「人と組織」という切り口で、経営と現場の課題解決についてカレンコンサルティングが分かりやすくお伝えしていきます。

コミュニケーションを考える(3):場と質の関係

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『コミュニケーションを考える』の第3回目は、コミュニケーションの双方向性と組織特性の関係についてお話します。さらに「場」について少しアカデミックな見地から、お伝えします。いつまでも結論が出ない会議にイラッとしながら目の前の会議に付き合うのか?――皆さんが自分の組織の特性を考慮しながら、コミュニケーションする場面や立場に応じて、うまく使い分けるためにもまずはその原理とメカニズムを知っておきましょう。

双方向コミュニケーションと自律分散型組織

前回は「成立しないコミュニケーション」から始まり、時代とともに変わってきたコミュニケーションにはそれぞれスタイルがあり、大きく分けて2種類があることを述べた。
その1つが、「上意下達型コミュニケーション」だ。上(経営、上司等)から下(現場、部下等)へガツンと落すやり方だ。迅速な意思決定や指示命令で組織を動かす軍隊には向くが、ごく普通の企業組織にはあまり向かないだろう。下からの意見を上が一切聞かないため、下は意見を言わなくなるだろうし、上の言うことに従っていれば良いという考えになるので、指示待ち体質にもなりやすい。現場のマイナス情報も上に伝わらない(伝えない)ので、ことが明らかになった時には大問題になっている。

今回、皆さんにお伝えする2つ目のコミュニケーションは、「上意下達型」のような「一方通行型」ではない「双方向コミュニケーション」だ。図1は、組織(階層型組織と自律分散型組織)とコミュニケーション(上意下達・一方通行型と双方向型)を階層ごとに示したものだ。

図1:組織特性とコミュニケーションの取り方

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図1の右図で示す自律分散というネーミングはコンピューティングの処理からとっている。それぞれが明確に役割を持っていて、現場の部分部分で最適化された処理がなされるという意味合いから筆者は「自律分散型組織」と呼んでいる。わかりやすく言えば、上からあれこれ指示されなくとも自分のやるべきことはきちんとわかっているという「オトナの組織」である。コミュニケーションの方向は「上から下、下から上、横方向」と縦横無尽(Web状)だ。横方向も自部門内に限らず、部門を超えて情報や問題を共有するようなコミュニケーションをとっている組織だ。

さて、皆さんの部門でとられているコミュニケーションはどちらだろうか?
何となく、右側の双方向コミュニケーションがいいなと思う人もいるだろうが、組織の中にはこの2つのコミュニケーションスタイルが混在している。それはコミュニケーションの目的によって変わるからだ。例えば、「我が社は自律分散型の組織だよ」としても、部門責任者から今期の方針説明の時、朝礼で上司が話をする時等は、上意下達(一方通行)のはずだ。これについては、後ほど「コミュニケーションの質」で述べる。

2つの「場」――フォーマルとインフォーマル

ここで「場」というものについて考えてみたい。「場」は、日本だと「○×の場」として使われる。「発言の場」とか「ここはそういう場じゃない!」等、政治家だけでなく皆さんも似たような発言をした経験を持っているはずだ。
アカデミックな分野では「場の理論」というものがある。量子物理学の場(電磁場等)ではなく、心理学や組織行動学の分野だ。そこでは、"Community of Practice"として示され、日本語では「実践共同体、実践コミュニティ」と訳されることが多い。少し古いが、ITmedia エンタープライズに記事があったのでご興味のある人は参照されたし。

ここでは難しいことはさておき、場には2種類あることを知って欲しい。1つは形式的であり、何かしらの目的をもって設置された場である。これを「フォーマルな場」という。そして、もう1つが、自然発生的に形成される「インフォーマルな場」である。これらを図2に示す。

図2:「場」の特性を知る(フォーマルな場とインフォーマルな場)

