新人進化論~よりよい新人時代を過ごすために~
今回は4月ということもあり、今月より新しく働き始め、いろいろな現実(?)を目の当たりにしているであろう新米エンジニアに向けて、わたしの新人時代の話と、わたしなりのアドバイスを送りたいと思います。
わたしが社会人としてデビューしたのは2000年で、就職氷河期と言われる世代になります。入社式で、社長が働くにあたって5つのメッセージがあると言って、結局、4つしかメッセージがなかったのを聞いて、「この会社大丈夫か」と不安になった覚えがあります。
入社した会社は典型的なSIerで、非常に仕事ができる人が何人か存在し、その人達を中心に新人や、2~3年目の若手がくっついていくというような会社でした。8割の社員は客先に常駐し、懇親会のたびに初めて会う先輩がたくさんいました。
入社後しばらくは、研修と勉強でかなり退屈な日々を過ごしていました。
1カ月ほどたち、会社の先輩2人がわたしより先に常駐していたところに、学生時代にJavaの経験がある(実際のところはありません……できる人のレポートをコピーしてました)という理由と、わたしの他に誰も立候補しなかったため、先輩達のおまけでわたしも常駐することになりました。
わたしの転機はこの常駐先でした。
【はじめての常駐】
当時のわたしのスキルはほぼないに等しく、ブラインドタッチができる程度でした。
サーバ、Linux、データベース、CSVなど、ミーティングで飛び交う単語はすべて分かりません。とりあえず、知ってる顔をしてメモってあとで調べる、というような毎日でした。
研修中は2人で1台という状況だったにもかかわらず、常駐先では開発環境として2台パソコンが与えられました。
「なぜ、パソコン2台がもいるの?」という状態でしたが、あとでサーバ用とクライアント用ということを理解し、「サーバって何?」から始まって、LinuxのインストールからWebサーバの構築まで、試行錯誤しつつ環境作りをしていました。
このときに「Try and Error」の癖がつきました。
当然、仕事をこなしていくのに、会社という場だけでスキルを磨くのでは追いつかないため、必然的に家でも勉強しなければ仕事ができない状態に。家でもパソコンに触れる機会が増えました。
OSといえばWindowsとUNIXしか知らなかったわたしがLinuxにはまり、毎日のようにいろんなディストリビューションをインストールしていました(当時好きだったディストリビューションはKondaraです)。
また、常駐先にいたエンジニアの方達は、本の買い方が豪快でした。
元来わたしは本嫌いでしたし、技術書は一般の書籍に比べると高く、購入するのをためらいがちでした。しかし、自分より技術のある人たちが本を買って勉強しているという事実を目の当たりにしたという焦りもあって、できるだけ読んでみたいと思った本は何も考えずに買うようにしていました。結果的には技術書に限らず、本を読んで知識を得て、自分なりの答えを見いだすという癖がつきました。
現在のわたしのエンジニアとしてのスキルは、この2つの癖のおかげだと思います。
こうして、わたしはたまたまこういった出会いや機会に恵まれ、エンジニアとしてなんとか生きてこれていますが、常駐先で1年間議事録しか書いていない、ずっと待機状態で勉強やたまのテストに借り出されていた、というような同期がいました。エンジニアとして採用されたのにもかかわらず、開発の経験をしないうちに嫌気がさして辞めていく同期もいました。
もちろん、会社の状態や景気にも関係することなのですが、IT業界で働いている人たちの多くが認識しているSIerの由々しき実態の1つだと思います。
(議事録を書くことやテストがエンジニアの仕事ではないという意味ではありません。それしかやらせてもらえないような会社が存在する、そういう実態を放置している会社が存在するという意味です)
【SIerで働く新人に向けて】
わたしは最初の会社に3年間所属しました。その中でもいいキャリアを積んでいる先輩、同期、後輩を見ていていくつか共通点があると感じていました。
その共通点を紹介したいと思います。
●なるべく目立つ
周りに顔と名前を覚えてもらわなければ、何も始まりません。さらに現実として、SIerはできる人のところにしかいい仕事は集まりません。
