法人税減税のススメ
法人税は高止まりしている。意外にもアメリカとほぼ並んでいますが、世界一の税率といえます。
法人税を減税しろとか言うと、「金持ち優遇」などという単純な感情むき出しの反対論に負けてしまう。それらは、一般的な「経営者は金持ち」「企業が搾取する」というような誤解からきているのではないかと感じるのだが……。「企業が搾取する」って、いつの時代の共産主義者かと言いたくなる。いまどき『蟹工船』が流行ってたりするらしいし、いまだに階級闘争とか考えているのだろうか? なんだかね……。
法人税率って約42%で、法人税は一部に外形標準課税というのはあるけれど、基本的に累進課税ではない。中小企業であれば(その善し悪しはさておき)オーナー経営者が多いのですが、残った58%をオーナーが使うには、配当することになります。その配当にはさらに20%の税金がかかりますので、元の利益から考えると46.4%しか残らないのです。
「金持ち優遇」なんていう人に聞いてみたいけれど、いったいどれぐらいなら妥当だと思っているのでしょうか?
経営者でも、まぁ、一気に儲かったりすると大仰になったり、2代目とかサラリーマン経営者は違うのかもしれませんが、初期の不安定な時期に必死の思いで出したわずかな利益のうち42%も持っていかれると、もうがっかりというか、なんとも言えない気持ちになります。ものすごい恨みつらみを胸に秘める人も出るのです。
幸か不幸か、わたしは恨みを持つほど納税できてないけどね。さほど儲かってないから(苦笑)。
特に、一代で成功する実力のあるオーナー経営者にとっては、実に53.6%もの税率になり、江戸時代の農民よりひどい税率と戦っていることになります。ですから、苦しみを乗り越えて安定した利益が出始めた経営者の中には、もちろん、そのまま税金を支払う立派な人も居ますが、利益を出さないように努力し始める人も多く出てくるわけです。
そのとき、利益を出さないように社員の給料を上げるかというと、社会保険の会社負担額(税金と一緒だし)も増えるし、解雇しにくく上げた給料を下げにくい現状では、怖くてそんなことはできません。
他に設備投資ですが、当然、減価償却分しか経費計上できず手元のキャッシュが大幅に減ってしまいますから、これも簡単にすることはありません。将来に渡り同じだけ利益が出る保障はないのですから、当たり前の話です。
で、どうするかというと経費で落とせるところに金を使うようになったり、換金しやすいものに設備投資など名目で金を使う。例えば、高級外車を購入したり、社長宅を社宅として購入したり、六本木ヒルズに住んでみたり、接待名目で夜な夜な飲み歩いたり(今では、中小企業でも年間400万までしか使えませんが、一部は会議費で計上したりね)。
もちろん、税務署が認めないと言い出すこともありますけど、社宅や高級外車に変えておくと、いざというときに担保になる。これはほとんどいい訳ですけどね(苦笑)。
馬鹿な金の使い方をしている方(失礼)に中小企業の社長が多いのは、金の使い方を知らないのではなく、知りすぎていてイヤになっているわけで、税率の低い退職金を大量にもらって会長職に引き下がったりする人も出る。会社を大きくするモチベーションを失う人が出てくるわけです。
(わたしは大したことはないけど)経営者は志の高かった優秀な人が多いですが、人間ですから当たり前の感情を持っている。多くは、苦労・努力の対価を求めます。しかし、余りに法人税率が高過ぎるため、結果的に利益を出さないための努力を続けることになるとしたら、本当にもったいない。
ともかく、税率が高すぎると、能力があっても、税制の抜け道を極めることが合理的になってしまう。抜け道を極めることは社会的正義に反しますが、江戸時代に農民に掛けた四公六民よりひどいのですから、一揆が起きてもおかしくないわけです。こんな馬鹿げたことは、結果的にその企業に所属する社員や地域、ひいては国にとってマイナスにしかならない。
ですから、抜け道を探すモチベーションを失わすぐらいの税率にすべきです。
法人税について書こうと思っているうちに、誰かが書いてて被ってしまいましたが、誰がどこに書いていたのか分からなくなってしまってすみません。被っていますが続けます。
法人税は国税の割合が高い。
本当に地方の活性化を考えるなら、法人税率の決定権限を、地方自治体に任せればいい。例えば、国税を10%、残りを地方税にして自治体が税率を決めれるようにすればどうでしょう。
ちなみに、法人税の70.6%が国税で、利益から見れば、
国:40.2 × 70.6 = 28.4%
地方:40.2 × 20.4% = 11.8%
つまり、ほぼ逆ぐらいが良いのでは?
