもしれないでしょう。
残ってたときに専務が来てなにか言われたとか、同期が来てなにか…とか。
最悪のケースとしては、強制的に山奥の研修会に参加させられたり…
それをイノウーが、かんざし片手に助けに行くんすよ(なにか混ざった)
それはそれとして、専務の言い分はムダ氏のいい加減さとは異なって、企業の倫理としては正論でもあるから
なかなか正面から否定するのは難しいかも知れないね。
匿名
次回は死の淵からよみがえったマリちゃんが、マギのコードレビューを焼き払う!
という展開を期待。
匿名D
>企業の倫理としては正論でもあるから
マギのぼったくりっぷりはすでに指摘されているわけだけれども。
まあ、伊牟田グチ氏で止まっているんだろうね。
不正確な情報の元で行使される「正しい倫理」って、
憤りを通り越して、ミジメ以外の何物でも無いと思う。
匿名
幹部「金額と納期がすべて」
現場「それだと外れ会社を引くリスクがある。目利き力をつけないと」
それに対する幹部の反論が聞きたい。
匿名
>それに対する幹部の反論が聞きたい。
幹部「外れたら選定した人間に責任を押しつける」
匿名D
幹部「我が社は外れなど引かない。ベンダーがしかるべきものを納品すればよい」
読み返してきた
検温登録フォームはかなり酷使されてたよ。
あれを外部ベンダが対応できるのか。
半ば野良サーバ化してたリソースの活用まで頭が回ったか。
社内リソースならではだったような。