ヒューマンスキルを身に付ける「鉄則」108カ条――『SEのための29歳からのキャリア向上計画』
SEのための29歳からのキャリア向上計画 山崎 有生(著) 技術評論社 2010年7月 ISBN-10: 4774143227 ISBN-13: 978-4774143224 2,079円(税込み) |
2009年 第1位(81.6%)
2008年 第1位(76.6%)
2007年 第1位(79.5%)
2006年 第1位(81.7%)
上記は、社団法人 日本経済団体連合会が調査している「新入社員に求めるスキル」の結果である。トップに輝いているのは「コミュニケーションスキル」だ。なんと、7年連続で「コミュニケーションスキル」が首位を取り続けている。
■「技術力はそれなりに自信があるけど……」キャリアに悩むエンジニアのための本
「コミュニケーションスキルは重要だ」とよく聞くが、なぜコミュニケーションスキルが重要なのか? そもそもコミュニケーションスキルとは何なのか?
本書は、「大事なのは分かるけどよく分からない」コミュニケーションスキルを体系的に解説し、かつ「コミュニケーションスキル」の獲得方法を紹介している。
「コミュニケーションスキルはエンジニアのキャリアアップのために必要だ」――著者はこう主張する。
エンジニアとしてのキャリアアップを考えるとき、まず思いつくのが「技術力」だ。20代はとにかくプログラミングをして技術力を磨き、一人前に仕事がこなせるようにすればいい。問題は、その次のステップである。30代間近になって部下がつき、大きな仕事を任されるようになったら、どうやってキャリアアップを目指せばいいのか? その際に必要なのが「コミュニケーションスキル」なのである。
「技術力があって優秀なのに、コミュニケーションスキルがボトルネックとなって伸び悩む人が多い」と著者は指摘する。本書は「技術力にはそれなりに自信があるけれど、この先どうやってキャリアアップを目指したらいいのだろう」と悩むエンジニアがのために書かれている。
■「ヒューマンスキル」獲得のために必要な鉄則108カ条
本書は、エンジニアがキャリアアップのために伸ばすべきスキルとして、以下の3つのスキルを紹介している。
- コミュニケーションスキル
- ネゴシエーションスキル
- リーダーシップ
この3つのうち、基礎となるのが「コミュニケーションスキル」だ。「ネゴシエーションスキル」や「リーダーシップ」は、コミュニケーションスキルが形を変えたものである。ということは、まずエンジニアはコミュニケーションスキルを磨く必要があるということだ。
では、コミュニケーションスキルとは何か。コミュニケーションスキルについて、本書は下記のように定義している。
- コミュニケーションスキル=意思疎通+関係構築
- コミュニケーションの効果=内容の質×伝達方法×回数
これだけではよく分からないが、著者はこの内容を噛み砕き、具体例をふまえつつ「鉄則」として一言でまとめている。一例を挙げよう。
- 鉄則7:結論から伝えよう!
- 鉄則8:最後にまとめを入れよう!
- 鉄則9:切り口を大切にしよう!
- 鉄則10:理由は3つありますとまずいおう!
- 鉄則11:具体例を示せ!
上記は、顧客とのやりとりなどで特に重要な「論理的に話す方法」における鉄則である。これらの「鉄則」が、「ネゴシエーションスキル」と「リーダーシップ」と合わせると、全部で108つ紹介されている。
ネゴシエーションスキル
- 鉄則48:ネゴシエーションでも相手の立場に立とう!
- 鉄則49:感情的になりそうになったら6秒待て!
- 鉄則50:相手の得と共に相手の損も説け!
リーダーシップ
- 鉄則85:否定質問よりも肯定質問を!
- 鉄則86:過去質問よりも未来質問を!
- 鉄則87:沈黙を効果的に使おう!
■強みを伸ばすか、弱みを克服するか? キャリアアップの考え方
キャリアアップのためには、弱みを克服すべきだろうか、それとも強みを強化すべきだろうか?
著者は「強みを強化すべき」と主張する。理由は3つある。まず、強みを伸ばすことは苦にならないため。次に、強み・弱みは若いころにあらかた決まってしまっているため。そして、弱みも強みであるためだ。
「弱みを克服する」という発想は、学生時代のテスト対策の発想であると著者は指摘する。得意科目にどれだけ時間を費やしても、テストでは満点以上の点数が取れないため、必然的に弱点を克服するという発想になる。だが、キャリアアップはそうではない。スキルの向上に「満点」のような天井はない。であれば、強みは伸ばせるだけ伸ばすべきなのだ。
タイトルには「29歳のSE」とあるが、ターゲットはそれだけにとどまらない。20代でも30代でも読めるし、PMでも人事育成担当者でも活用できるように書かれている。