比較優位に学ぶ、仕事が振られる法則
気が付けば、コラムを書き始めてから1年になろうとしていました。仕事に困りつつ、ネタ切れに困りつつ、いろいろなことがあった気がします。
コラムを書いていて、うれしい出来事が少し前に起きました。以前書いたコラムがある人を勇気付け、その旨をコメントで残してくださったのです。冥利に尽きる、というのはこういうことでしょうね。この方を含め、これまでコメントを残してくださった方、コラムを見ていただいた皆さまへ、あらためてお礼を申し上げたいと思います(最終回っぽいですが、まだ頑張りますよ)。
●比較優位に学ぶ、仕事が振られる法則
皆さま、「比較優位」という言葉をご存じでしょうか。私が友人から紹介してもらった、「出社が楽しい経済学」という番組を見ていて知った言葉です。
この比較優位という言葉については、こちらをご覧ください。簡単に言いますと、単純な能力の比較ではなく、得意・不得意を比べて全体として最もプラスとなる分業をしましょう、といった意味です。
Aさん 仕事1:60 仕事2:50
Bさん 仕事1:40 仕事2:20
(数字は大きいほど良いとする)
という2人の作業者がいるとします。この2人に、仕事1と仕事2のうちどちらかを割り当てることを考えます。この時の仕事の割り当ては2通りです(本来、これほど単純ではありませんが)。それぞれの数字を足し算すると、
A:60 B:20=80
A:50 B:40=90
となり、Aさんが仮に仕事1が得意であっても、仕事1をBさんに譲ることが最も良いという結果になります。
●SE的な比較優位を考えてみる
SEの世界ではどうなのでしょう。上記のような数値は生産能率的な面が強く、SEの場合、
「一定の能力がないと10でも20でもゼロに等しい」
ということが多いです。
例えば上記と似たような例を考えてみましょう。
Aさん 仕事1:90 仕事2:70 仕事3:40
Bさん 仕事1:10 仕事2:60 仕事3:0
Cさん 仕事1:20 仕事2:20 仕事3:20
(数字は大きいほど良いとするが、20以下はゼロに等しいとする)
Aさんが仮に仕事1、2が好きで得意としましょう。しかし、Aさんがどれだけ努力しても、Aさんに仕事1が割り当てられることはないでしょう。なぜなら、
- Cさんは危なっかしいので、割り振れる仕事は、他にもできる人がいる仕事1か仕事2
- Bさんは、仕事2以外まったくできないので仕事2で確定
- 消去法で、Cさんには仕事1を割り振る
実際の現場でもよく見かける光景ではないでしょうか。結果として比較優位ならば、
仕事1:Aさん 仕事2:Bさん 仕事3:Cさん
となりますが、SE風比較優位では
仕事1:Cさん 仕事2:Bさん 仕事3:Aさん
となるでしょう。
しかし、これだけでは終わりません。Cさんの仕事1の能力に注目してください。仕事をこなすために十分な能力がありません。つまり誰かのフォローが必要な状態です。
Bさんは一見一番楽なポジションです(数値が一番大きい)。しかし、フォローしようとしても、Bさんは仕事2しかできないため、何もできません。従って、Bさんは定時で帰るが、Aさんは不慣れな仕事3をこなしつつ、Cさんのサポートをして残業しなければならないという、不思議な状態が起こります。
●特化をするといろいろ楽で得?
仕事を選ぶ際は「俺はあれ(仕事1と3)できないから、これ(仕事2)をやる」。
自身の仕事が失敗しても、「Aさんできるし(仕事2:70)、何とかしておいて」。
Aさんが困っていても「俺はできないしな、頑張れ」。
SE業界において、仕事ができる人に仕事がたまる原因はこれではないか、と最近結論づけました。まさに、「俺の仕事はお前の仕事、お前の仕事はお前の仕事」ですね(笑)。
しかし、仕事2がなくなったらどうでしょう? Bさんは何もできない人となり、会社から追放されかねない人材となってしまいます。しかし、Bさんは特化したがゆえに、仕事2がある限り仕事2以外の仕事はできないでしょう。苦労がない分、選択肢もありません。Aさんは苦労は多いですが、メンバーの力量に応じていろいろな仕事ができます。
●あなたはAさん、Bさんどちらがいいですか?
私は数値は高くないでしょうが、Aさん寄りです。多岐に渡っていろいろやった分、個々の能力は特化した人よりきっと低いでしょう。しかし、いろいろな仕事をもらっているので、それなりに苦しみも多いですが、結構楽しめています。
Aさんタイプは立ち回り次第でバランス良くスキルを伸ばしたり、あるいはいいように使われてつぶれたりするタイプだと思います。次回、つぶれないために私が学んだ、「自身を守るためのセコイ技」をご紹介したいと思います。
コメント
scratch
こんにちは、初めまして。
ITエンジニアではなく自動車部品メーカーの実験部署にいる者です。
比較優位、参考になりました。
私も間違いなく、Aさん寄りです。
というのも、入社して15年なのですが、当初の上司からも
『君には何でもできる技術者になって欲しい』と、宣言されていたこともあり、
入社後5年位は【広く・浅く】と疲労強度・剛性・品質管理・設備導入・・・
と本当に何でも屋状態で過ごしました。
しかし、最初はホントに薄っぺらいなぁと自分自身を評価していましたが、
その後、持ち前の性格なのか何をやっても、それぞれの楽しさを味わうことができ、
知らぬ間に、少しずつですが【広く・深く】なっていたみたいです。
最近では、その成果(?)なのか、やたらと忙しくなっていますが(苦笑)
人のタイプ、会社のタイプにもよると思いますが、Aさん寄りのタイプは
バランスが良い人になりやすいと思っています。
逆にBさん寄りのタイプは、唯我独尊になったり、孤独になったりしやすいのでは
と。(どちらも私の主観です。)
後輩の育成もしていますが、必ず聞きます。
スペシャリストとジェネラリストのどちらを目指したい?と。
仕事を楽しめるタイプであれば、迷わずジェネラリストを目指そうぜぃ!
と言ってしまいます(笑)
forseti
scratchさん。
初めまして。コメント有難うございます。
まさかこの回の続編を投稿した翌日にコメントを頂けるとは思いませんでした(笑)
>その後、持ち前の性格なのか何をやっても、それぞれの楽しさを味わうことができ、知らぬ間に、少しずつですが【広く・深く】なっていたみたいです。
私もその傾向にあるようですw深いかどうかはまだ分かりませんw
ゼネラリストはその仕事の情報を思い出すのに苦労が多いのが辛いですね^^;
性格面は正直分かりません。
1つだけ言えるのはBさんよりの人は受け身な人が多いかも。
1つだけゼネラリストの弱点を挙げると、「履歴書上の評価が非常に低い」といったところでしょうか。
仕事の条件に「**が××年以上」って言われると大体落ちてしまいます。
ゼネラリストにも愛の手を。むしろ私に愛の手をw
私の場合は以前書いたかもしれませんが、後輩育成の際はまず単調作業のスピードアップを中心に仕込みます。
スペシャリストでもゼネラリストでも便利ですし、作業前に早く正確にこなすために少し考えるクセをつけて欲しいからです。
基礎能力さえあればその先何とかなるよ!ってノリですw