例えば、現状で大した産業のない地方自治体には利益を出している企業なんてほとんどないのですから、今のままなら税率をいくらにしても自治体の税収に差はでません。それなら、国税のみの10%にすればタックスヘブン状態になりますね。
国内にタックスヘブンがあったら、国内の企業誘致はどんどん進みますし、海外企業も移転してくるかも知れません。
もちろん、(地方)税率をゼロにするのですから一旦は税収は減るでしょうが、利益を出している企業が増えれば、同時にその企業で働く人たちがグンと増えますから、住民税と相殺すればチャラどころか税収が増えることになるでしょう。
業種などによって税率を変えればよいので、例えば、風俗産業を追い出したければ、その税率を上げればよい。ちゃんと申告している風俗産業って少ないような気もするけどね(笑)。
法人税率を地方に任せれば、東京一極集中も避けれるし、自治体ごとにそれぞれにカラーを出して、特色のある産業を育てれるようにようになります。
余談ですが、法人税の29.4%が都道府県と市町村に落ちるのですが、割合が少ないとはいえ、これは大きな税収です。しかし、法人税って本社所在地に落ちることになってしまいます。
でね。東京に本社、地方に工場って会社は多いけれど、どう考えても工場の方がたくさん公共サービスを利用するよね。大きな道路は必要だし、上下水道なども料金を払っているとはいえインフラの大部分に税金は投入されています。
つまり、地方がコストを掛けて稼いだ金を、東京がコストを掛けずに吸い取っているのです。
大阪が財政破綻しそうになっているのって、大企業の本社が東京に移ったからですからね。ふるさと納税の議論のときに、(東京に居るであろう)評論家がしたり顔で「受益者負担の原則」なんて言ってたけれど、「じゃあ法人税はどうなるんだ~!」って破綻しかけの大阪人は思ったりするのです。
というわけで、法人税は受益者負担させるために国税の割合が大きくなっているのでしょうけれど、そこを直したら、ふるさと納税なんて面倒な制度はいらないと思うのですが、いかがなものでしょう。
ともかく、42%という税率はいくらなんでも高すぎです。
もちろん、弊社は税率が高すぎるから利益を出してないのではなく、わたしの能力がないから出せないだけですが、とにかく高すぎや……。
コメント
nog
ほんと高すぎですよね。
アメリカの実効税率が高いのを言い訳に日本の法人税下げないけど、
あっちの国では節税手法が定型化していて、大企業は存分に節税が可能です。
外国法人がアメリカ国内であげた利益を本国に移転しようとすると、政治パワーを背景にたいへん痛い目にあいます。
日本でも、法人税率は現状を維持して、国内法人の利益に対しては節税の抜け道を用意して、海外法人の日本子会社の利益にはしっかり税金を課すのが吉ではないのかな。
むずい。
nogさん、こんばんは。
アメリカのことはよく知らないのですが、確かに利益を海外に出せないようにするというのは、普通にやってそうな気がします。
日本では、日本法人より、海外法人の方が課税が甘かったりして。
日本の政治家には売国奴が多いから難しい話です。
kuma
こんにちは
法人税ってこんなに高かったんですね、勉強になりました。
>法人税を減税しろとか言うと、「金持ち優遇」などという単純な感情むき出しの反対論に負けてしまう。
私もそう思っていました。でも、法人が利益あげているのではなく
そこで働く社員が利益のほとんどをあげていて、それに対して
こんな税率がかけられているのだから、下げてほしいと考えが
かわりました。
kumaさん、こんにちは。
私もアメリカがなぜそんなに高いのか理解できなかったのですけれど……。
日本では、べらぼうに高い法人税を払った後、内部留保を続けます。
それは、解雇できず、給料を下げることもままならない。というのがかなり影響しています。
解雇しやすくして、利益を社員にもっと配分する方がよいと思うのですけれど、日本はもっとも成功している社会主義ですからね……。
しかし、高度成長を終えた現在は、ひずみの方が大きくなっているのです。
evergreen
タックスヘイブンはいまや国際的な問題になってしまっているので、
現実的には難しい問題ですけど、
法人税の財源委譲には賛成です。
地方自治体は
工場誘致しか頭になくて、工業団地を作っては赤字になってますからね。
それに出てくる言葉といえば、道路作れと国責任ばかり。
自分たちが責任を持った政策を出来るようにしてあげればいいと思いますよ。
逆に、これだけ一極集中と地域間格差がでると、
国の政策ではどうにもならない気がします。
税制と過疎化対策は連携が必要な気がしますね。
あ、ちょとピントがずれました?
evergreenさん、こんばんは。
タックスヘイブンが正しいのね(苦笑)
それはさておき、国税分として10%は課していて、地方住民税が取れる社員がある割合で存在するという条件をつければ、国際的に批判される状態にはならないと思います。
> 工場誘致しか頭になくて、工業団地を作っては赤字になってますからね。
箱物行政の亜種ですが、地方自治体としても持ってる権限内でできるのはその程度しかないのでしょうね。箱物行政は、使い易くすると「民業圧迫」と言われちゃいますから、でっかいカルテルみたいな価格維持をしないといけなかったりするし。
ところが、法人税の財源委譲&税率の決定権を地方自治体に任せれば、実際的にインフラの集積が進んだ便利な東京に本社を置くのも良いし、税率の安い地域に移転するのも良い。
市場原理に任せて地方を活性化できます。税制にも、自由主義を持ち込みたいところです。
そうなったら首長選はめちゃくちゃ盛り上がるでしょうね。将来の首相公選につながったら面白い。