テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

テストリーダーとして腹をくくった日

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 今月のお題は「尊敬しているプロフェッショナル」だそうです。

 わたしにはテストエンジニアとして、テストリーダーとして尊敬する先輩がいます。わたしが開発部署から今の評価部署に異動して、初めて携わったプロジェクトのテストリーダーで、過去のわたしのコラムにも何度か登場しています(このコラムとか、このコラム)。

 今回は、この先輩の忘れられないエピソードをお送りします。

■期限直前に襲い掛かるピンチ

 わたしが先輩からテストリーダーを引き継いだばかりのころのお話です。

 ある日、リリースチェックの作業の進め方を間違えて、このままでは開発チームが提示した期限の時間までに間に合わない、という状態になってしまいました。

 新米テストリーダーだったわたしは、こういうときにどうするべきか、自分だけで判断がつかなかったので先輩に相談しました。

 普段のやり方であれば、前のバージョンからの変更点を先に確認し、そのあとで回帰テストとして一通りの動作確認を行います。しかし先輩は、時間が足りない今の状況でリリースチェックを早く終わらせるには、テスト環境をすぐに準備できる回帰テストのほうから取り掛かったほうが得策だ、と言いました。

 しかし変更点の確認と回帰テストでは、変更点の確認の方がバグが出る可能性が高いのです。普通、リリースチェックでバグが見つかるのはそうあることではないのですが、この作業の少し前に、見逃していたバグがリリースチェックで見つかって、急きょモジュールを差し替える、ということが起こったばかりでした。

 もしテストの順番を変更して、後回しにした部分からバグが出てしまったら……というわたしの不安に対して、先輩は言いました。

 「そのときは、第3バイオリンさんが開発チームに謝るしかないね。バグが出ることと、時間に間に合わないこと、両方のリスクを天秤にかけてみたら、今回の場合は時間に間に合わないことのほうが重大だと僕は思うけど」

 切羽詰ったわたしは「でも……」と言ったきり、固まってしまいました。

■先輩の一言がわたしを変えた

 思考停止してしまったわたしに対して、先輩はこう言いました。このときの一言は、今でもはっきりと覚えています。

 「ここはリーダーである第3バイオリンさんが腹をくくるしかないんじゃない? とにかく、第3バイオリンさんが指示を出してくれないと、僕も他の人も動かないからね」

 この一言がわたしの心に突き刺さりました。しかし同時に、この一言で何か吹っ切れたような感じがしました。そしてわたしは腹をくくりました。

 わたしはテストの順番を入れ替えて作業するようにテスターに指示しました。その結果、時間ぎりぎりでテストを終わらせることができました。幸い、テストを後回しにした部分からも、バグが出ることはありませんでした。

■腹をくくることがプロフェッショナルへの第一歩

 先輩の言葉は、わたしの中に「いざとなったら先輩が何とかしてくれるかも」という甘えがあったことを気付かせてくれました。

 先輩がこのとき突き放してくれたおかげで、わたしにテストリーダーとしての自覚が芽生えたような気がします。おそらく、このとき先輩もまた、わたしのために腹をくくったのだと今になって思います。

 自分が下した決断に対して腹をくくること、これがプロフェッショナルとしてのあるべき姿なのではないかと考えた一件でした。

Comment(2)

コメント

こんにちは、サトマモです。

「腹をくくる」

という言葉が大好きです。
自分も一度、お客様数十人を前に腹をくくらないといけない場面がありました。
今でも覚えていますし、自分の中でも何かが大きく変わった瞬間でした。
みんなどこかで、そういうガツンとくる経験があるんでしょうね。

第3バイオリン

サトマモさん

コメントありがとうございます。

>自分も一度、お客様数十人を前に腹をくくらないといけない場面がありました。
>今でも覚えていますし、自分の中でも何かが大きく変わった瞬間でした。
>みんなどこかで、そういうガツンとくる経験があるんでしょうね。

お客様相手ですか…それはプレッシャーも大きかったことと思います。
「腹をくくる」瞬間というのは、自分の足で、自分だけの道を歩き始める瞬間なのだと思います。
当時の私にとっては、テストリーダーとして本当の意味で自立を始めた瞬間でした。

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