コネで実現する海外就職
どうも、鹿島和郎(かしまかずお)です。前回のコラムで、「次回は英語勉強会の報告を~」みたいなことを書きましたが、勉強会をやってみたところ、それほど書く内容がありませんでした。ということで、勉強会の報告はブログの方に書いて済ますことにして、今回は違ったネタで行こうと思います。
以前、「エンジニアの方々には『海外就職』という選択肢もあるので、検討してみてはどうか」という内容を書きましたが(これやこれ)、具体的な方法についてはあまり触れていなかったと思いますので、今回は具体例をいくつか挙げようと思います。
■海外就職実例1
自分語りはあまり好きではないのですが、一応私の就職までの経緯を書いておきます。
一言で言うとコネです。「隣の芝は青く見える」なんて諺がありますが、こと海外生活、海外就職に関してはその傾向が強いようで、以下のような誤解をしている方もたまに見受けられます(以前のエントリとかぶる部分もありますが)。
- 海外って実力主義だから、年齢なんて関係ないでしょ?
→ 年齢に応じて自動的に昇給したり、基本的には年齢が上の人から順に昇格するといった仕組みはありません。ただ、日本ほど酷くはないですが、若い人の方が就職に有利、年を取ると転職しづらくなる、というのはあります。 - 海外って実力主義だから、人種差別なんてないでしょ?
→ 人種差別がまったく存在しなければ、黒人やその他マイノリティの方々が、人種差別に関する問題提起や抗議行動を行うなんてことはないはずです。 - 海外って実力主義だから、コネ就職なんてないでしょ?
→ コネがあると有利なのは万国共通です。 - 海外って実力主義だから(ry
自分の場合のコネは、別に親が国会議員でとかそういうスゴイものではなく、当時の英語の先生の従兄が会社の社長だったというものです。
「え、コネなんてないんだけど」っていう人もそれほど心配する必要はありません。なければ作ればいいだけですので。
肝心のコネの作り方ですが、簡単にいうといろんな人と会って仲良くする、それに尽きると思います。うろ覚えですが、私の場合は大体以下のような感じだったと思います。
- カナダ人と日本人の夫婦がルームメートを募集しているところに見にいく
- 結局そこにはしないで、そこから歩いて1分くらいの所に住むことに決める
- でも、近所なのでその夫婦と仲良くなる
- その夫婦の知り合いが英語の先生
- その人に英語を教わることにした
- 英語の先生の従兄が会社の社長で、そこでプログラマを募集しているという話を聞く
- 面接
- 採用
これだけだと「え、運が良かっただけじゃん」って言われそうですので、いろんな人に会う方法をいくつか紹介します。
○コネ作りの方法その1:パーティー
以前にも少し書いた通り、まぁ飲み会です。日本との違いは、友達とかを連れてくるのも割と一般的というところでしょうか。お酒が飲めない人はソフトドリンクで参戦すると良いと思います。
重要なことは、最初は頑張っていろんな人に声をかける、顔を出すことに意義があるので忙しくてもちょっとだけは顔を出す、くらいでしょうか。
○コネ作りの方法その2:ローカルコミュニティ
これは以前紹介した「アプレンティスシップパターン」に載っていた方法ですが、ある程度の規模の都市であればコンピュータ関係のコミュニティの1つや2つはあると思います。日本で言う○○ユーザー会とか××勉強会とかその類のものです。そういうのに参加すれば、もろ同じ業界の人たちと知り合いになれますので、仲良くなってくれば仕事を募集している話とかが聞けるかもしれません。
もしそういうコミュニティがなければ……分かりますよね。自分で作ればいいのです。
なお、コミュニティやそういうのに興味がある人を探すには、Facebookとかcraigslistとかを使うといいと思います。
■海外就職実例2
さて、昨年後半に知り合った別の方の例を紹介したいと思います。ニックネームHALK RICEさんは、以前から海外での就職に興味を持っていて、それがきっかけで知り合ったのですが、彼の場合も就職のきっかけはコネだったようです。
昨年の夏に彼が勤めていた会社が黒字倒産し、最初は東京で外資系の会社での仕事を探していたようですが上手く行かなかったようです。以下、彼のメールから引用します。
