組み込み系システムに3年、オープン系システムに7年。徹夜がこたえるお年頃。独身貴族から平民へと降格したホリは、墓場へまっしぐらなのだろうか……。

パセリとなった一日

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■リハビリ■

 人が仕事をしている間に休むと浦島太郎状態なのである。

 約2週間前に式を終え、その後、国外逃亡。やりかけのプロジェクトを放置し、現実逃避の旅に出たのもつかの間。現実に復帰してみれば、やりかけの仕事はやりかけのまま残っている。当然である。休んでいる間に小人さんがやってくれるわけもなく、「たまりにたまったやりかけの仕事を処理する」という、きついリハビリをこなしている最中なのである。

■新郎とはパセリである■

 さて、そんなリハビリを兼ねた今回のコラムでは、結婚式について書こうと思う。この世の中に結婚式が楽しみで仕方がないという男がいるのだろうか? 僕は憂鬱だった。あくまで式の主役は華やかな新婦である。新郎は付け合せのパセリのように、横にチョコンといるだけなのだ。しかし、そんな新郎であっても、注目を浴びる瞬間がある。それは挨拶なのである。

 親戚一同が集まるこの場面。カンニングペーパーを読まず、すらすらと挨拶することが至上命題となるこの瞬間。新郎にとってはまさに心労のタネである。もちろん、僕にもその機会はやってきた。式の1週間前から、日ごろ使いなれない丁寧な言葉の羅列をどのようにして暗記するのか、そればかりを考える毎日であった。

■さまざまな暗記方法■

 古典的な手法だが、受験勉強を思い出しながら、ノートに繰り返し書き暗記する方法を試した。しかし、暗記する前に手が疲れてしまった。学生時代ならまだしも、極端に字を書く機会が減った昨今、繰り返し書き取るという作業自体に重みが移ってしまったようだ。これもIT化の弊害だろうか……。

 基本だが、何度も繰り返し読む。これはすんなりと頭に入るのだが、なにげにその姿を見られるのは恥ずかしいのである。特に隣にいる予定の花嫁に聞かれるのは、僕には耐え切れなかった。ということで、この方法も却下した。

 何か簡単に暗記できる方法はないかと試行錯誤した結果、携帯音楽プレイヤーを使うことにした。これならば、通勤時間であっても違和感なく聞くことができ、小声でボソボソと呟いたり、頭の中で反復するにはうってつけであった。あわよくば、式当日もイヤホンをつけて挨拶しようと思ったのだが、隣の花嫁に袋叩きにあいそうなので、自粛した。

 携帯音楽プレイヤーの効果なのか、それとも苦し紛れに酒に逃げたのがよかったのだろうか。思いのほか滑らかな舌の動きで、予定外なことまで話しながら、無事に式を終えることができたのである。

■緊張の種類■

 人によっては、式を晴れ舞台として楽しめる人もいるだろうが、僕は駄目だった。いろいろなプロジェクトを経験すると、緊張する場面に遭遇することもある。しかし、プロジェクトにおける緊張感には慣れていても、普段と違う雰囲気の中では、ただのパセリになってしまうのである。緊張の種類が違うのだ。しかし、これで人生における“めんどくさいこと”の1割は終わったのではないかと、勝手に安心しているのである。

 続く

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