人の話を聞かないPMの末路
IT業界に限った話しではありませんが、人の話を聞かない方はどの業界にでも一定数います。どことなく偉そうにしてて人の助言に耳を傾けない人達の事です。しかし、人の話に耳を傾けないでいると思わぬ落とし穴にハマる確率も高まるし、困った時に助けてもらえなくなります。とくにプロジェクトマネージャー(PM)がこのタイプだったらプロジェクトは立ち行かなくなり、多くの人に迷惑をかけてしまいます。今回は、人の話を聞かないPMが陥りやすい罠についてお話したいと思います。
PMの役割をおさらい
本題に入る前に、まずはPMの役割についておさらいします。PMに求められる役割とは、「予算内および納期内にプロジェクトを完了させる事」です。それさえ出来ればその途中経過はあまり重要ではありません。メンバー内でやりくりが難しいようであれば、機能を丸ごとアウトソーシングしたって構いません。最終的にきちんと完了さえすれば、途中経過に関しては任されているのです。逆に最終的にきちんと完了しなければ叱られます。それがPMの役割であり責務です。
上述の通りプロジェクトには納期があります。それぞれの必要タスクをメンバーと一緒に洗い出し、WBSを作成します。それと同時並行で、全てのタスクが納期内に収まるようスケジュールを作成します。PMはこれらの進捗を管理していくわけですが、やってみるとまぁ面白いほど計画通りには進みません。想定外だらけです。そんな時に、どれだけ早い段階で想定外の事象を拾う事が出来るか?この察知能力こそがPMの生命線です。
この察知能力は経験数で強化していくことは可能ですが、とはいえ、メンバーからの情報収集が基本となります。大きなプロジェクトであるほど、メンバーから情報を集める必要性が増してきます。自分の目に見える範囲内で想定外を拾うのには限界があるからです。メンバーからのシグナルに耳を傾ける事が出来るか否かが察知能力に影響を及ぼし、延いてはプロジェクト成功の可否に直結するわけです。
マネジメントスキルより大切なもの
人の話を聞かないPMのパターンを見ていると、「PM=権力者」と勘違いしている方がとても多いです。自分自身が上下関係の上位側にいると勘違いしているので、他のメンバーに対して高圧的です。こんな状態では、メンバーはプロジェクトに関心が無くなり、自分に割り当てられたタスクをこなすだけになります。その結果、タスク間にエアポケットが発生します。メンバーがその事に気がついても、人の話を聞かないPMに進言することはありません。その小さい火種は後になるほど大きな炎となり、文字通り炎上していくわけです。
ぼくは職業柄、IT投資の立案責任者としてPMの任命責任も負うのですが、毎回アサイン可能なPMリストを眺めていると、同じメンツが売れ残っている事に気づきます。彼らには共通点があり、上述の通りPMの役割を勘違いしています。その行動パターンとして人の話に耳を傾けないので危険の察知能力が低く、プロジェクトが失敗する可能性が増します。したがって、大きいプロジェクトを任せることは出来ません。リスクが限定される小規模なプロジェクトを転々としてもらう程度しか、彼らの活用方法がないのです。
PMとして一人前になるためには、マネジメントスキルを身につけることも必要ですが、それ以前に総合的な人間力の方が大事です。PMBOKを学んで理論武装するのも構いませんが、それより先に道徳です。人は理屈では動いてくれません。まずは人の話に耳を傾ける。メンバーを尊重し、発言しやすい環境を整える。問題を察知したら1人で抱え込まずに、有識者を巻き込んで解決に向け働きかける。それが出来ないPMに居場所はありません。
コメント
ゆう
全く同感です。
PMは人間力が一番大事だと思います。
自分も以前いたところで、PMがメンバーの意見に耳を貸さず、
PJの需要事項を、メンバーが反対していても独断で進めていき、
結果、長期的にまずい判断(後で辻褄が合わなくなる)をしてしまっており、
わたしも辻褄合わせの非生産的な作業に追い回されてました。。。
日本の会社(事業会社)は、上司と部下がPMとメンバーにスライドすることが
比較的多いと思うのですが、そこで組織の役職とPJ上の役割を混同する人も多いように思います。
わたしがもといた会社組織では、その上司(PM)さんに重要なPJを振られることはなく、
わたしが任命権者でも、彼には重要なPJは任せないと思いました。
勝ち逃げ先生
ゆうさん
プロジェクトの難しいところは、単純な数の理論が通用しないことです。メンバー全員が反対しても、プロジェクトオーナーが同意すればそちらが優先されます。そういう状況に陥ってもメンバーのモチベーションを切らさないテクニックがPMには求められます。たとえ辻褄合わせの非生産的な作業であっても、それは一時的なことなのだと納得できれば、メンバーの心が離れることはありません。それもPMの人間力次第だと思ってます。
同感同感
あと必要な能力としては、プロジェクトの予算・納期が既存メンバーだけでは厳しいときに、なぜ厳しいのかを上司や役員に分かりやすく説明して、予算や人員増員や納期変更を説得する説得力かな。そのためには、何がおこっているかを詳細に理解する必要があるから、そりゃ人の話聞かない人は無理だね。
えーすと
ただただ共感します。
不思議
>同じメンツが売れ残っている事に気づきます。
>リスクが限定される小規模なプロジェクトを転々としてもらう程度しか、彼らの活用方法がないのです。
なぜ「彼ら」を解雇しないのですか?
