筆者は1970年生まれ。先輩から、情報技術者を目指す若い方へ生きてゆくためのコラムです。

関東と関西の境界線

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 皆さん、特に東京と大阪の皆さん、ご存じでしたか。日本の東西で「馬鹿」と「阿呆」のニュアンスが、強烈に違うことを。東京では「馬鹿」は軽くて「阿呆」は罵倒ですが、大阪では「阿呆」は軽くて「馬鹿」は罵倒なのです。真逆なのです。これ、知っておいて損はないです。

 たとえば、大阪でむやみに「お前はバカだ!!」などと気楽にやると、関西人は、激怒するかもしくは立ち直れなくなるかのいずれかになります。また、東京で「お前はアホや!!」だなんて、気楽に言ったら、もしかすると半殺しの目に合うかもしれませんね。

■神戸に来て、おやっ? と思ったこと

 初めての会社。関東人の僕は、澄ましておとなしくしていました。そうしたら、同僚の社員から不気味がられました。どうやら、初対面から腹を割って打ち解けて話をしないと、打ち解ける気がないものと見なされるそうです。最初からフレンドでもないのに、フレンドリーにしなければ、なかなか仲良くなれません。もっと言えば、しゃべくりの街。それはもうテンション全開で……それは言い過ぎにしても、しゃべくらないと通じませんね。

■たぬきそばは、揚げ玉入りにあらず

 また、関東人の僕が、神戸高速鉄道の新開地駅の立ち食いそば屋さんで、平成3年ごろに困ったことがあります。僕は朝ご飯に「たぬきそば」、つまり、揚げ玉が乗っているそばを期待して「たぬき」を買ったのです。そうしたら、油揚げの乗ったおそばが……。「揚げ玉がはいってないんですが」「お客さんが買わはった食券はたぬきでっしゃろ? 間違いおませんがな」「いいや、揚げ玉が乗ってないからダメだ」「そんなことおまへん」「じゃあ、何を買えと言うのだ」「そしたらお客さん、『ハイカラそば』を買うてくんなはれ」……揚げ玉が乗ったそばの、どこがハイカラなんだ、という、釈然としない気持ちを胸に、油揚げの乗ったそばをすすったのでありました……。ハイカラ……。

■関東では「ねこまんま」関西では「お汁かけご飯」

 関西に来て、味噌汁の中にご飯をぶちこんでサラサラと注ぎ込む人がいますが、関西では立派な「お汁かけご飯」なので、関東の人におかれましては、「わー、ねこまんましてるコイツ」とかいうと、ジモティーはたいへん立腹します。また、「お好み焼きにご飯」とかいうメニューも普通にあるので、決して「おい、デンプンばっかり食べてるな」とか茶化さないでください。郷には入れば郷に従え……レッツゴー!!

■釣りに行って「チヌ」ってどんな魚?

 印刷会社時代の平成8年ごろ、直属上司に、淡路島に釣りに連れていってもらいました。そこまでは良かったのですが、上司が「みんな、チヌが釣れたぞ、やっほー」と言うので、魚を見てみると、なんと「クロダイ」。それからしばらくして言い争いがあって、「チヌじゃ!!」「いいえ、クロダイです!!」「チヌじゃ言うてるのに!!」「いいえ、クロダイです!!」「チヌ言うてるやろボケ」「ボケ言われたくありません、全国的に見ればこれはクロダイです!!」……とまあ、しょうもない言い争いが延々とありました。帰りの車中でも延々と……。

■メロンパンにあらず、サンライズ?

 神戸では、瓜を縦半分に切ったような形のやわらかいパンの中に、白いこしあんが入っているのが、メロンパンだったりします。少なくともコープこうべでは、全国的に見られるいわゆる「メロンパン」は、「サンライズ」と呼びます。あ、ガンダム作っている会社と同じ名前か。それにしても、なにゆえメロンパンをサンライズと呼び、メロンパンでないものをメロンパンと言うのか、僕は釈然としませんでした。

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メロンパンでないものがメロンパンでハイカラで……(無限ループ)

■移住から20年が経って……

 もう、メロンパンがメロンパンでなくても、たぬきそばがたぬきそばでなくても、怒ることはなくなりました。チヌはチヌとして理解し、例えアホとからかわれても、そば屋で醤油臭くないダシのおそばが出てきても、何にも感じなくなりました。最近ではタクシードライバーに、「お客さん、地元の人でっしゃろ?」と誤認されるぐらい、関西ナイズされてしまいました。20年も経てば、いい加減なじむものです。このように、慣れというものはおそろしいものです。

(神戸に来たら、いろいろ注意しましょうね!!)

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