お客様は神様じゃない
「お客様は神様でございます」
某国民的演歌歌手の有名なセリフですが、生前にご本人も、この言葉が別の意味で独り歩きしてしまい、誤った解釈で世の中に広まってしまっていることに悩まれていたそうです。どこでどのように意味合いが変わってしまったのかは、ぼくにもさっぱり分かりませんが、もちろんお客様は神様なんかではありません。ぼくの解釈では、お賽銭もらってご利益を提供するのが神様のお仕事であるならば、それこそベンダーの方が神様なんじゃないのかって思っているくらいです。ま、そんな言葉遊びはどうでも良いのですが、今回は、お客様を神様扱いする事を止めたほうがよい理由について語っていきたいと思います。
ビジネスの基本は「同価値の交換」
資本主義の世界で生きている以上、お金を持っている方が上手になるのは、ある意味仕方がないことだとは思います。その点に関しては一定の理解はしますが、しかしその考えは、ビジネスの基本的な考えから逸脱していることは認識しておいた方が良いです。そもそもビジネスは、「同価値の交換」で成り立っています。100円とりんごの交換。5000円と食べ飲み放題2時間サービスの交換。300万円と国産新車との交換。1000万円とシステム構築の交換。という感じで、同価値のものを交換するのがビジネスなので、どちらかが上手ということは本来あり得ません。そんなビジネスの大原則を無視して、お金を支払うほうが偉いと思っているようでは、戦う前から負け戦が決まっています。
例えば医者と患者の場合、診察代や手術代を支払う患者が客になりますね。医者を神様だと思う患者はいても、患者を神様扱いする医者はいません。しかしIT業界には、クライアントの言いなりになるSEがあまりにも多いのが残念です。
お客様を神様扱いするのは、なんとなくそれこそが正義のような感じを受けますが、ぼくはその考え方は好きではありません。なぜならば、この言葉を使っている限り、本当の意味での「自立」が出来ないと思っているからです。顧客の発言を絶対視しすぎると、「その仕様はクライアントが決めたから」とか「お客様の決定事項だから」と、自分で考えることや提案することをやめてしまいます。そしてお客様絶対主義が社内文化として定着してしまい、会社ごと泥沼から抜け出すことが出来なくなってしまいます。そんなこと、クライアントも望んでいません。患者の言うとおりにしか行動しない医者を信用できないのと同じことです。我々もITのプロとして「自立」し、クライアントの意に反する指摘であったとしても、クライアントのためになるのであれば堂々と物申すべきです。それで決裂してしまうならばそれまでの関係だと割り切る。それが本当の「自立」です。
「自立」と「依存」
ビジネスの世界では、各々が対等でなければお話になりません。対等であり続けるには「自立」するしかありません。「自立」の反対語は「依存」です。「自立」出来ないでいるのであれば、残された道は「依存」のみです。この世で唯一「依存関係」が許されるのは親子だけです。ライバルでもあるビジネス相手に「依存」するなんて正気の沙汰ではありませんが、気がついていない企業が多いことに驚かされます。
「自立」するには、どんなお客様とも五分の力関係を継続し続ける必要があります。そのためには、ビジネスマンとして、また技術者として、相手の期待に応えるだけの高いスキルを持ち合わせる必要があります。客の方にこそ、こちらが神様なんだと思わせるだけのスキルを身に付けなければなりません。本気で客を神様だと思っているうちは、生殺与奪権を自分からクライアントに握らせている状態です。ビジネスゲームで勝てるわけがありません。
コメント
たいき
神様だったら文句やクレームなど言いませんしね。
勝ち逃げ先生
逆にそんな優良な客には、神様扱いしたくなりますね。
社内えすいー
ピンとこない方は
生殺与奪 冨岡
でおググり頂くと宜しいかと思います。