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シンガポールで働く外国人 (work permit)

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 小生、2010年の現在、シンガポール在住歴が4年になる。2年前に永住権を取得して、多分これから当分はこの国に住むことになると思う。以前、シンガポールでの住居の探し方に関してコラムを書いたが、今回は、住居を見つけるために絶対に必要なこと、つまり法的にシンガポールで住む権利を得ることについて書いてみる。

 外国人がシンガポールで住んで働ける権利は大きく分けて、3種類ある。権利としての安定度が一番低いのが、未熟練労働者のためのもので、こちらでは『work permit』と呼ばれる。シンガポールにも未熟練労働者が働く工場があるとは思うが、おそらくその数はそれほど多くなく、外国人未熟練労働者のほとんどは、町中至るところにある建設現場で働いている。その賃金だが、かなり低いようだ。月1000シンガポールドルももらえればよいほうらしい。日当で計算すれば、50シンガポールドル/日、日本円にして3000円ぐらい。

 2番目の権利が『EP』(Employee pass)と呼ばれる、専門職者に許可されるものだ。私がシンガポールに最初やってきた時は、この権利を取得して働いていた。

 そして、3番目が『PR』(Permanent Resident)で、いわゆる永住権である。取得方法はいろいろあるが、EPを何年か保持した後に申請して、取得することが一番多い。ちなみに、私はその方法を取って、現在はPR保持者だ。その中で、今回はwork perimitについて書いてみる。

 前にも書いたが、私はビザの関係で帰国しなければならなくなる可能性が高かった時期、3カ月ごとの短期契約のアパートを転々と移動していた。ある時期、シンガポールの中でもかなり郊外にある家の部屋を間借りしていたことがある。

 シンガポールは団地国家で有名で、国民のほとんどはHDBといわれる、国が経営する大型の集合住宅に住んでいるが、お金持ちはその限りではない。お金持ちは郊外の庭付きの一戸建てに住んでいるのだ。しかしお金持ちといえど、そういう大きな家を維持するのはお金がかかるのだろう。また、そういう家の人は大体、子どもの教育を最重視する。優秀な子なら、シンガポールの名門大学であるNUS(シンガポール国立大学)NTU(南洋理工大学)に行かせて、それほど高くない費用で子どもに高度な教育を受けさせることができるだろう。しかし、それほど出来が良くない場合は、オーストラリアやアメリカ、イギリスなどの英語圏の外国の大学に行かせることになる。留学にはお金がかかる。費用を少しでも補おうと、子どもがいない間、空いている部屋を人に貸すわけだ。

 「郊外」と書いたが、私が間借りしたところは本当に郊外で、周りは緑の森で囲まれていた。温帯の森林なら、中に入って森林浴ということもあるだろうが、ここは熱帯。熱帯雨林はまさにジャングル。ジャングルの中には毒ヘビやヒルが待ちかまえているかもしれず、中には入れないのが少し不満だった。実際、森林に面した至るところに進入禁止の看板が立っていた。看板には、兵士が銃を持っている絵が描かれていた。そういうのを見たら、中で秘密の軍事演習でもやっているのかもしれないと思って、怖くて入れない。

 さて、うちの周りを散歩していて、何か多いなと気付いたのが、道でたむろする浅黒い肌をした男たちだ。道端でビールで酒盛りをしているグループも多い。一時期、日本の上野駅周辺にたむろしていたイラン人を思い浮かべてもらえばいいのかもしれない。

 そんな場所を休日散歩していて、少し山の方に入ったところで見つけたのが、4、5階建ての仮設住宅が集まった巨大仮設住宅群だ。そこには、インドやインドネシアからやってきた労働者と思われる男たちがうごめいていた。これには、ちょっと面食らった。

 安い賃金でシンガポールの建設現場で働かされている労働者は、こういうところに住んでいるらしい。シンガポールでアパートを探していて目に付くのは、“No worker”の文字。ここではworkerという言葉は、未熟練建設現場の労働者、日本語ではいわゆる「土方」に当たる言葉だということはすぐに分かる。そういう労働者は、仕方がなくこのような山中に立てられた居住区に居住しているということなのだろうか。

 幹線道路でよく見かけるのが、屋根がないトラックの後ろに乗って移動している大勢の建設労働者。日本では屋根なしのトラックに人を乗せて走ることはご法度だが、ここシンガポールでは普通のことで、丁寧にもトラックには最大乗車人数の表示まである。山中の出稼ぎ労働者の寝ぐらから、建設現場への移動に使われる移動手段が、こういうトラックなのだろう。

 さて、男性はwork permitを取得して建設現場で働くが、女性は家の中に入ってmaid=メイドとして働く。現在の日本ではメイドなどという職業につく人はほとんどいないので、珍しさもあって「メイド喫茶」などというものがはやっているわけだが、ここシンガポールでは普通の家庭が普通にメイドを雇っている。以前、一緒に働いたことのあるインド人女性エンジニアも、子どもの面倒や家の中のことはメイドにやってもらっていると言っていた。おそらく私よりも給料が低いであろう彼女でもメイドを雇っているわけなので、その例からしてもシンガポールではメイドが極めて普通のことだということが分かる。

 町を歩いていて、時々見かけるのが、明らかに肌の色の違う赤ん坊の乳母車を押している女性や、肌の色の違うお爺ちゃんの手を引いている女性たちだ。日本では、老人の介護は介護施設に頼って行われているが、こちらではメイドだということが分かる。

 彼女たちの報酬だが、驚いたことに月300シンガポールドルぐらいらしい。雇用者は450シンガポールドル程度のLevy(外国人雇用税)を政府に払う必要があり、さらにエージェントへの報酬も払う必要があるらしいが、まとめても高々月1000シンガポールドルぐらい払えば、メイドを雇えるようだ。インド人エンジニアが、メイドを雇える道理も理解できる。しかし、実際働いてもらう彼女たちに渡る額がたった300シンガポールドルというのは、ちょっと悲惨な気がする。

 先日、シンガポールで唯一ハイキングができるブキティマに行った帰り、近くにあったモールに立ち寄ってみた。そこで、メイドのエージェントが集まるビルを見つけた。5階建てぐらいのビルの各フロアに、小さなメイドエージェントが連なっており、それぞれに数人の女性がしょんぼりと座っていた。海外から到着したばかりの女性も多いようで、旅行かばんがずらっと並んでいるのが、印象的だった。

 さて、シンガポールで働くために男女が取得するwork permitだが、月1800シンガポールドル以下の外国人労働者で、出身国も限られるようだ。当然だが、それに日本は含まれていない。雇用者はLevyという、外国人雇用税を払う必要がある。その額が最近値上がりする傾向で、シンガポールの建設現場では、コストを上げずに建設を請け負うためには、労働者の数を減らす努力が不可欠と、いろいろ努力をし始めているらしい。

 シンガポール経済は現在絶好調。島中で建設ラッシュだ。私が今勤務するラッフルズプレース近郊の高層ビル群には度肝を抜かれるし、いまもどんどんその数を増やしている。超高層ビルの建設を請け負う会社は大体、日系か韓国系。特に日系の建設会社の現場を見ていると、労働者の数が少ないのが分かる。日本の現場では当たり前のことだが、ここシンガポールでも、建設の高能率化が進んでいるのだろう。

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