テストエンジニアは役者であれ~ユーザビリティをテストするために
第三者検証(主にテストベンダー)のテストチームがクライアントからよく言われるのが「ユーザ視点の評価(~を期待、といったニュアンスで)」です。
私が知る限り、この発言者の共通点は、概ね深い考えを持たず発言していること、でした。
そして言われた側も「第三者検証ですから」などと深く考えずに回答しているケースも実際にありました。
第三者検証=ユーザ視点、とは必ずしも言えないのではないか、ユーザビリティとは何か、今回はそのあたりを書こうと思います。
ユーザビリティの軽視
ユーザビリティ、この視点・観点を軽視しているエンジニアが以前は多かったような気がしています。
過去形で書いているのは、現在のこれからの開発はDXの推進により、市場に早くリリースし顧客のフィードバックを早く得るアジャイル/リーン、運用と一体化したDevOpsといったモデルが主流のため、顧客との距離の近さからユーザ視点が軽視できなくなるはずと捉えているためです。
ユーザビリティの軽視についてはテストエンジニアも例外ではなく、特にテストベンダーは何となく自分達がそれを標準スキルセットに持っているかのように思っているのか、勉強会や研修も少ないように感じていました。
テストチームはユーザビリティをテストできるか
テストチームは冒頭に書いたように、ユーザ視点での評価をオマケのように言われるわけですが、言われた側も軽視しているため、通常のシステムテストなどに加えて、要望などという形で結果報告にオマケのように付けて報告して終わりというのが、よく見るパターンでした。
もちろん、これが良いわけがありません。
それにはいくつか理由があります。
1. タイミングの問題
まず問題視すべきはタイミングだと思います。
テストの結果報告でユーザビリティを指摘してどうするのか。
テストの結果の先にあるのはリリースです。ユーザビリティの指摘を修正すれば再度テストが必要になります。
ユーザビリティの指摘は設計時点か、コーディング~テストの切り替わりの頭にしないと修正が間に合わないでしょう。
2. テストチームは既に一般ユーザではない
テスターに何の情報も持たせずにユーザ視点での問題点や指摘を依頼するとどうなるでしょうか。
テスターの年代で意見は違ったものになるでしょう。
テスターの経験で意見は違ったものになるでしょう。
テスターはそのプロダクトを知らない人と同じような操作をするのでしょうか。
残念ながら第三者検証であっても、設計仕様を目にし、開発チームの苦悩・苦労も知るテストチームは既に一般ユーザとはかけ離れた存在になっています。
その意識を払拭するのは思いのほか難しいです。
3. 誰にとってのユーザビリティなのか
そのプロダクトが狙うターゲットはどの層なのでしょうか。
テストリーダーや上位層はともかく、テスターまでその情報が行き届いていないと、見当違いの指摘が挙がり、結果的にスルーされてしまいます。
テストチームは開発工程の下流に位置するので、プロダクト要求より上位のビジネス要求やその関連の情報については、気にしないと目にすることも難しいかもしれません。
テストエンジニアは役者であれ
ユーザビリティをテストする、ということは評価者にバイアスがないニュートラルであると同時に、プロダクトを要求レベルで理解していないと適切なフィードバックを返せないということを前述で書きました。
真のユーザビリティを得るため、リサーチ・市場調査を外部に依頼という選択肢もあると思いますが、コスト、スピード感、信頼性などそれはそれで越えないといけないハードルがあるでしょう。
テストチームのエンジニアがユーザビリティをテストするには、
ターゲットユーザを詳細に決め、ユーザストーリーを作成し、シナリオに沿って(ここが大事ですが)なりきること、つまり、優秀な役者になる必要があります。
随分前の私の過去事例ですが、ユーザが学生で日中での操作を想定するために、
実際に使用する時間に、学生っぽい話し方、で気分を高めて実施したことがあります。効果の程はわかりませんが、テストエンジニアとしてのバイアスを取り除くという意図は理解して頂ければと思います。
今回は「ユーザ視点の評価」の難しさを書いてみました。
技法の話ではありませんでしたが、ユーザビリティテスト、UXテストについては研究しているテーマの一つなので、また機会があれば書きたいと思います。
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