「人と組織」という切り口で、経営と現場の課題解決についてカレンコンサルティングが分かりやすくお伝えしていきます。

問題発見と問題解決のプロセス (4):「ごちゃ混ぜ注意!...現象・問題・原因」

»

『問題発見と問題解決のプロセス』の第4回です。
前回(第3回) 「それって問題ですか?」、現場系業務改善で見られることの多いアホコン(アホなコンサルタント)に登場いただき、問題ではないことに対し、解決策を導き出すことの無駄や無意味さについて述べた。今回は、問題をいくつかに切り分けて考えてみよう。

「問題を書いて!」と言ったのに...ごちゃ混ぜになるのは?

職場や改善活動の場において、「問題だと思うことを付箋紙に書いてください」とかやりませんか? 「1枚の付箋紙に1つの問題ですからね~」と。。。第3回の図2では、書き手によって、「問題の書き方(表記のブレ)」があるので、似たようなことを言っていても、原因はどれも異なり、これらの解決策も違ってくるという話をした。
さて、表記のブレがあったとしてもだ――「問題を書いて!」と言ったにもかかわらず、図1のようなことはないだろうか?

図1 「問題を書いて!」と言ったのに...
161121-1.png

人によって、現象を書いてみたり、問題だと言い切る人。原因かもしれないと思わせぶりなことを書く人、自信満々に解決できるはずと書く人......等々、あなたが「問題を書いて!」と言った側ならば、「ちゃんと人の話を聞いているのかなぁ」と首をかしげることもあるでしょう。
ただし、これはある意味、仕方ないと思うこともあるって知っておくといいかも。なぜなら、日常的に「現象」と「問題」については、特に、意識することなく言葉として使っていることが多いからだ。特に、現象・問題・原因の3つについては、定義をきちんとあらかじめ伝えておかないと、「ん?」と思う付箋紙だらけになる。

あれこれ欲張るとろくなことはない

「1枚の付箋紙に1つの問題ですからね~」...と言っても、図2のように、現象・問題・原因をまとめて書いてくる人も少なくない。中には、解決策まで書いてくる人もいる。

図2 「あれも、これも」と欲張りすぎ
161121-2.png

「解決策がわかっているなら、サッサとやれ!」――そう言いたくなる気持ちはすごくわかる。しかし、その解決策って、第1回の冒頭に示した、新入社員が100個の問題解決をしたことと、さほど変わらないような解決策のはずだ。なぜなら、「原因」も「解決策」もよく頭を使い、考えないと出てこない類のものだからだ。残念ながら、この段階ではまだ「うんと考えた状態」であるとは言えない。

的確に問題見抜くことは難しい...「現象」を「問題」と見誤る

図3を見ていただきたい。

図3 特に「現象」を「問題」と見誤ることに注意
161121-3.png世古雅人、渡邊清香著 『上流モデリングによる業務改善手法入門』 (技術評論社)から抜粋

上のピラミッドに示していることは、「見えている現象」だ。
例えば、営業部長が、「問題=売上が落ちた」と捉えてしまう。その解決策として、「客先を1件でも多く訪問する」 「営業スキルを上げるためにコミュニケーション研修を行う」などとやってしまいがちだ。冷静な皆さんなら、そんなことやったってアホらしいと思うだろう。
問題は、「競争力を高めてこなかったこと(古いままの商品、ビジネスモデル)」であり、問題は「営業スキル」ではないかもしれないし、当てずっぽうに客先を回ったところで徒労に終わることも見えている。つまり、会社とっては売上が落ちること以前に、新しい取り組みをしてこなかったことが問題であって、売上低下はそれが招いた現象であることに気づくだろう。


現象面にとらわれると、本質的な問題を見誤ることになりがちだ。この例では、先に行うべきことは競争力の強化で、他社との差別化を盛り込んだ新商品の開発であり、営業スキル研修など必要でなかったかもしれないのだ。 私たちは多くの問題に直面する際に、現象として現れていることを問題だと錯覚しがちであることを知ろう。

記:株式会社カレンコンサルティング / 世古雅人

Comment(0)