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多重請負の本当の問題

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多重請負でよく指摘される問題として、末端にお金がいかないことが挙げられます。それよりも、ヒエラルキーの階層が無駄に縦長になる方が問題だと私は考えています。SESなんかで働いていても、どのポジションで働くかで大きく運命が左右されます。はっきり言って、どのポジションに就けるかは運です。努力で上に上がることはできますが、初期ポジションは運です。逆に言えば、運さえあれば実力が無くても上のポジションになれてしまいます。

なので、努力して実力があるからヒエラルキーの上にいるということはありません。ただ、一般的な傾向としては、運で美味しい思いをすると努力から遠ざかります。また、上の立場になると技術よりマネージメントを重視されるので、技術との接点が減ります。その結果、スキルを磨く機会をことごとく逃します。下の立場になればなったで、多くのデメリットがあることはご存じかと思います。一番技術者として一番恵まれているのは、真ん中のちょっと上くらいのポジションなのかもしれません。

また、組織が縦長になると、どうしてもコミュニケーションコストが高くなります。縦長の組織で働いていると、会議の話題が「誰々にこう言った方が通じる」とか「こう説明した方が通じる」など、コミュニケーションの手段について話題が多く上がります。会議の準備のための会議のようになって、問題の本質から話題が離れがちです。これは組織の構造的な問題なので、個人の努力での対応に限界があると考えています。組織の構造が変わらない限り、コミュニケーションコストは減りません。

多重請負の構造というのは、IT業界に限らず建設業界等でもよく見かけます。ただ、建設業界の場合、IT業界のような閉塞感はありません。IT業界よりも専門職が専門職らしく振舞える環境なので、末端に不満は溜まりにくいようです。あと、工程でやる事が区切られているので、専門性が発揮しやすいというのもあるかもしれません。頼まれた業務の範囲において、実作業者の裁量が振られています。報告義務はありますが、ある程度、自分で判断して行動できます。

IT業界の場合、多重請負が社員の福利厚生になっているように思います。年功序列で立場を用意できなくなったので、下請けを実質、部下のような立場で扱います。こういう方法で労働者のプライドを満足させているように見えます。だから、下請けの立場では専門性を発揮しにくくなるのではないでしょうか。無駄にかかるコミュニケーションコストにも納得がいきます。多重請負自体は、上手く使えばそれなりのメリットはあります。ただ、請負先を「下の人」として扱うことで、多くの問題を引き起こしているのではないでしょうか。

Comment(2)

コメント

ちゃとらん

> 多重請負が社員の福利厚生
おおおぉぉぉ… そう来ましたか。


「下の人」を使っているという意識はあるんでしょうね。
しかも、出来の良い上司なら、それなりに部下の面倒も見るんでしょうけど、使いッ走り的に使われたり、うっぷん晴らしに使われると「下の人」は、たまりませんものね。


まだまだ、闇が深そうです。

Horus

> ちゃとらんさん
まぁ、下の方の人やってますが闇はふかいですねぇ・・・。


ITの多重請負って、請負先は必ず「下の人」という認識でたのみますからねぇ。プロフェッショナルの支援という感覚の人はまれですね。現場の温度感から見ると、それが当然すぎて、「下の人」という感覚はないでしょうね。

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