ビジネスにも使えるハッタリ戦略
ポーカーって知ってますか?トランプで有名なポーカーです。有名すぎて説明不要だとは思いますが概略だけいうと、まず5枚のカードを配り、好きな枚数分1回だけ、山場のカードと交換することで、より強い役を作ります。基本的には強い役を作れば戦いに有利になるわけですが、一番強い役を揃えれば必ず勝てるのかと問われれば、そうとは限りません。なぜならば、その後に駆け引きが生じるからです。全プレーヤーが役を揃え終えた後に、本当の勝負が始まります。
Aさんの役は1ペア、Bさんの役は2ペアだったとしましょう。このまま勝負をしてしまえばBさんの勝ちです。しかし手札を見せる前に駆け引きがあります。Aさんは自信満々に、まるで手持ちの役が3カードのように振る舞い、大きく掛け金を上積みしました。Bさんは上積みされた掛け金から、Aさんの自信満々の心理を読み取り、2ペアでは勝てないと判断して勝負を回避した場合、勝負することなくAさんの勝ちが確定します。本当はBさんの方が実力があったのにもかかわらず、Aさんはテーブル上にある全ての掛け金を総取りすることができました。これがポーカーの奥深さと面白さの秘密です。
実社会もハッタリだらけ
じつはビジネスの現場でもこの手の話はよくあります。例えば、営業が仕事を受注したいがために、自社の実績を誇張することはよくある話です。実際は1度しか経験したことのない事例でも、さも何度もあるかのように振る舞うことがあります。厳密に言えばそれは「ウソ」なのですが、それが悪なのかと問われれば、必ずしもそうとは限りません。あくまでも顧客は結果で判断するので、経験が少ないハッタリであっても仕事が大成功すれば顧客は喜ぶし、経験豊富であっても仕事に失敗したら情け容赦はありません。最終的な結果の可否とハッタリとの間に、因果関係はありません。
世の中のハッタリは、他にもたくさんあります。ネットショップでよくあるさくらレビュー。あれもハッタリの一種です。さくらだと見抜かれて袋叩きにあうのは、単純に商品が粗悪品だからです。さくらレビューが混じっていたとしても、レビューに記載されている通りの品質を担保している優秀な商品であれば、誰も文句は言いません。SNSもまたハッタリで溢れています。権威付けや説得力を増すために、フォロワーを買ったりいいねを買ったり、互助会を結成するのもまた、ハッタリの力を利用しているのです。
ハッタリのメリット・デメリット
どのことにも言えるのですが、もちろんハッタリにもメリットとデメリットがあります。ハッタリのメリットは可能性を広げてくれるところにあります。本来の実力では手の届かない位置にある仕事を獲ることが出来る可能性が増えます。これはビジネスの現場では大きなアドバンテージとなります。一方でデメリットもあります。ハッタリがバレたら、大きく信用を傷つける事になります。ビジネスの世界で信用を失うことは、ある種の死を意味します。そういう意味では、ある程度命がけでハッタリをかます覚悟が求められます。
外接円と内接円の話
下の2つの図をご覧ください。
四角の大きさは同じですが円の大きさが違います。Aさんは外接円で、Bさんは内接円です。四角の面積が本当の実力だとした場合、AさんとBさんの実力は全くの五分です。しかしAさんは自分の実力を外接円で表す過大評価をし、Bさんは自分の実力を内接円で表す過小評価をしています。Aさん側の赤く塗られた部分は実力以上の箇所になります。いわゆるハッタリです。
本当の実力(四角の面積)を知らない顧客が、ある仕事を依頼する際、どちらに依頼しますか?という話です。多くの人はAさんに依頼するのではないでしょうか?本当の実力は全く同じなので、どちらに仕事を依頼しても成功する確率は同じはずです。なのにAさんばかりに仕事が集まる現象がうまれます。
成長速度とハッタリ
Aさんは大きい仕事をこなすようになると、本当の実力が増えます。図でいうところの、四角い面積が大きくなるのです。最初はハッタリだったはずなのに、ハッタリに実力が追いついたわけです。外接円だったはずの円がいつの間にか内接円に変わったとも言えます。そうなると好循環。また新たに、大きくなった四角(実力)の外接円をつくり、より大きな仕事を狙っていけるようになります。ようするに、上手く行けば成長速度を加速させることが出来てしまいます。
ハッタリをかまさずに正々堂々と戦う美学を貫き通すのも構いませんが、その考え方はチャンスを逃してしまいがちだし、同じ実力だったはずのライバルに取り返しがつかないほど差をつけられた後では、何を言ってもごまめの歯ぎしりです。弱者の発言権が限りなく弱いのがビジネスゲームの掟です。
上述していますが、ハッタリにはメリットとデメリットがあります。そして大きな仕事というのは、成功確率も下がりがちです。このあたりをリスクをしっかりと見極めた上でハッタリをかまさないと、取り返しのつかない事態に陥るので注意が必要です。ポーカーの場合ならば、ハッタリに失敗しても次のゲームに影響を及ぼしませんが、ビジネスゲームでのハッタリ失敗は命取りになります。リスクとリターンを天秤にかけ、正攻法で行くのか、多少のハッタリを仕掛けていくのかは、そのあたりはプレーヤーの腕の見せ所なのでしょう。