シンガポールでアジアのエンジニアと一緒にソフトウエア開発をして日々感じること、アジャイル開発、.NET、SaaS、 Cloud computing について書きます。

シンガポールのIT現場で働く外国人

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 シンガポールの人口は500万人ぐらい。そのうちの180万人ぐらいがわたしを含む外国人。実に3、4割が外国人。日本の首都東京に日本中から人が集まるのと同じ感覚で、東南アジアの人がシンガポールに集まると言えるのかもしれない。わたしがいるITの世界では、外国人の比率は猛烈に高く、ほとんどの従事者がシンガポール以外の人と言ってもいい。ということで、わたしが今までに接した開発者の国民性を、独断と偏見で少し書いてみる。あくまでもわたしが接した範囲の開発者を基準に書いているので、たぶん間違っていると思うが………。

■インド人

 シンガポールにいるインド人はほとんどがタミール語を話すインド人。シンガポール国籍のインド人のほとんどは、タミール地方からの移民なので、自然にそうなるのだろう。タミール語とインドで最も話す人口が多いヒンズー語はまったく異なるものらしく、お互いの意思の疎通は英語を介さないとできないらしい。

 さて、このインド人開発者は、英語が上手ということがまず一番に挙げられる。ただし、インド人と一緒に仕事をしたことのある人なら知っていると思うが、彼らには独特のインド訛りがある。最初は戸惑うが、彼らの話す英語は、文法も使う単語も、立派な正統的英語なのである。正しい文法で、正しい単語を使って話してくれる英語は、実に分かりやすい。

 小生、イギリスで7年ぐらい働いたことがあるが、イギリス人の話す英語よりずっと分かりやすい。我々日本人が日本語で話すときに、いろいろなスラングや新しく生まれた言葉を、無意識に混じらせて話すだろう。例えば、「超」なんとかとか、「おもいっきり」のことを「おもくそ」とか。たぶんイギリス人が英語を話すときは、こんな感じで正統的英語以外の言葉をいろいろつけるのだろう。それをされると、外国人にはつらい。インド人の話す英語には、そういうスラングがないわけで、英語を外国語として話す我々にとって非常に分かりやすい。

 そして彼らは、仕事へのプロ意識が高く、経験年数が長い人が多い。たぶん、先進国のためのIT系の仕事を請け負う、いわゆるオフショア開発を一番初めにやり始めた国ゆえ、経験が豊富な人が多いのだろう。しかし、すべての人が最初から経験が豊富だったわけではない、当然、中には経験の短い人もいる。インド人は、経験が少ない人も新しい技術を身につけることにけっこう努力するように思う。ここまで書くと分かると思うが、彼らの単価は、その評判を正当に評価され高額だ。当たり外れのない、使える確率の高い人がすぐ必要になった時は、インド人を使うといいだろう。

■中国人

 シンガポールで働くIT系の中国人はそれほど多くはない。中国5000年の誇りと自信があるのか、素直でないところが多い。とにかく、いろいろなアドバイスを無視して物事を自分の考えだけで進めて、結局困っていたり、コーディングスタイルなどを決めて従わせようとしても、うまく従ってくれないことが多い。中国語の特徴である音節が非常に短い話し方が英語にも出る傾向があり、彼らの英語は恐ろしく早口で、何を言っているのか分からないことが多い。

■ミャンマー人

 シンガポールのIT現場には、若いミャンマー人が大勢働いている。彼らは、非常に素直でまじめ。指示したやり方を素直に聞いてくれる。それでいて、指示しないところは自分でやり方を考えて、それを実装してくれる。実は、わたしがシンガポールで一緒に仕事をした外国人では、今までこのミャンマー人が一番多かった。シンガポールのIT現場に入ってきて間がないミャンマー人は、開発者マーケットに大勢存在するからだろう。

 中には、未経験で最初は戦力にならない人もいたが、持ち前の素直さと努力の結果、1年も一緒に働いていればほぼ全員が戦力になってくれた。単価もそれほど高くない。そうやって育てたミャンマー人開発者は、転職して去っていくことがないのも良い点だ。たぶん、長期の開発、SaaSなどの開発をシンガポールで始めるなら、ミャンマー人を使うべきだろう。最近、日本のオフショア開発拠点としてベトナムがあるが、ミャンマーに、もしあの悪名高い政治的問題がなければ、有望なオフショア開発拠点になると思う。

■フィリピン人

 当たりはずれがある。3人ぐらい一緒に仕事をした経験がある。そのうちの1人はものすごく優秀だったが、他はあまり使えなかった。使えない人でも長く使うと、使えるようになるかといえばそうでもない。英語は大体分かりやすい。

■中国系シンガポール人

 シンガポールの多数派を占める中国系シンガポール人。英語はいわゆる「シングイッシュ」で、非常に分かりづらい。他国の人はハングリー精神が旺盛で、ここでがんばらなければ永住権をとれないとか、いろいろと厳しい現実があるが、自分の国にいる彼らはそういう心配はないわけで、いまいちがんばりがないように思う。この国の男性は、17歳になると2年間ナショナルサービス、つまり徴兵される。その後1年に最大40日間、技術の維持のために訓練に行かなければならない。その訓練のため、何の前触れもなく突然1週間程度いなくなることがあり、これがけっこうきつい。

■日本人

 シンガポールで、日本人開発者と一緒に仕事をしたことはない。しかしはわたしは日本人。わたし、そして、今まで日本で一緒に仕事をしたことのある日本人を他の外国人と比較して考えてみる。

 日本人はとにかく英語が下手。わたしはたぶん、日本人の中で飛びぬけて英語ができる人だろう。しかし、ここシンガポールではたぶん英語が一番下手な分類に入るだろう。

 日本人の開発者の特徴は、まず第一に超保守主義。動いているシステムにあるクラスの名前空間を変えるような変更を入れるとして、その変更にともなうテストをもう一度すべてやる必要があると考えたりする。確かに、物理的には大きな変更だが、まずリスクフリーのケースだ。それにもかかわらず、そういう発想をしてしまう。

 実は、変更の要件を満たすとき、その時の物理的変更量をなるべく小さくしようと考える発想は、変更に際してリファクタして、コードを修正しやすいようにして、その後目的の変更を入れるという、最近のソフトウエア開発の方法論に真っ向から矛盾する発想で、ある意味危険思想とも言える。その発想がまだまかり通っている日本のIT現場は危険かもしれない。

 日本人開発者の良い面は、とにかく品質を重視すること。そのためにテストを綿密にこなすことに慣れている。責任感も非常に高い。納期を守るためなら、長期間の残業もこなす。

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