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もっとわかりやすく言ってしまえば、服装を思い出してもらえば良い。フォーマルだとドレスコードにうるさい一流レストランでの食事、テーブルマナーなど窮屈なイメージだ。一方、インフォーマルはカジュアルウェアだと思ってもらって構わない。普段着で気軽に入れるし、食事をしながらわいわいがやがや話をしてもよいし、肩も凝らない。
これを企業組織に当てはめてみると、フォーマルな場の典型は会議だ。報告や連絡をしながら、議題があり結論を出すことが求められる。「フォーマルな場=決める場」とも言える。「ウチの会社の会議は結論に至らないことが多いっす...」という人もいるかもしれないが、それはもはや会議ではなく、だらだらと時間が過ぎる雑談である言い切ってしまいたい。
もう1つのインフォーマルな場は、「何かを共有する(問題、悩みなど)場」だ。そこでは結論に至らないかもしれないが、親身になって一緒に考える人が存在する、腹を割って話せる関係性(人間関係や信頼関係)の土台があるからこそ話ができるというものもある。

このように、2つの場の特性は正反対である。
今、様々な企業では「インフォーマルな場」が少なくなってきている。これまで述べてきたようにコミュニケーションがリアルでなくても、IT(メール、グループウェア、SNS等)の普及もあるが、これで十分と考える人も多いからだ。コミュニケーションそのものが無機質なものにもなりつつあることは否めない。
前回はアジャイル開発プロセスの話もしたが、そもそも、日本人はコミュニケーションが欧米人と比べて苦手であり、エンジニアに目を向ければ元々、コミュニケーションは得意としない。したがって、インフォーマルな場が形成されにくいのが日本だ。そんな日本企業に対して、アメリカのIT企業を真似して、社内をフリースペースにしたり、カフェコーナーを設けたところで、社員からすればタダでコーヒーを飲める場所が増えるだけで、コミュニケーションの取り方や質が著しく変わったり、上がるわけではない。アジャイルがなかなかうまくいかないのも無理はないものだ。

コミュニケーションの質を考える

さて、ここまで述べてきたことをいったん整理したい。

 ・組織構造(階層型、自律分散型)
 ・コミュニケーション(上意下達・一方通行、双方向)
 ・場(フォーマル、インフォーマル)

の3つが登場した。これらに「コミュニケーションの質」を加えたものを図3に示す。

図3:コミュニケーションの種類と質、組織特性と場の関係

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中央の横方向のラインは、青色の線より上の部分は双方向の特性を持つコミュニケーションで自律分散型組織で見られる。下の部分は上意下達・一方通行の特性を持つコミュニケーションで階層型組織で見られる。最下層はおしゃべり・飲み会などの言葉だけのやり取りでここでは論外としたい。
目指すべきコミュニケーションの質は「創知」であるが、コミュニケーションや組織風土が問題となる企業は「相談」のレベルにも至っていない場合がほとんどだ。例えば、新入社員はとかく「報連相(報告・連絡・相談)」と言われるが、"報告・連絡"よりも"相談"はコミュニケーションの質レベルが上であることをこの図は示している。イメージしてもらえばわかるが、相談は信頼している相手(他、力になってくれそうな人、勇気づけてくれそうな人など)にするものだ。相談者側は自分自身の弱みを相手に見せ、話すためには相当の勇気が必要である。口が軽くて、相談内容をペラペラとしゃべる相手に皆さんも相談はしないだろう。たかが報連相と言っても、「相談」は双方向コミュニケーションであり、その土台には、相互理解や信頼関係が築かれていることが欠かせない。

企業がよくやる失敗――会議の場で相談をさせること

よく「あるある」として、フォーマルな場とインフォーマルな場をごちゃ混ぜにして行うことだ。これはよく管理職が部下を集めてやりがちだ。
既に賢明な皆さんはお分かりの通り、「誰がかしこまった(会議のようなフォーマルな場)で、弱みを見せるような相談(インフォーマルな場向き)をするか!」ということだ。仮に、「僕の悩みはね......」「私の悩みは......なのよ」とぶちまけるのは相当の勇気がいるはずだし、実際に悩みと言うよりも、困りごとのほうをぶちまける場になりがちだ。同時に、表面的な薄っぺらい相談事しか出てこず、本質はもっと深い部分にあることを相手に悟らせないというカムフラージュもする。
簡単なことだが、フォーマルな場とインフォーマルな場を同時に行ってはならない。

今回はここまでにしましょう。もう少し、コミュニケーションや関係性について知りたい人は当社のWeb:https://www.carren.co.jp/ をご覧ください。小難しく書いてあります。
さて、今日はクリスマスイブですね。Merry Christmas !! また、少し早いですが、良い年末年始をお迎えください。来年また、お会いしましょう!

記:株式会社カレンコンサルティング / 世古雅人

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