プログラマ、テスター、SE、PMなど、いろいろやってるオヤジです。

我がエンジニアライフに悔いなし? -第5話(前編)

»

第5話 前編 すばらしき戦友たち?

 目がかすんできた。声も出ないし体も動かない。これじゃあ植物人間のようなものだ。入院して6ヶ月。闘病生活のこの半年は長かったよ、手塚さん。でもエンジニア一筋で生きてきた84年のわしの人生も、ついに終わりが来るようじゃの。

 

■夢を追いかけて

 「二屋さん、こんにちは」

 誰かお見舞いに来たようじゃ。この声は、阿久得さんか。阿久得さんには世話になった。50代のころ、わしは独立して会社を起こした。「翻訳コンニャク」を作るために。ドラえもんに出てくる翻訳コンニャク、あれがわしの夢じゃった。食べられる訳ではないが、同時通訳で英語と日本語を翻訳する装置。ただそれだけではない。装置を着けていることを相手に気づかれない。実際にしゃべっているように見えて英語ペラペラだと思われる。ガジェット活用による英語学習法の中津山恒さんも驚いて腰を抜かすような装置だ。

 そんなものはできるわけない、とみんな相手にしてくれなかった。そんな中で、若い阿久得さんだけは話を聞いてくれて資金を援助してくれた。実用化は難しく、最終目的とするところには至らなかった。翻訳エンジンを売ってなんとか会社は潰れずにすんだ。完成させることはできなかったけど、夢に挑戦できたことには満足している。それも阿久得さんのおかげじゃ。

 「あれ、二屋さんもう意識がないのか。残念だ。この人と出会ったのは30年前。会社を作りたいって言うから話を聞いてみたら、『翻訳コンニャク』などと夢のようなことを言う。しかもコボルで作るって。これだっ、て思ったね」

 そう、君はわしの夢を信じてくれたんじゃ。

 「そんなバカげた夢を見ているなんてかっこうのカモだ。チャンスだ。いい家を持っていたから、担保にして金を貸せば豪邸を取り上げられるだろうって。ところが会社は潰れなかった。とんだ誤算だったよ」

 なにぃー! こいつ、そんなことを考えておったのか。

 「今日は墓地を売りつけようと思ったのに。来るのが遅かったか。あばよ、爺さん」

 

■トラブルを乗り越えて

 「二屋さん、お久しぶりです」

 お、その声は、わしがアイスティー・メディアで技術部長をやっていたころに新人だった労英君だな。

 「二屋さん、もうこんな状態になってしまったんですね。私はずっと二屋さんに話したいことがあったんですよ」

 あのころ、顧客データの流出事件があって労英君たちと謝って回ったりして大変だった。あの事件さえなければ、その後わしが社長になっていただろうに。でも今思えばその後のいい薬になったよ。

 セキュリティの事件で思い出したが、セキュリティエンジニアかも?の話の続きはどうなったんじゃろうか。更新されていないのう。

 「あの顧客データ流出事件では、二屋さんは大変でしたよね。いつか言わなくてはと思っていたのですが、もう時効だから言いますが、あのデータは実は私が社外に売り飛ばしました。すいませんでしたー!」

 なにぃー! おまえか、犯人はっ(怒)!

 

■海を渡って

 「演次、生きとるかー?」

 その声は、アイスティー・メディアの同期だった親友の宇和木だな。

 「入社してから演次がインドに転勤になるまではよく飲みに行ってたよなあ。あれからもう50年も経ったよ」

 そうそう、あの頃わしはまだ結婚して半年くらいじゃった。単身赴任してインド支社の立ち上げに参画した。海外で支社を立ち上げるのは大変じゃった。日本の常識は通用しないし言葉も通じない。でも言葉が通じなくてもエンジニアとしていいものを作りたい、という気持ちを伝えることでだんだんと起動に乗せていった。あの経験はエンジニアとして貴重なものじゃった。単身赴任したせいで妻の浮子とは離婚することになってしまったが。

 「もう50年も前のことだから白状するけど、演次がインドに行ったあと、俺は実は浮子と付き合ってたんだよねえ。まあ、インドに行く前から、演次は仕事仕事で浮子とはすれ違いの生活になってたから、俺がいなくても、お前がインドに行かなくても、どっちにしろ離婚してたんじゃないの」

 なにぃー! 浮子と付き合ってたのか! 親友だと思ってたのに、許せんっ!

 

■すばらしき戦友たち(?)

 はぁ~。わしにはろくな友人がいなかったなあ。悪徳高利貸しに、情報泥棒に、不倫男か。でも、わしにはエンジニアとして誇れる仕事があった。海外で経験を積んで、技術部長にまでのしあがって、トラブルも体験して強くなった。そして夢を追って起業した。エンジニアとしては立派なもんじゃろう。これだけやったんだから。我がエンジニアライフに悔いなし!

 (後編に続く)

 

■あとがき

 この話はフィクションです。実在する人間とは関係ありません。

 いかがでしたでしょうか。次回でいよいよ最終回となります。さて、演次二屋さんは幸せに成仏できるのでしょうか?

 執筆裏話(3)

 

Comment(2)

コメント

仲澤@失業者

もしも幕末の志士がプログラマーだったら(笑)。

板垣死すともLinuxは死せず。(板垣退助)
男なら死ぬときは、例えコンパイル(エラー)中でも前のめりに死にたい(坂本龍馬)
三千世界のサーバーを落とし主と朝寝がしてみたい。(高杉晋作)
天はアプリの上に人を作らず。アプリの下に人を作らず。
  ・・・人は人の上で人を作り人の下で以下同文(福沢諭吉)

abekkan

> 仲澤さん

コメントありがとうございます。

ゲイツ死すとも Windows は死せず
というくらい落ちないOSだったら嬉しいんですけどねえ。。。

もしもシリーズのお話を作ってみるのも面白いかな、と思ってます(^^)

コメントを投稿する