まずはできる人を探し出し、顔と名前を覚えてもらいましょう。
●よきメンターやロールモデルを見つける
社内でも社外でも構いません。目標とする人物を見つけることは、自分を客観視できるようになります。
●頭で考える前にやってみる
新人は何もできなくて当たり前です。頭でいくら考えてもなにもアウトプットは出てきません。
実際に手を動かしてみて初めて、やる気や興味がわくことのほうが多いです。
●技術で遊ぶ癖をつける
仕事上の技術だけでは補えないことがあります。なによりも遊ぶことで発見できるアイディアも多々あります。
●自分への投資を惜しまない
目の前の仕事はできて当たり前です。将来くる仕事をこなすためには投資が必要です。
●2~3年はワーク・ライフ・アンバランスで働く
プライベートをなくせとまでは言いませんが、 若いうちはがむしゃらに働く時期があっても良いと思いますし、この時期にエンジニアとして基礎体力をつける必要があります。
●顧客に成長させてもらう
顧客とは自分にとっての顧客です。つまり、社内の上司、先輩、実際のお客様、エンドユーザー、すべて当てはまります。
自分の顧客が自分に対して何を要求してるのかを把握し、その要求に答えることを念頭に置きながら、少しずつでもいいから良い意味で期待を裏切って成長していきましょう。
●背中で仕事をする
エンジニアは世間が考えているよりも泥臭い仕事が多く、自ら先頭に立って仕事をしなければいけないときがあります。
根性論になってしまいますが、そういったときにプロジェクトのスタッフがついてくるかは、背中で仕事をできるかどうかにかかっています。
SIerも様々なのですべてが当てはまるかどうかは分かりません。ただ、貴重な時期を無駄に過ごさないための予防策だと思って参考にしてもらえればと思います。
コメント
ビガー
はじめまして、ビガーと申します。
興味深く拝見しました。
新人時代に議事録やテスト(実施だけでしょうか?)を経験できる職場は
学生時代に情報処理を勉強してきた人にとっては幸運だと思います。
議事録はお客様が何を求めているかの全体像を把握や経緯が紐解ける重要な
リソースを構築する経験ができますし、テスト設計はシステム設計の漏れを
担保するためのある意味システム設計より重要であると思うためです。
しかしながら、現実にはテスト設計は上記のような位置付けとしている
プロジェクトは非常に少なく、「やりがい」を見出しにくいのは事実かと。
私見ですがSIerで新人時代を有意義に過ごす最も重要と思われることは、
「とにかく辞めないこと」、「自信をつけること」にあるかと。
どのような職場であっても、何のためにどのようなアウトプットをいつまでに出力するかを
真剣に考えて行動することを繰り返せば、必ず自信がつきます。
ただ、身体が資本ですから誰に何と言われようが休むときは徹底して休むというのも重要かと。
佐藤
ビガーさん、コメントありがとうございます。佐藤です。
ビガーさんの仰るとおり、議事録もテスト(ここではテスト実施もテスト設計も含みます。)もエンジニアにとっては必須なスキルですし、重要であるスキルの一つであることは確かです。
ただ、私のいたSIerでは若いうちからプロジェクトに名指しで呼ばれるようなエンジニア(アサインされやすいエンジニア)は、Webの開発を経験をしている、Javaが出来る、DB設計が出来るといった理由でアサインされることが多く、議事録を書いていた、テストをしていたというエンジニアはアサインされにくいという現実がありました。ベテランならともかく、ポテンシャルを見るべきである新人や2,3年目の若手でもです。
上記のような環境が全てではないと思いますが、そんな環境で生きていくためには自分がなにができるかというアピールポイントを早く作り、アサインされやすいエンジニアになってほしいという僭越ながら、わたしの願いになります。
ユミ
はじめまして。
まさに4月からSIerで研修中の新入社員です。
佐藤さんの記事、大変興味深く読ませていただきました。
がんがんアサインされるようなエンジニアを目指していきたいと思っているので、
佐藤さんのアドバイスにあるようなことや向上心を
胸に常に思考する社会人でいたいなと思いました。
過去の記事も少しずつ拝読したいと思います。