32歳、IT業界への挑戦_3――ここからはじまる物語
【ここからはじまる物語】
ご無沙汰しております。皆さんご機嫌いかがでしょうか、溝渕です。未経験でIT業界への転身を考える友人Hを追うコラムの三回目です。
○前回までのあらすじ
30を過ぎて、未経験が転職するには何か武器が欲しい。業界経験がなく、即戦力をアピールするのは困難です。そもそも即戦力に成り得ることはほぼないでしょう。
なので、適応力を高めることと、そもそも入社するためのアピールポイントを作ろう。そのために、国家試験であり、広範な知識と論理的思考力が問われる「情報処理技術者試験」を取得しよう。
未経験ということと年齢から考え、ベースラインとして「基本情報技術者試験(FE)合格」を設定。活動は2011年の11月末から始まり、2012年2月にITパスポートを取得。4月のFEはどうなるか。
というところでした。
■試験前
私的な勉強会などを通じて進捗を確認したり、アドバイスをしたりしていました。
ITパスポート試験に合格したあとであり、本人の実力・分かりやすい参考書(*後述)も影響してFEの午前はすぐに十分なレベルになりました。
しかし、未経験でIT系に縁のなかった友人にとって、午後の問題は難しい様子。特に必須問題である、論理的思考能力を問う問題とプログラミング言語を1つ選択して解く問題。それ以外は午前をきちんと理解することで応用して対応できていました。
論理的思考能力を問う問題とプログラムの問題については、数回の勉強会中に考え方を説明して練習してもらいました。
これで範囲的にはカバーしているわけですが、ITパスポート試験から2カ月、平日は仕事もある中で十分な時間が取れたかは怪しいところです。
■当日~結果
試験の日は、試験後に仲間内で恒例となっている飲み会でした。そこで感想を聞くと、「午前は手ごたえあり。しかし午後は難しかった。」と。
私は教育に携わって来た者で、教えるということに多少の自信もあったのですが、まだまだ修行が足りないようです。
その日は私と友人H以外にも集まっていて、受けた試験は違えどそれぞれに手ごたえを話していました。
そこで私は、余裕で受かっているはず、などと調子に乗っておりました。ところが後日、資格試験予備校などが出す模範解答を見て驚愕しました。
午後IIで1問目から2問連続で、点を稼げるはずの計算問題で間違っていたのです。
一体これはどういうことかと確認しました。要約すると「15秒で400回転、1分間なら?」となる第一問目でしたが、私は「2400」と書いた記憶があったのです。どうも30秒時を止められるらしい……。
続く2問目で、30回転1パルスなら「13.33……で小数第一位を四捨五入して13だ」などと自信満々に書いた記憶もあって、これも問題をよくみたら「30度で1パルス」でした(笑)。
お分かりの方もいるかもしれませんが、私が受けたのはエンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)で、選択したのはソフトウェア系の問題です。
しかしびっくりしました。点取り計算問題を、2問とも間違えるなんて。教える立場で、そしてテスト後も調子に乗って余裕だなどといっていてこの体たらく……。
○結果
友人が受かっていました!
午前・午後、共に60点で合格のところ、午前77.5点、午後75.1点、だそうでした。予想より高い点数に私も、友人も驚きです。だけどここまでやれるとは、友人Hには適性と実力があるように思います。
この友人の結果に続きたいと思いつつ、翌月の応用情報技術者試験(AP)と高度試験の発表日。上記のような有様で、さらに他に細かなミスもあった私は心穏やかではありませんでした。
しかし、7割は取れていたようで合格できました。「通信回線の故障に対する検出方法」など、それぞれの解釈が伴う解答も、与えられた条件(=問題)に合致してかつ筋道が通れば、点数をくれるのでしょう。
■ここからの選択
FEに合格し、この時点でIT業界へ進むという現実的な道ができました。もちろん年齢平均の待遇はとても望めないでしょうし、入ってからしばらくは大変でしょう。
当初から、こうなった場合にそのまま転身して進むのか、今の仕事で多少なりとも余裕を作れるうちにAPを取得するのか、話題にのぼっていました。
APに1度で受かるならばAPを受けてから転職、というのが十分、選択肢に入るかと思います。転職時の待遇を少し良くしてさらに基礎が強くなり、その後の吸収にも役立ちますので。
しかし、APに受かってからという選択は、1度で受かるならばいいかもしれませんが、年齢を考えると何度も受けて受かってからというのはむしろ逆効果かもしれません。しかも受験者の大半はFE合格者ながら合格率が20%台前半、応募者比較で言えば10%台であり簡単ではありません。
今の段階で、友人は秋にAPに受かってから転職の予定です。そうなると最短で「33歳、IT業界への挑戦」になります。
ここは大きな分岐点で、渡せる情報は友人に渡し、じっくり(じっくり過ぎるのも問題ですが)考えてもらいたいところです。
■あとがき
30過ぎて未知の業界に入れば、異国の迷路に迷い込んだような気持ちになるかもしれません。
入ってしまえば余裕がなくなるであろうことは想像に難くなく「入る前に詰めるだけの基礎を詰む」というのは1つの答えだと思います。
しかし結局入らなければ分からないことがあり、また半年単位で入るタイミングがずれていくと影響は30代の身の振り方として大きいでしょう。
今後どのように進展するか、注目です。
○参考書
参考書として、きたみりゅうじさんのキタミ式イラストIT塾 「基本情報技術者」を使用しました。友人のITパスポート受験時も参考書は同シリーズの「ITパスポート」を使用しています。
専門用語が飛び交い、概念の分かりづらいITを理解するに当たって、多様なイラストで分かりやすく解説されており、非常にすばらしい本でした。経験者が受験する際にも有用です。
参考書としてはこの本1冊のみでした。「繰り返し」読み、過去問を練習、これが非常に効率的かと思います。
それではまた。