“女子経営者”から見た技術屋さんの問題を見る目 「何の目を持って見ていますか? ~虫の目、鳥の目、魚の目~」
今回は、わたくし渡邊清香から見た技術屋さんとそれ以外の人との思考の違いについて感じていることをお話ししたいと思います。
私自身は自己紹介で述べたように経済学部出身ですが、業務のモデリングでUMLを用いながら、製造業の方々や開発部門、技術屋さんと接する機会が多くあります。
「理系の人は、1つつまづくと先に進めない。文系の人は、はじめに大枠をざっくりとつかむ」と聞くことがあります。
したがって、双方が一緒に問題解決など何か1つのことに取り組むときには足踏みをしてしまうところが異なります。
理系出身の人が多いロジカルな思考を持つ人は、「ここがなぜこうなるんだろう。ここを解決しないと先に進んでもだめだな」と自分の世界に入り込んでしまい、周りが見えなくなってしまうこともあるでしょう。
一方、文系や芸術出身でロジカル的思想があまり強くない人からすると、「なんでこんなところで止まるんだ。後から、じっくり考えればいいじゃないか。とにかく今は先に進みたいのに」と感じてしまうこともあるでしょう。
職場において、このような違いを感じることは、お互い意外なストレスだったりします。
■あなたの今までの勉強スタイルは?
よく自分で答えを見つけ出したい人っていますよね。
この傾向が強く持っているのは理系出身者、つまりロジカルな思考を身につけている人に多いと思います。
理由は簡単。今までの学習スタイルは、答えが必ず1つあり、自分の思考回路で導き出してきたからです。
これに対し、直観やイマジネーションが強い人の多くは文系やクリエイティブの出身が多く、これらには答えが複数あります。受け手の感性や自分の考えによって答えが異なる分野であるため、答えを見つけ出すというよりも1つの結論を導き出す学習スタイルだと思います。
この学習スタイルが問題を解決する際の考え方にも大きく影響し、まったく異なるアプローチで問題解決を展開していきます。
ロジカルな思考を身につけている人の目を「虫の目」とするならば、直観やイマジネーションを大切にする人を「鳥の目」。そして、両者を合わせて全体の流れを見ていくことを「魚の目」ということができるのではないでしょうか。
以降はこの「3つの目」と関連付けて話を進めていきたいと思います。
■問題を解決する手段は一つか?
今、目の前で起きている現象に問題が生じ、解決策を考えなくてはならないとします。
このとき、あなたならどこから手をつけますか?
多くの人は、今起きている現状を調べることから着手すると思います。そして、現状を整理し、問題の原因を突き止めます。次には、それらの因果関係を考え、原因を解決するための対策とそれを実行するまでの計画を作成するでしょう。
ここまでで、気をつけなくてはならないことがあります。
それは今起きている問題と原因、解決策が必ずしも1対1ではないということです。
■「虫の目」で問題から原因を導き出す
ロジカルな思考を持っている人には1つ1つ理解を深め、着実に先に進めていくことは難しいことではありません。むしろ当たり前の考え方でしょう。しかし、直観やイマジネーションが強い人からすると、1つ1つを着実に理解、解明していく「虫の目」を持つことは難しく感じてしまいます。
しかし、1つ1つの問題を理解し、その原因を突き止めることが真の原因を突き止めることができます。同時に、このような「虫の目」を持っていないと全体を把握する「鳥の目」も間違ったものとなってしまいます。
■「鳥の目」で原因から解決策を導き出す
洗い出された原因から解決策を考えだすのは、全体を把握しているのとしていないとでは大きく変わってくると思います。ここでいう“全体”とは問題が起きている環境のことを言います。決して、問題や原因のことではありません。問題を起こしている、原因を解決する人や職場のことを言います。
問題を引き起こしている原因をいくら正しく導き出したとしても、その原因をつぶしていく環境を把握していないと実行不可能な解決策を打ち出してしまいます。
また、「虫の目」だけでは、部分最適の解決策しか講じることができません。環境を把握し、全体最適を目指すためには「鳥の目」が必要となります。
■「魚の目」で解決策から実行計画を作成する
解決策を打ち出し、実行していくための計画を作成していく際には、「魚の目」が必要となります。問題と原因、全体を把握した上で考えた解決策をどう実行していくか。環境によって異なる流れに乗せることが重要となってきます。
ここの流れとは業務の流れを指します。業務の流れを把握するためには、1つ1つを理解する「虫の目」をもつロジカルな思考はもちろん、視野が広い「鳥の目」をもつ直観やイマジネーションも必要となります。なぜならば、業務がどのように流れているのか把握するためには、業務フローを形成しているプロセスと全体フローをきちんと理解していなければならないからです。こうした「魚の目」を持ち、流れに合う実行計画を作成していくことではじめて問題を解決するための実行計画を作り上げることができます。
■事実は1つ。持っている、見ている「目」は多様
人によって問題解決の思考回路は大きく異なります。緊急度や優先順位が高い問題解決を実行しているときには、自分との異なる思考回路に疑問や苛立ちを覚えてしまうこともあります。そのようなときには、ここで書いたような「自分は今、何の目を持っているのか」、また「相手は何の目を持って見ているのか」を考えてみてはいかがでしょうか。
「問題解決を見ている」という事実は1つでも、人が持っている目や見ている目はいろいろあります。このことを双方が理解することで、今までにない新たな解決策や考え方が生まれてくると思います。なによりも、自分自身がストレスを感じることなく仕事に向き合うことができるのではないでしょうか。
コラムニスト:渡邊清香