海外IT企業で働いていた純日本人エンジニアがいろいろと考えてみる。

海外に住みたい!?

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 どうも、鹿島和郎(かしまかずお)です。エンジニアライフのコラムニストにも海外でお仕事をされている方が増えているようで、「海外エンジニア」というカテゴリができていますが、業界全体としても否応なしに海外との関わりが強くなっていると思います。

 ITエンジニアである皆さんの海外(海外の方)との関わるケースとしては、主に以下のようなものが挙げられるかと思います。

  • 仕事
    • 日本企業勤務
      • 業務の海外へのアウトソーシング(含オフショア開発)
      • 自社あるいは顧客の海外進出
    • (国内の)外資系企業勤務
      • 本社、他国の支社との会議、出張
      • 転勤
    • (国外の)外資系企業勤務
  • 仕事以外
    • 旅行
    • 移住

 アウトソーシングに関しては、専門の方がいろいろいらっしゃいますし、海外での勤務に関しては以前に本コラムでも少し取り上げたかと思いますので、今回は少し趣を変えて、ITエンジニアの人生設計における1つの選択肢として、「海外移住」というのを私個人の経験・考えなどを中心に書いていこうと思います。

 個人的な話が多く、あまり万人に役に立つ内容ではない事を、あらかじめお断りしておきます。

■理由

 海外移住を目指す理由はいろいろあると思います。

  1. 「○○の本場」で働きたい
  2. 日本の労働環境に馴染めない
  3. 日本の(今の会社の)先行きに対する不安・悲観
  4. 「海外に住む」という事自体に何となく興味がある
  5. 退職後にのんびりしたい

1.「ITの本場」

 やはり、IT業界で働く人にとってはシリコンバレーというのは憧れの地と言ってもいいかと思いますので、「本場のIT企業で働きたい!」というのは、海外(この場合はシリコンバレー)移住の理由としては大きなものだと思います。

 また、先日公開された「ソーシャルネットワーク」を観て、海外で働きたいと思った方も多いのではないでしょうか。私が良く参加しているScala勉強会 in 渋谷でも、何名かの方は海外で働いてみたいと話しています。

 IT業界でもさらに分野を絞ったり、あるいは特定の働きたい企業がある場合には、シリコンバレー以外の場所を目指すことになるかもしれません。例えば、私が以前住んでいたモントリオールでは、3D CGソフトのSoftimage社や、ゲームソフトメーカーのUbisoft社の開発拠点があったりして、割とゲーム関係の仕事をしている人が多かったので、そういう分野の人にとっては、目的地となり得るかもしれません。

2.日本の労働環境に馴染めない

 最近ではエンジニアライフでもメンタルヘルス特集が組まれたりして、この問題の認知度が高まってきています。鬱病などの原因がすべて労働環境に起因するわけではありませんが、仕事というのは生活の大きな部分を占めますので、職場での問題から病を患う方も多いと思います。

 そうした方々にとっては、もしかしたら日本で働くより海外で働いた方がいいケースも考えられます。海外は海外でストレスの原因の元はたくさんあるのですが、それに関しては後ほど述べます。

3.日本の先行きに対する不安・悲観

 日本の将来に何となく不安を持っている人は多いようです。その不安感が具体的な根拠に基づくものなのか漠然としたものなのかは置いておくとして、実際にその様なことを言う人は周りにも結構います。

 希望あふれる(ように見える)他の国で生活してみたい、というのも十分自然な理由だと思います。

4.「海外に住む」という事自体に何となく興味がある

 私が海外に移った時の理由は大部分がこれです。ずっと日本に住んでいると、やはり外国での生活に興味が湧きますし、憧れみたいなものもありました。こうした理由で海外に住むというのもありかと思います。

5.退職後にのんびりしたい

 前項と少し関連しますが、退職後は好きな場所でのんびり、あるいは憧れの地で暮らしたいという人は多いかと思います。最近はどうか知りませんが、メディアで田舎暮らしがちょっとブームになった事がありましたが、それの延長で退職後に海外に住む方もそれなりにいらっしゃいます。

 東南アジアでは、そうした退職者向けの特別なビザの制度がある国がいくつかあります。私が一時期住んでいたフィリピンのセブ島では、日本食レストランとかも結構あって、退職して現地に在住している方々や現地駐在員などでそれなりに繁盛していました。

■方法

 海外移住の方法ですが、現実的には2種類に限られると思います。

  1. 現地企業に就職して数年間働き、その後永住権を取得
  2. 前述の退職者向け永住ビザを取得

 念のため書きますと、永住権≠国籍です。

 「○○の永住権を取得する(した、したい)」と言う方に対して「日本を捨てるのか!」みたいな反応をされる方がたまにいらっしゃいますので。

1.就労ビザ → 永住権

 現地企業、あるいは日系企業の現地支社に採用され就労ビザを取得。そこで数年間働いてその間に永住権を取得する、という方法です。実務経験、そこそこの語学力がある方は、この方法が選択肢になるかと思います。

