『Titanium Mobileで開発するiPhone/Androidアプリ』――スマホアプリ開発の救世主、Titanium Mobileの理想と現実
Titanium Mobileで開発するiPhone/Androidアプリ――JavaScriptによるスマートフォンアプリ開発入門 北尾雅人 (著)、増井雄一郎 (監修) 翔泳社 2011年6月 ISBN-10: 4798123986 ISBN-13: 978-4798123981 3129円(税込) |
■この頃ちまたで流行るもの
最近、街中でスマートフォンを使っている人々を見掛ける。スマートフォンと一言でいっても、それぞれのプラットフォームは異なる。iOS・Android・Windows Mobile、この3つが最もメジャーだろう。
プラットフォームが異なれば当然、アプリケーションの作り方と開発言語も異なる。同じ機能を実装しようにも、iOSならObjective-C、AndroidならJavaを使って開発しなければならない。同じアプリケーションを2つのプラットフォームでリリースしようとすれば、ほぼ2倍の時間と工数が必要――アプリ開発者にとって頭を抱える問題だった。
ここで登場したのが、Titanium Mobileである。Titanium Mobileは、iOS・Android・Blackberryに対応した開発環境だ。Titanum Mobileの最大の特徴は、「JavaScriptで書いたソースコードを各プラットフォームに対応したものにビルドする」ことにある。
まさに、スマートフォンアプリ開発の救世主。本書は、そんなTitanium Mobileのインストールから実際の開発、リリースまでを網羅して解説している。
■実際に手を動かしながら読む本
- 第1章 Appcelerator Titanium Mobileについて
- 第2章 開発環境導入とアプリケーションの第一歩
- 第3章 実践! Twitterクライアントアプリの開発
- 第4章 ライブラリやデバイスの活用~続・Twitterクライアントアプリの開発~
- 第5章 GPS活用アプリケーション「食べナビ」
- 第6章 Titanium Mobile API簡易リファレンス
本書は、開発環境の導入から実際の開発手順まで、まんべんなく押さえてある。また、ソースコードが多く掲載してあるため、実際のコードの書き方やポイントを押さえやすい。実際に写経しながらアプリを作ってみるのが一番だが、「時間を取れない」「環境そろえられない」人は、Githubで公開されているサンプルコードを参考にするとよいだろう。
1点、注意しておきたいのが、本書の第2~3章で取り扱っているTwitterクライアントがOAuth認証であることだ。現在、スマートフォンアプリのほとんどはTwitterの認証にxAuthを利用している。もし、本書を参考にして作ったアプリを公開するなら、事前に注意しておいてほしい。
スマートフォンアプリに必要なUIの作り方、各種デバイス(カメラ・GPSなど)へのアクセスについてもサンプルコードがあるため、ここから新しいアプリを作成するヒントを得ることもできる。難易度としては、JavaScriptの文法が理解できているなら問題ないレベルだ。
■Titanium Mobileの理想と現実を味わう
主にUI周りで、以下のようなソースコードが出てくる。これこそがTitanium Mobileの現実だ。
if(Titanium.Platform.osname === 'android'){ //処理1 }else{ //処理2 }
アプリケーションを実行するOSがAndroidなら処理1を実行、それ以外ならば処理2を実行する。つまり、プラットフォームごとに処理を分けているのである。OS差を意識せずにコードが書ければベストだが、現実はそう甘くない。
本書のサンプルコードを読む時には、特に「処理を分けるべき部分」に注意を払っておきたい。
同時に複数のプラットフォームでの動作を目指すのではなく、まずは1つのプラットフォームにターゲットを絞ってソースコードを完成させ、その後に他のプラットフォーム向けのソースコードを記述する形の方が理解しやすいし、つまらないミスが少なくなるだろう。
■プラットフォームと言語の壁を取り払う
スマートフォンアプリを作成する時は、各プラットフォームに対応した言語で書くことが当たり前だった。だが、Titanium Mobileはその壁を取り払った。JavaScriptを使ってスマートフォンアプリを作成できるという点だけでも、十分にTitanium Mobileの利用を一考する価値がある。本書は、初めてのTitanium Mobile利用に必要な知識を十分に得られる。スマートフォンアプリの“最初の一歩”としてオススメしたい。
■こんな人にオススメ
- とにかくスマートフォンアプリを作ってみたい人
- Objective-CやJavaより、JavaScriptの方が自信がある人
- 複数のプラットフォーム向けにスマートフォンアプリケーションを開発してみたい人
(『不思議そうで不思議でないちょっと不思議な現場の話』コラムニスト
野口おおすけ)