海外IT企業で働いていた純日本人エンジニアがいろいろと考えてみる。

海外IT企業で必要な英語力

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 どうも、鹿島和郎(かしまかずお)です。今回はたまに聞かれるこんな質問について考えてみたいと思います。

 「海外のIT企業で働くにはどの程度の英語力が必要なんでしょうか。」

 まずは自分の個人的な経験から書きます。

○TOEIC 600点時代

 最近は入社の条件でTOEICのスコア提出を求めるところが出てきたり、大手企業でも、例えば、課長になるにはTOEICで600点取らなければいけないなど、TOEICスコアを昇進の条件の1つとしているところも増えてきています。

 わたしは、日本にいる時のTOEICのスコアが確か600点ちょいくらいでした。世間的にはそれほど悪くないスコアだと思いますが、現地に行って最初の頃は言葉がほとんど通じなく、何をするのも大変で外出が億劫だったことを覚えています。オンラインゲームでもやって引きこもろうかとも思ったのですが、そもそもADSL回線を引くのにも英語で電話しないといけないので断念しました。

○TOEIC 約900点でも……

 ちょっと調べたところ、大手企業の昇進の条件に使われているのはTOEIC 600点が多いようです。600点が最低ラインなら、まぁ800点くらい持ってればとりあえず大丈夫なのでしょうか。職種や個人個人によって違うと思いますが、一般的には800点だと相当厳しいのではないかとわたしは思います。

参考:TOEIC(R)Testスコアを求める企業

 日本人は文法や語彙とかの基礎力はそこそこある人が多く、自分も比較的基礎はあったようなので、語学学校で勉強するうちにリスニングの力なども少しずつ付いてきました。現地に住んでから数カ月後に受けたTOEICのスコアは800を大きく超えて900点弱でした。800点超えと言えば日本ではかなりの上級者と言われてもおかしくない点数なのですが、その時点でもわたしの英語力としては、日常会話は何とかできるものの、いまだに英語で会話するのは苦痛で生活も不便なままでした。

 そのさらに数カ月後に、たまたま現地のIT企業でアルバイトをする機会に恵まれて、結局その後に正社員になるのですが、当時の上司からは、

 「カズ(向こうではそう呼ばれてました)は最初は英語が全然話せなかったな」

とたまに言われます。TOEICで約900点を取って、それからさらに数カ月は現地で生活していたにもかかわらず、です。

 個人的な話だけでもあれですので、ここで他の人の例も挙げたいと思います。

○勉強しつつ現場で実践を積んだSさんの場合

 自分が以前いたアメリカの会社で、去年インターンを募集していたので(というか随時募集してるのですが)、それに興味を持った日本人の若手ITエンジニアのSさんを紹介しました。Sさんも現地に着いた当初は英語がほとんど喋れなくて、業務に支障を来しまくりだったんですが、3カ月目には、たどたどしいながらも何とかコミュニケーションを取ってやってるようでした。やはり必要に迫られれば何とかなるみたいです。

 彼の場合は自分の例とは逆で、渡航時のTOEICのスコアは500点に満たなかったと思いますし、帰国時でも700とかにも達していないはずです。それでも現地では何とかなっていましたので、TOEICのスコアってのは英語力を計る1つの物差しに過ぎないのかな、と思います。

○「実践」のみのYさんの場合

 向こうに住んでいた時に、友達ではないけど顔見知り程度の20代の日本人男性(非ITエンジニア)がいました。女の子と遊ぶのに生活の多くを捧げているような感じの人です。挨拶も、「Hi xxx, how are you?」とかではなく「Yo, what's up?」って感じなので、Yさんとここでは呼びます。

 クラブとかパーティーとかに頻繁に顔を出したりして、新たな女の子との出会いを求めて精力的に活動していたため、彼の英語は非常に流暢で発音も上手でした。まったく違う分野とはいえ、同じ日本人男性が異国の地で「活躍」しているのを見て、感心した記憶があります。

 さて、そんなYさんとの間に共通の友人(外国人)がいて、Yさんがその友人に送ったメールを見る機会がありました。

 主に実践で英語を習得してきたYさんなので、それほどちゃんとした英語は書けないだろうとは想像していたのですが(そもそも友達への私的なメールですし)、それを差し引いても彼の英文は酷かったです。初歩的な文法の誤りや単語のスペルなど、短いメールなのにかなりの数の間違いが……普段しゃべる時のあの流暢な英語とのギャップがあまりにありすぎて、かなり驚きました。

 こちらは極端な例ですが、やはり実践だけじゃなくて理論も勉強する必要があるなぁと思いました。

 毎度ながらつらつら書いてきましたが、今回の話のまとめとしては、

  • TOEICの点が良くても必ずしも仕事で使える英語力とは限らない
  • 勉強も実践も両方必要

ってことでしょうか。

 今回は「仕事で必要な英語力」についてお話ししてきましたが、いかがでしたか。

 なお、お約束ですが、このコラムはわたしの個人的な意見・経験を反映したものですので、海外でのITエンジニアの一般的な話ではないことをお断りしておきます。

 それではまた次回。

Comment(8)