2カ月間、東京で就職活動しました。どうせやるなら、英語を使った職に就きたい。ちょっと欲が出過ぎたかもしれません。無理でした。何せ、TOEICの点数が375点です。どこも、相手にはしてくれませんでした。
彼はそこで一念発起して、友人が住んでいるフィリピンに渡って仕事を探すことを決意し、結論から言うと現地でIT関係の仕事を得ることができました。
彼がフィリピンを選択した理由も色々聞いていますが、まとめると以下の通りです。
- ご友人が住んでいる
- 英語圏(公用語の1つ)である
- 物価が安い
- 経済が比較的安定してて、日本語の需要も多い(筆者注:日系企業が多数進出しているからでしょうか)
- 以前何度か訪れたことがあって、生活スタイルが合っている
彼の就職までの経緯は以下の通りです。
- 東京で就職活動しつつ、海外就職のセミナーなどにも参加(いい講師に出会っていろいろアドバイスをいただいたそうです)
- 前述の通り、東京での就職活動に失敗。10月頭に実家に帰省
- フィリピンの日系企業(N社)に連絡して、役員の方と会う連絡を取り付ける
- 10月下旬フィリピンに渡航
- 現地で、友達から人材紹介会社(J社)を紹介してもらう
- 現地到着後2日後にJ社からコールセンターの仕事を紹介してもらう(内定)
- N社には断りの連絡を入れる
- 業務開始となるまで待つが、予定の日になっても連絡はなし。こちらから連絡してもなしのつぶて(※)
- J社には見切りをつけ、一度断りを入れたN社に再度連絡を取る
- 一度断ったにも関わらず面接してもらい、無事合格
- 12/1より勤務開始
ちなみに、就職が決まるまでにかかった費用は20万円弱だそうです。
彼の場合、技術はしっかりしたものがありましたが、TOEIC 375点ということからも分かるように、英語力は全然高くありませんでした。それでも仕事を得ることをできた理由は、私は以下のように考えています。
- 友達、セミナーの講師とのつながり
- 下調べ等の事前準備
- 何より行動力
最後に、HALK RICEさんのメールから再度引用して、2つ目の実例紹介を終えたいと思います。
私の一番の柱となったのは、セミナーでも教えてくださった、ネットワーキングです。私個人の力だけでは、フィリピンで職を見つけることは、叶わなかったでしょう。友達や知人が助けてくれた。このことがやはり、一番大きいです。
※このように人を食い物にするような業者はフィリピンに限らずどこの国にもいますので、注意が必要です。
■成功率はどの程度
これも何回か書いているように、「海外に行けば何でも解決する」とか「TOEIC 375点でも何とかなるんだし、何も考えずにとりあえず海外に行ってみるべき」とかを無責任に言う気はありません。今回は海外で仕事を得た例を2つほど紹介しましたが、海外就職を希望して実際に就職できる人の割合というのはどの程度なのでしょうか。
「海外就職 割合」などで検索してみましたが、具体的な数字は見つかりませんでした。韓国での同様の調査を紹介しているブログ記事みたいなのは見つかって、それによると韓国では海外求職申請者は24429人に対して就職できた人は1446人で、成功率5.9%という数字が出ていました。情報源が「韓国産業人力公団」としか書いてないので、正確な内容は分からないですが。
また、日本人の方が韓国人より英語力は低い→ 日本人の場合はさらに成功率が低いはずだという若干乱暴な論理展開をしているブログも見つかりました。
私はいくつかの理由によりその意見には賛成できませんが、いずれにしても日本人の海外就職成功率が30%とか50%という数字ではないことは確かなようで、せいぜい10%程度と考えるのが自然だと思います。
10%というとかなりの低確率のように思えますが、私はこの数字だけを見て怯む必要もないと思います。
数字というのは(基本的には)嘘はつかないですが、トリックが隠されていることが往々にしてあります。例えば日本の失業率は4.9%です。(完全)失業率=(完全)失業者/労働力人口 ですが、この「完全失業者」の定義を知ると、世間一般の「失業者」の感覚と若干違うというのに気付くかもしれません。
同様に、海外就職の成功率の分母と分子はなんでしょうか。分子は海外で就労ビザやそれに類するステータスを取得して就労している人であまりブレはなさそうですが、分母にどういう人を取るかで成功率が大きく変わってきます。分母に以下のような人を含むと、成功率の数字はがくっと下がると思います。
