一次請けマネージャを上手にコントロールするために――『二次請けマネージャの教科書』
二次請けマネージャの教科書 松本哲也(著) 技術評論社 2010年6月 ISBN-10:4774142913 ISBN-13:978-4774142913 1659円(税込み) |
■「一次請けは技術が分かってない。無理ばかりいってくる」
システム開発においては、一次請け企業と二次請け企業(場合によっては、さらに三次請け企業、四次請け企業……)が存在する。二次請け企業からすると、一次請け企業には次のようなイメージがあるかもしれない。
- 一次請け企業は無理ばかりいう
- 一次請け企業には技術力がない
だが、一次請け企業の側に立ってみると、「そもそも顧客から無理な要求をされている」「早い段階では、なかなか二次請け企業にお願いできる仕事の形にならない」から、結果的に二次請け企業に対しても無理をいうことになってしまっているのかもしれない。「技術力のあるメンバーは一次請け企業にも存在するが、プロジェクトの件数に対して足りておらず、技術の分かっていないプロジェクトマネージャが出てきてしまう」のかもしれない。
では、こうした状況で、二次請け企業のマネージャはどうするべきなのだろうか、というのが本書の主題だ。
■一次請け企業の弱みは、二次請け企業の強みである
二次請けも一次請けも経験している筆者は、まず「一次請けが二次請けに何を期待しているのか」を説明する。筆者によれば、一次請け企業のマネージャが二次請け企業のマネージャに期待しているのは、決して「指示に従う」「いうことを聞く」ことではない。では何か。「開発の技術」である。二次請けマネージャは、開発のプロフェッショナルでなければならないのだ。
これに加えて、一次請けマネージャは「管理能力」と「調整能力」を二次請けマネージャに求めている。
前者は、具体的には「プロジェクトマネジメントのサポート」だ。一次請け企業では、熟練マネージャが案件数に対して少ないため、未熟なマネージャがつくことが往々にしてある。また、一次請けマネージャはジェネラリストであることが多く、専門的な知識が薄い傾向にある。だからこそ、二次請けマネージャはプロジェクトマネジメントのサポートが求められる。
後者は、要望をそのままこなすのではなく、より良い方法で問題を解決してくれるような「調整」の能力を指す。仕事を依頼する側は、すべての作業に対して細かい配慮ができているわけではない。だから、二次請けマネージャは、作業効率を考慮したスケジュールの作成などが求められる。
なんだか「一次請けは何もしていない」ように見える(そして、事実そういう企業もあるかもしれない)。だが、逆にいえば、これらは「一次受けではできないこと」であり、「二次請けに求めていること」でもある。「一次請けの弱み」であり、「二次請けの強み」だ。
■一次請け企業とは何なのか
そもそも「一次請け/二次請け」という構造がよろしくない……という議論は、確かにある。だが現在、二次請け企業のマネージャであるならば、一次請けと協力し、プロジェクトを成功させるためのノウハウを知っておいて損はない。
本書には、筆者の経験に即したノウハウが詰まっている。そして同時に、そこからは「一次請け企業とは何なのか」「一次請けマネージャは何を考えているのか」が透けて見える。
いずれ一次請けマネージャになりたいと考えている人や、そもそも多重構造は正しくないと考えている人にとっても、参考になる内容だろう。