シリコンバレーで現役デバッガやってます。

BUG012 - シリコンバレーに求められるエンジニアスキルは実はちっともたいしたことない、という話

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 超天才でなければ、斬新なアイディアがなければ、そして起業しなければ、シリコンバレーでは生きていけないのか?そんなわけありません。事実、ここには400万人もの普通の市民が住んでいるのです。全員が超天才なわけありません。頭の柔らかい若い世代ならともかく、20年、30年たって中高年になって年金が出る直前まで日夜アイデアを捻り出して起業を続けて家族を養うなんて常識的に考えて無理な話です。

 こんにちわelcaminoreal255です。今回のお題は基本に戻ってエンジニアスキルのお話です。一人の天才がどんな画期的なアイディアを元に起業したとしてもそれを実現してビジネスとして利益を出していくためには当たり前ですがたくさんの周りの人の力が必要です。Appleで働くすべての社員が次のiPhoneのコードを書いているのでしょうか?たぶんきっとそんなわけないでしょう。ソフトウェア関連に絞っても、コードのテスト、リリース、サードパーティとの調整、バグ管理に、社内ツールをつくったり、おっと古いコードのメンテも面倒ですが誰かがやらなくてはいけません。製品が増えれば増えるほど周りの仕事も無限に拡大していきます。ITエンジニアは不足する一方です。

 実際、ITエンジニアが足りないからといってピンポイントにその仕事にぴったりの人をすぐに見つけるというのは至難の業です。第一、現在のIT業界のスキルは効率を追求するあまり、言語、OS、ツール、すべてにわたって細分化されています。大企業でもスタートアップでも事情は同じで、雇う側からすれば、とりあえず基本的なITスキルがある人、そしてすぐに仕事を覚えて一人でやってくれそうな人(←特にこれが重要)を速攻で見つけて職場に放り込み、なるべく早く空いた穴を埋めて一人で業務を回して欲しい、それが本音です。だからシリコンバレーのITエンジニアに求められるスキルが日本のITエンジニアに比べて突出して高いということはまったくありません。

 アメリカには情報処理試験のような便利なモノがないので、採用にあたっては履歴書と面接が基本です。あくまで重要なのは基本的なITスキルの下地があり、入社したらすぐに社内のシステムに慣れて一人で問題解決してやっていけそうかどうか、そこがポイントです。一般にエンジニアの面接となると、朝から一日かけて、5~6人の現場のエンジニアが入れ替わり立ち代り面接部屋にやってきて、それぞれ一対一で一時間くらい面接する、というのが多いようです。それぞれ、まず簡単な技術的な質問に答えた後、課題を与えられて模擬コードをホワイトボードに書いてそこそこできたら翌週に即採用、というのが実態です。人事のひとが登場するのは最後の最後で、人事制度とか福利厚生とかの条件面の質問を受け付ける程度で、採用するかどうかの権限はあくまで将来ともに働くことになるかもしれない現場のエンジニア達にあります。

 基本的なITスキルがあるかどうかを見るわけですから、課題といっても誰も解けないような超難問を出しては面接する意味がありません。ごくごく当たり前の、C/C++なら構造体とかポインタの扱いとか、Javaならせいぜいソートのアルゴリズムとか、基本中の基本ですが、そういった基本はほんとにちゃ~んと身についてわかってますよね、という程度です。得てして履歴書というのはてんこ盛りになりがちなのですが、緊張した空間、限られた時間、それに見慣れないスタイルのコードをいきなり目の前に出されるといつもはなんでもないコードでもきちんと的確に解答を出せるかどうか、そのへんが実は簡単そうで難しい所です。

 シリコンバレーにITエンジニアが集中するのは、誰もがアイディアを持って起業しようと日夜思っているとかそういう理由ではありません。もちろんそういう人も一部にいますが、そうではなくて、起業したい人々、つまり雇う側にとって簡単にITエンジニアが集められる、一方、雇われる側は常に求人が転がってくる、その双方が同じ街に効率的に集まっている、たったそれだけです。東京のような大都市では理解し難い話ですが、不思議な話、ほんの20年くらい前までアメリカにはそんな街がなかったのです。

 それでは今日はこんなところで、また次回をお楽しみに。

Comment(2)

コメント

you

はじめまして。
将来的にシリコンバレーで働きたいなぁ、という夢を持っている文系出身のSEです。
elcaminoreal255さんの記事を見て一層その希望が強くなったのですが、やはりアメリカは学歴社会なのでコンピューターサイエンスの学位を取得しないと仕事を得るのは難しいのでしょうか。(必要ならば、Graduate Diploma という制度を利用して大学を入り直すつもりでいます)
また、いま日本で働いている文系出身のITエンジニアがアメリカで働こうとした場合に現実的なルートというのはどのようになるのでしょうか。
お時間があるときで構いませんので返信いただけるとうれしいです。

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