年収と幸せの不思議な関係
今回も少しだけお金の話をしたいと思います。「人は年収が増えたら幸せになれるのか?」一般的には、年収が増えたらその分幸せも増えると考えられています。行きたいところに行けるし、好きな物を食べることが出来るし、オシャレも出来るし、あらゆる自己投資が可能になります。年収が増えれば肉体的にも精神的にも行動範囲が広がる為、その分、幸福度合いも増していくのだと予想出来ます。
しかし、ここで一つ面白い研究結果を紹介しましょう。
2015年ノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン教授の研究によると、年収が増えることで得られる満足感は、7万5000ドルまでとの調査結果を発表しました。日本円に直すとおよそ800万円に相当します。当時のレートと照らし合わせると、年収650万円あたりなのかもしれません。
出典:ダイヤモンドオンライン
年収650万円辺りまでは年収と幸福度とは正の相関関係ですが、年収800万円に近づくにつれ緩やかになり、それ以降はほぼ横ばいです。年収800万と、その倍の年収1600万円と、幸福度には大きな変化は無いと研究結果が語っています。年収1600万円が想像し難ければ、世帯収入で考えれば理解しやすくなります。「夫の年収800万円、妻は専業主婦」の家庭と、「夫婦共働き双方年収800万円」の家庭との幸福度について想像してみて下さい。ぼくも感覚的にではありますが、この研究結果にはある程度納得しています。
ではなぜ、年収800万円辺りで幸福度は頭打ちになるのか?色々な諸説はありますが、このくらいの年収があれば「大概のことは何でも出来るから」だと思ってます。年収800万円あれば、年に1回程度なら家族で海外旅行に行けますし、新築戸建ローンも普通に組めます。子供を私立学校に行かせたり、高級ミニバンも新車で購入出来ます。日常生活を送る中では、上位の水準だと思います。それより先は贅沢ゾーンです。急に税金は高くなるし、高級外車や高級腕時計を手に入れるには、年収800万では多少の背伸びをする必要があります。そしてこれらを深追いし始めると、年収1000万円や2000万円でも物足りないと思えてしまう程の世界への入り口に立つことになり、逆に幸福度が減少するとも言われています。
データが語る違和感の正体
じつはこの研究結果は、ぼくが高年収を目指す過程で数年前に仕入れた情報であり、冒頭でも触れたとおり研究結果には感覚的にも納得しているつもりです。ただ、研究結果にケチをつけるつもりではありませんが、当時から何かしらの違和感のような物を感じていて、その違和感の正体がずっとわからないまま過ごしてました。しかし最近になって、その違和感の正体が分かったのです。違和感の正体それは、この図には時間軸が見当たりません。調査対象サンプルの年齢が分からないのです。ようするに、年収300万円の人と年収800万円の人は、そもそも年齢が違うのでは?という観点です。
一般的に年収と年齢は相関関係にあるので、歳を重ねれば年収が増えます。何が言いたいのかと言うと、この研究で用いられた年収800万円以上のサンプルデータに選ばれた方達は、お金では買えない幸せの価値を知る事が出来る、人生後半組の方達がかなり混ざっているのではないか?という仮説です。若い頃は自分が欲しい物を買うだけで幸せでした。しかしそれにはお金が必要です。やがて子供との生活に幸せを感じるようになり、孫と一緒にいるだけでも幸せになります。幸せへの価値観が変わり、金銭的な幸せの獲得コストが下がっているような気がしてます。逆にお金ではどうすることも出来ない幸せに価値を感じていくのが人生後半であり、そういう考えの方が、年収800万円以上のサンプルデータに多く偏っているのだと睨んでいます。
つらい経験の方が後に幸福度を高める
もう少し別のアプローチをしてみます。つらい経験の方が後に幸福度を高めてくれる気がしてます。とても恥ずかしい話ですが、ぼくは年収200万円台の頃に結婚をし、子供を授かりました。当たり前ですが生活は厳しかったです。つらい思いをさせてしまった妻には今も頭が上がりません。しかしそんな生活の中でも腐ることなく、高年収への戦略ロードマップを描き歩みを進め、年収300万円台に到達した時は震えるほど感動しました。さらに数年後、年収400万円台に乗ったときも感慨深かったのを今でも鮮明に覚えています。その時は常に全力疾走で幸せを実感してませんでしたが、思い返せばとても幸せな日々だった気がします。その後は年収が節目を超える度に、その感動は薄れていきました。
もう一つ面白い経験があります。まだまだ生活が厳しかった頃、たまには家族サービスをと思い、大人気テーマパークへの旅行を企画します。地方に住んでいるぼくにとっては交通費も大きな負担となり、少しでも節約する為に、小さな子供を抱えながら夜行バスで往復した記憶があります。生活も安定してきた数年後、経済的にも余裕が出てきたので、同じテーマパークに家族全員でグリーン車に乗って往復しました。グリーン車での移動のほうが一時的な高揚感は獲得できましたが、今となっては夜行バスで決行した記憶を塗り替える事は出来ません。
この二つの経験から分かったことは、人はつらい経験の方が記憶に残るようですし、それを克服した時の感動は忘れにくく、より幸福度を高めてくれるというものです。そしてこの事実に年収の大小は関係ありません。ぼくはこの事実を、人生の後半に差し掛かったタイミングで知ることが出来ました。
好きな職種にチャレンジして欲しい
そろそろ散らかした伏線を回収していきますが、若手ITエンジニアの方には、年収にこだわることなく興味のある職種にチャレンジして欲しいと思ってます。前回コラムでは高年収シナリオを紹介しておきながら真反対な事を言うのもアレですが、別にお金なんてどうでもいいのです。IT業界で頑張っていればそれなりにお金は稼げます。それよりも好きな職種に巡り合ってその仕事を一生の友にすることの方が遥かに幸せです。ぼくの場合、若い頃に描いた高年収戦略としてITコンサルタントへのシナリオを選択し、それを実現させました。この職種を知り得たきっかけはお金でしたが、今となってはこの職種がとても好きだし、そのことに誇りを持っています。例え今よりも年収が下がったとしても、ギリギリでも生活が出来るのであれば、この職種にはこだわり続けていきたいです。
歳を重ねれば幸せの価値観は変わります。若手ITエンジニアの方にも、一生の友に出来る仕事を見つけて欲しいし、その為にはつらい経験やきつい経験を積極的に買って、昨日の自分よりも高いレベルの自分を目指して欲しい。その方が、年収だけを追い求めるよりも遥かに幸福度を高める事が出来るのだと思うのです。
コメント
たいき
たしかに年収が低いときはデートのために少ない予算でどのようにお金を使うか、相手のためにいろいろと考えて楽しかった記憶があります。しかし、僕の場合は今も年収が低いことですww
勝ち逃げ先生
たいきさん
>相手のためにいろいろと考えて
少ない予算で工夫をするのも楽しいもんですよね。本当の幸せとは、向き合う姿勢とかそこにかける労力なのかもしれませんね。たいきさんの娘さんとの向き合い方を見てると、読んでいてこちらが幸せになりましたよ。