将棋も人間も歳を重ねると「考えなくなる」件
以前に羽生永世七冠が、とあるインタビューで「将棋では、年々、指し手を考えなくなりますね」というお言葉です。
将棋の世界で言うところの定石・・おっと、これは囲碁の言葉か?、ならば定跡、つまり、相手の指し手がこうだったら→「最良の手はこれ」と「経験則から判っている」ので、あまり考えないで条件反射で指すということを仰っているのでしょう。この積み重ねで序盤は、あまり考える(悩む)時間は少ないということです。
さて、永世七冠の頭脳に及ばないまでも、エンジニアである私たちも、これと同じような経験がある筈です。上流工程の設計など、今までの経験や諸先輩方達から継承した手法や方法を、あまり考えず(悩まず)に使用していることって、多いと思います。
今から8年前、ERPパッケージのマニュアル作成社内統一マニュアルを作成する事となりました。それまでのマニュアルの書き方が、担当者任せだったこともあり、イッチョウヤッテヤルカ!と張り切ってみたのですが・・・「マニュアル of マニュアル=マニュアル作成規約」の作成は試行錯誤の連続でした。例えば、フォントの種類とか、標準のポイントなど、明朝かゴシックか、はたまた、P明朝なのか?をどうしてソレを選んだのか、万人に納得してもらう理由を添える必要があるのです。「俺の好み」で作ろうとしていた邪悪な気持ちに、神様が罰を与えたもうたかっ!
例えば、日本語の標準文章には「P明朝」を採用、画面や帳票のイメージフォームは明朝体を採用、数値はゴシックを使用することにしました。
採用した理由は、『人間の眼は、漢字の縦棒と横棒の線の太さが同じだと、認識時の眼精疲労しやすくなる』とのことで、明朝を標準にしました。ただし、アラビア数字はゴシックを採用しました。理由は、見やすいから。画面設計や帳票設計にPタイプのフォントを採用しなかったのは、英数のフォント幅が縮むため、実装した場合に、1行目と2行目の項目ラベルの位置ズレが発生するなどリスクがあるためです。レイアウト系の資料には通常タイプフォントを標準選択としました。また、特に困ったのはカタカナの扱いです。カタカナ単語の後にくる伸ばし棒の処理は大問題です。
標準表記の統一:「プリンター」なのか「プリンタ」なのか?
当時のJIS規格の表記に、カタカナ単語の最後が「-」で終わる場合、原則は、着けないという事を調べ、マイクロソフト社のトリセツの表記もJIS規格に準じているとの事で、ナンバー→ナンバ、メンバー→メンバ、プリンター→プリンタ、例外的に、メニューとエラーは認めるなど、規約を作りました。今まで、考えもしなかった事(定跡)を、事由付けをして、統一する作業は、とても大変でした。
マニュアル作成規約の話には、オチがあって、マニュアルリリース時期に、マイクロソフト社のマニュアル統一規約が変更になり、カタカナ単語の最後の伸ばし棒は積極的に付けて行くと方針の大転換があり、私達は拠り所が無くなって、まるで「梯子を外された」状況になってしまったのです。やれやれ。
システム開発業界でも、あまり単語の内容をはっきりと明示しないまま使われている言葉はというと
例えば、「要望」と「要件」の言葉の違いとか・・・
年末に、時間があれば、「当たり前になっていること」を再確認した方が良いのかもしれませんね。