 就労ビザの取得方法、各国の転職市場は国によって大きく異なるので、まずは行きたい国をいくつか候補に挙げて、それらの国について調べることをお勧めします。

 私自身はアメリカで働いた経験はないのですが、知り合いの話ではビザ取得が大変かつ面倒で、永住権(グリーンカード)の取得もかなりの長い道のりのようです。

 私はお隣のカナダで3年位住んでいたのですが、当時はIT業界向けの優遇措置があって就労ビザが取りやすかったのですが、現在その制度は基本的には終了したようです。ただ、どこの国でも優秀なIT技術者は不足していますので、他の国でも同様の優遇措置があるかもしれません。

 ビザに関しては私のブログの方にも書いていますので、よければそちらもご覧になってください。

 また、現時点では英語力が足りない人には、インターンも選択肢になりうると思います。アメリカの場合はインターンは就労ビザとは別のカテゴリーになっていますし、そこで業務経験・語学力を磨いて次のステップに、というのも割と自然な流れだと思います。

 なお、(最近は数は多くありませんが)私自身もインターンの紹介・サポートなどを行っていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

2.退職者向け永住ビザを取得

 東南アジアでは、一定の金額を預けることによりその国の永住権がもらえるという、主に退職者向けの制度を持っている国がいくつかあります。

 具体的にはフィリピン、タイ、インドネシアがそうです。国によって細かい点は異なりますが、大体以下のような条件です。

  • 一定年齢以上(50歳~55歳)の人が対象
  • (為替により異なりますが)200万円前後を預ける必要がある

 フィリピンの場合は、35歳以上の人も同ビザを取得可能です。その場合の預ける金額は400万強($50,000)に増えますが。

 200万円というのは、車の購入や豪華な結婚式をあきらめれば、何とか手の届く金額ではないかと思います。もちろんそれ以外にも月々の生活費がかかりますので、実際には年金などがないと難しいかもしれませんが。

 私も何かで一発大もうけをして、東南アジアかどこかのビーチリゾートでのんびり暮らしたいなぁと思ってますが、なかなか難しそうです。

3.その他

 永住ではありませんが、大学生であれば、学校によっては交換留学プログラムがありますので、そういうのに応募してみてはどうでしょうか。

 一度就職してから海外に住もうと思うと、ほとんどの人は仕事を辞める必要があるでしょうし、結構リスクが高いと思います。大学生の交換留学、短期留学でしたら、そうしたリスクを気にせずに海外での生活を経験できるので、そうした機会があればぜひお勧めしたいです。

■環境の違い

○日本でダメなら海外でもダメ?

 前の方で、日本の労働環境に馴染めない方が多くいるという事を少し書きました。そうした人が海外に行く(行きたい)と口にすると、

 「日本でダメなやつはどこに行ってもダメ」

 とか言い出す人がいます。

 言わんとすることは分かりますし、50%ぐらいは正しいのかもしれませんが、少なくとも50%は間違いです。

 以前のコラムで、日本で勉強した事や業務経験は、海外でも生かせることが多い、という内容を書きました。裏を返すと、技術不足・経験不足のために日本であまり評価されていないエンジニアの場合、海外に行っても活躍できる可能性はそれ程高くないと思われます。

 そういった意味では上述の言葉は(ある程度)正しいのですが、仕事に求められるのは技術・経験だけでなく、コミュニケーションが占める割合も多いと思いますが、コミュニケーションの仕方、作法が日本と海外(※)では大きく異なります。技術や経験があっても、日本では対人関係でストレスを感じてしまう人が、他の国に行ってのびのびと実力を発揮できるようになるケースも実際にあります。

※海外の場合も、もちろん国によっても異なります。

○日本の方が合う人も

 ただし、逆のケースも当然ありえます。短期での滞在では気にならない様な事も、長期滞在あるいは永住の場合にはストレスになったりします。

  • 母国語で会話できない
  • 料理が口に合わない
  • 文化に馴染めない
  • 家族、古くからの友達が周りにいない

 海外就職、海外移住に関してはとかく、いい面ばかりが表に出てきがちです。海外に出て水を得た魚のように活躍している方々がいる一方、水が合わずに帰国した人、海外に住んでいるものの日々ストレスを感じながら生活をしていて、しかも諸般の事情から帰国したくても帰国できない人たちがいる事も事実です。

○お試しするのが一番だけど……

 過去の似たような話題の時と同じような結論になってしまい申し訳ないのですが、やっぱり本格的に海外移住の前に一度試してみるのが一番だと思います。

 ただ、その機会を作るのがなかなか難しいのも承知しています。大学生であれば交換留学や自費での短期留学ができますし、若い方なら会社を辞めて1年くらい日本を離れてもまだやり直しが利きやすいですが、現状ですと30を過ぎたあたりから選択肢がだんだん少なくなっていきます。

 最近ではGREEの海外進出が話題になりましたが、同じように日本の会社がどんどん海外に進出して、日本人が海外で働く機会が今より増えてくるといいですね。

■まとめ

 まとまりの無い話をつらつらと書いてきたので、まとめるのも難しいのですが、一応まとめです。

 望む望まざるに関わらず、今後は海外との関わりが増えてくると思います。そうした中、仕事をする場所の選択肢として日本以外の国を加えるとともに、生活の拠点に関しても海外を選択肢にしてみてはどうでしょうか。

 それではまた次回。

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