勝ち逃げ先生
同感同感さん
おっしゃるとおりです。人の話を聞かずに説明責任なんて果たせませんね。
勝ち逃げ先生
えーすとさん
いつもありがとうございます。
勝ち逃げ先生
不思議さん
>なぜ「彼ら」を解雇しないのですか?
大きく2つの問題があります。
1.雇用の問題
まず、日本の雇用制度では簡単に解雇出来ません。無断欠勤などを頻発させない限り、簡単には解雇には出来ないのです。たとえ外資系であっても、日本法人である以上人員整理は難しいです。
2.PMは貴重
じつはPMってものすごく貴重なんです。日本がエンジニア不足なのはご承知だと思いますが、PMはさらに貴重です。立ち上げるプロジェクト数に対してPMの数が全然足りてません。コンサル的な観点で言うと、小さいプロジェクトでもいいから回してくれる人材はありがたいのですが、コラムに記載の通り人間的に成長して大きなプロジェクトを回せるようになって欲しいジレンマがあります。
不思議さんもPM目指しませんか?応援しますよ。
おたみ
>PMは貴重
PM の肩書/待遇を与えられずに PM の役割/責任だけを押し付けられてる人も多いんですけどね。。。
勝ち逃げ先生
おたみさん
悲しいことですが、そういう事象はありますね。これも裏を返せばPM不足の証明になります。
想定外
まさか、いきなり正社員(無期限契約)にしているとは、想定外です。
有期限契約で、役に立たなければ契約を更新しない(解雇する)のが普通? なのではありませんか?
>日本がエンジニア不足
エンジニアでもなんでもない人間が、突然今日からエンジニアを名乗るのが、日本の問題なのではありませんか?
PMでもなんでもない人間がPMをやっている例が日本にはある、という話であれば、それはその通りだと思います。
そして問題は、PMでもなんでもない人間にPMをやらせるマネジメント、なのではありませんか?
勝ち逃げ先生
想定外さん
無期限・有期限に関係なく、使用者が契約期間中に一方的に契約を解除することを「解雇」と言います。期限切れの契約を再度更新(延長)しない事を「雇い止め」と言います。「雇い止め」ならばおっしゃるとおり普通にあると思いますが、「解雇」は普通ありません。
>エンジニアでもなんでもない人間が、突然今日からエンジニアを名乗るのが、日本の問題なのではありませんか?
別に問題だとは思いません。約束した期待に応えられないなら問題だと思いますが、これとは別問題です。
>そして問題は、PMでもなんでもない人間にPMをやらせるマネジメント、なのではありませんか?
言いたいことは理解できますが、これも問題の本質ではありません。やったこともない人間にPMを任命する事が問題なのではなくて、任命したあと責任をそのPMに押し付けて放置しているのならば問題です。
解雇あらためクビ
どうも「解雇」という表現を厳密に用いたい様子ですので、表現を「クビ」にあらためます。
正社員でもクビにしようと思えば(大変ですが)クビにはできます。役に立たない人員をクビにしないのは、経営として、出資者に対する背信行為ではありませんか?
ピアノを弾けない人間が突然今日からピアニストを名乗ることの異常さには気づくべきです。約束する前にちゃんとピアノが弾けるのか確認もせずに、ピアニストと言っていた、という理由で演奏を頼んでいるのなら、経営のどこかが狂っています。約束した期待に応えられないとかという以前に、仕事を頼む側に重大な問題があります。
がんばってください。
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解雇あらためクビさん、勝ち逃げ先生です。
いちお掲載しておきますが、コラムの本題から論点ずれ過ぎです。
がんばってください。
ちゃとらん
どうも解雇やクビにしたがる人が多いですね。私はそういう考えには反対派です。
私が経営者なら『クビにしたがる奴はクビだ』と宣言します。
# クレタ人の自己矛盾ですね。
さて、
> ピアノを弾けない人間が突然今日からピアニストを名乗ること
ではなく、
『ピアノを弾いたことのない人に、ピアノを弾かせる』でしょう。今回の例でいうと。弾いてみて上手ければ継続して弾いてもらえばいいし、下手ならアドバイスなりを与えて弾けるようになってもらう、そういう考えで人材育成できないものでしょうか?
おたみ
to 勝ち逃げ先生さん
>これも裏を返せばPM不足の証明になります。
「PM が不足」していて「その役割を担っている人がいる」なら、ちゃんと「PMとしての処遇」をしてあげて欲しいですね。
建前の上では「同一労働同一賃金」の世の中ですし。
今の日本の法制度では、一度 PM として処遇してしまうと元の処遇に戻すことが難しくなっているはずですが、ある意味、作為的な PM 不足なのかな?という疑問もわいてきます。
(一般的な作業担当よりも PM の方が給与面での処遇は良いはず)
ちゃとらん
なんか、面白い方向に話が進んできましたね。
> おたみさん
> PM の方が給与面での処遇は良いはず
そうですね。でも、この指摘、当然のようでそうなる必然性はないと思っています。
というのは、野球の監督など、選手の方が給与が高いとか普通にあるでしょう。つまり、PMの給与が高いというのは、それだけ重要な仕事がPMに割り振られているのであって、もっと仕事内容を減らせば(役割を選別すれば)PMのなり手を増やせるのではないか?という考え方です。
仕事を減らし、重要度を下げ、給与も下げれば、PMも自分が一番偉い(=権力者)という錯覚も起こさなくなる…なんて事にはならないのでしょうか?
PMの仕事なんて、半分以上は雑務(他の技術者が働きやすい環境を作るとか)だと私は思っていますので。