- 海外就職にちょっと興味があって、数社にレジュメを送ってみたけど反応がなくてあきらめた
- ボストンキャリアフォーラム(※)にとりあえず日本から参加してみたけど内定をもらえなかった
逆に、(曖昧な言い方になってしまいますが)事前にしっかり準備して就職活動をした方の就職率は、前述の数字よりは高いはずですし、実際に私の周りでも海外で就職した方はそれなりの人数がいます。
海外に住むこと、海外で働くことのメリット(とデメリット)については以前少し書きましたが(英語編、待遇編)、若干のリスクを取ってでも多くの方(特に若い方)に挑戦して欲しいと思います。
※ボストンで毎年開催されている、主に日本人留学生向けの就職フェアみたいなのです。
■リスク
では、海外に行くことによるリスクとは何でしょうか。
一番のリスクは、行ってみたはいいけど仕事が見つからず時間が過ぎてしまうことだと思います。お金もかかり職歴にも穴が開いてしまいます。
対策として一番最初に挙げるべきこととしては、(これに限った話ではないですが)バックアッププランを考えておくことだと思います(英語だとPlan Bなんて言います)。例えば、海外就職に失敗して戻ってきたときに、知り合いの勤めている会社に潜り込めないか、今勤めている会社に復帰できる可能性はないか、などを事前に探っておくと良いと思います。
後は以前も少し書いたとおり、インターンで経験を積む、あるいは自分経歴と比較して少しレベルの低いポジションで仕事を探す、という方法もあるかと思います。後者の場合、resumeの書き方で気をつけないとoverqualificationで落とされるケースもあるようですので、そういうことも含めて情報にしっかり収集をしておくと、成功の可能性が高まると思います。
仮に海外就職に失敗したとしても、それほど悲観する必要はないと思います。海外就職のために各国の労働市場・環境の調査、英語や足りない技術の勉強を行ったことは別の場所でも生かされると思います。
また、個人的な意見になってしまいますが、仮に私が採用担当として面接を行う場合には、そうしたリスクを取って何かに挑戦したという点は評価すると思いますし、同じような考えの方は少なくないと思います。
■まとめ
海外就職の成功率は数字だけ見ると低いですが、しっかりとした事前準備+ちょっとの行動力があれば意外と道が開けるかもしれません。その際に、人との繋がり(コネ)はいざという時に重要ですので、色んな人と会って仲良くしておくといいと思います。
また、残念ながら就職ができなかったとしても、その過程での勉強・経験などはその後に役に立つはずですし、「挑戦した」という事実を評価してくれる人もいるかもしれません。
次回は最近増えている企業の海外進出について書こうと思います。それではまた。
コメント
辻 邦昭
はじめまして。私は研究者で、ITプログラマです。現在、失業中なので海外、特に東南アジア及びインドでの勤務を考えているのですが、なにしろ伝手はなく、
また高齢なので、困っております。
海外に行きたい理由としては、
1.日本には惨い年齢制限があるが、東南アジアはそこまで惨い年齢への
こだわりはない。(実際にフィリピン女性に確かめました)
2.震災、国家財政破綻などで、日本では就職状況があまりにも厳しい
そして、これからのこの」国の未来はこのような理由で暗い。反面、フィリピン
などはまだまだ貧しく、状況も厳しいが、将来への希望を持っているようで、
フィリピン人は総じて、明るい(自殺率はわが国に比べ、圧倒的に少ない)。
これから、東南アジアは、高度経済成長時の日本みたいに発展するでしょう。
3.私は52歳と高齢ですが、幸い妻子や子はいない。したがって、日本に
いる決定的な理由もない。
4.私の研究分野は数学で、論文も海外ジャーナルに掲載されました。
日本社会のような馴れ合い、学閥などはなく、真に実力のみを検討してくれます。
5.昨年のフィリピン女性との英会話レッスンで、ある程度、冗談も言える
レベルになりました。また、レッスンを通して、フィリッピン人の気性が
大変好きになりました。
以上の理由から、東南アジアやインドでの仕事を希望しています。
コメントやアドバイスがありましたらよろしくお願いいたします。