コメント

あずK

はじめまして。
エンジニアライフでの連載を通してTOEICの学習を行っていた
あずKと申します。

TOEICは結局のところ「読み」と「聴き」の試験なので、
どれだけ点数が高くても会話も出来ない可能性というのは痛感しています。
今の時点でも、今年1月の受験で570点取りましたが、
言いたいことをスラスラと口から英語で話せないです(苦笑)。

TOEICの点数とスピーキングのスキルは、また別の次元なのかなあと思っています。
今後は、英語で話せるように、色々とやっていきたいです。

鹿島

あずKさん、はじめまして。

他の方のコラムもたまに読ませてもらってます。あずKさんは比較的短期間で100点以上点数が上がったようですし、今年中くらいに730点に行くといいですね。

TOEICは「読み」と「聴き」の試験というのはまさにおっしゃるとおりだと思います。特に「読み」が強い人は有利だと思います。(私が受けた時と今では形式は違うので、今では少し事情が異なるかもしれませんが)

スピーキングはとにかく口に出すことが大事かな、と。

お互い頑張りましょう。

尼野

はじめまして。
わたしも現役でアメリカで働いていますが、確かにTOEICのスコア900はまだまだ英語の入り口ぐらいですよね。
元々、日本で外資系の会社に入社して受けさせられた時のスコアが350だったので、その時はスコア900の人はみんな「ペラペラ」だと思っていたのですが。。
個人的には英語力は「読んだ量」「聞いた量」「書いた量」「話した量」にそれぞれ比例すると思っています。
勉強というより体操に近いかな、と。
日本人は英語が苦手な人が多いですが、頑張りましょう。

鹿島

尼野さん、はじめまして。

そうですね。確かに体操(に限らず運動全般)のように練習量にほぼ比例する感じですね。もちろんいいコーチに付いたり才能ってのもある程度関係有るとは思いますが。

私が働いていたのは一応アメリカ企業だったのですが、アメリカ国内で働いたことはないので、もしよければアメリカの事情とかを気が向いた時にでもコメントして貰えると嬉しいです。

まだ若い人

鹿島さま

はじめまして。
まだ若いけれども腰痛くなったりする人です。

TOEIC900でもまだまだなんですねー。ひー、道は遠い。
おと思いきやそうでもないような?

とりあえず練習量に比して身に付いてくるというのは
感じていることで、才能は無くとも
良いコーチに巡り合えているようです。
やっぱり凡人にできるのはひたすらコツコツ積み重ねるってことくらいかな。
才能がなければ努力と運で勝負するしかないです。

鹿島

まだ若い人さん、はじめまして。

腰痛は私も経験がありますが辛いですよね。私の場合、医者のアドバイスに従ってストレッチとかをしつつ、普段の姿勢にも気をつけたりしてたら徐々に良くなりました。

語学は(まぁ語学に限らずですが)、コツコツやるしかないですねー。まだお若いなら記憶力とかも良いでしょうし、コツコツやっていればそのうち結果が出ると思いますよ。

私も若いときにもう少しやっておけば・・・と良く思います。

みりゅ

はじめまして。

自分は、英語はまったくできませんが。

あずK さん
>TOEICは結局のところ「読み」と「聴き」の試験なので、
>どれだけ点数が高くても会話も出来ない可能性というのは痛感しています。

 あぁ、やはりそうなのですね。
Amazonで少し英語の本を探しているとき、TOEICが800点の人が、ビジネスや専門的な話はまったく問題ないが、日常の会話が出てこなくて困るときがあると書いてました。

日常会話と、TOEICは別物のようですね。
日常で定番の決まりきった(失礼にならない)簡単な表現があるようです。

NHK教育テレビにも出ていたスティーブ・ソレイシィ は、以下のようなことを本に書いてました。
>自分で表現した英語こそ、自分のものになるのです。

>最終的に自分の英会話力を左右するのは、この万歩計に刻まれた英文の数。

>多くの日本の英語のレッスン(中略)では(中略)もし、1時間に10英文以下の発話しか求められないものなら、即、やめたほうがいいと思う。

 彼は、日本語を覚えるのに、質問と答えのネタ帳を自作したそうです。
やなり、何かを覚えるのは苦労があるようです。

鹿島

みりゅさん、はじめまして。

>自分で表現した英語こそ、自分のものになるのです。

これは確かにそう思います。ある表現を会話なりメールなりで実際に自分で使っていくと、自然にそれが出てくるようになるというのは個人的にも感じています。

> やなり、何かを覚えるのは苦労があるようです。

これも本当にそうですね。特に30過ぎると記憶力が悪くなるので・・・

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