エンジニアの言い分 -第2話

ワークスタイル

» 2015/01/20

■実戦派の言い分

　「そうそう、駅ビルの2階。緑の看板のロックウォールって店。飲みながら待ってるよ」

　白鹿さんと剣菱は今会社を出たって。これで同期がみんな集まるな。あっ、正宗がいないか。いつも来ないけど。一応誘ったんだけどね。もう誘わないよ。

　正宗は同期と飲むより、家でロボットと喋っている方が好きなんだから。あいつはコーディングと資格試験が趣味だからなあ。

　資格を取るのもいいけど、机上の知識だけ身につけたってしょうがない。資格試験って技術的な知識以上に回答のノウハウが合否を左右する。まともに考えてたら時間が足りないから、問題のパターンを覚え込む。それにそんなふうに暗記したことは試験が終わるとすっかり忘れてしまう。それでは意味がない。

　仕事に必要な技術は仕事中に身につける。それが一番だ。仕事で苦労して覚えたことは忘れない。自分の担当の仕事だけじゃなくて周りの人の仕事にも気を配っていれば学べることはたくさんある。

　仕事中に集中して学ぶ。そして終わったらパーっと飲んで明日へのエネルギーを充填する。これができるエンジニアのあるべき姿だろ。なあ、美童。

　あ、次は何飲む？　黄桜さんは？　うん、わかった。

「すいませ～ん。焼酎ロック3つくださ～い。山猿と、山ねこと、山せみ。三兄弟セットで！」

　でも、情報処理試験の1つくらいは受かっておかないとカッコつかないかなあ……

 

■勉強家の言い分

　ふう、やっと解き終わった。でもエンベデッド試験の問題はわりとおもしろい。この問題の自動走行車は、うちのレゴ・マインドストームでも作れそうだ。メインコントローラーにレゴブロックで車と赤外線センサーをつけて、あとはプログラミングすれば。やってみようっと。

　レゴ・マインドストームってよくできてるよなあ。プログラミングの勉強もただPCだけでやるよりも、こうやってロボットを動かしてみる方が楽しい。そういえばエンジニアライフにもレゴ・マインドストーム関連のコラムがあったっけ。

　ところで情報処理技術者試験っていくつか取ったけど、ITエンジニアに必要なことが網羅されてるからいいと思う。1つの仕事では特定の偏ったことしか身につかない。いろいろな仕事を好きに選べるわけではない。だから仕事で未体験のことは机上だけでも知っておかないと。

　資格を取って知識だけつけてもすぐに使えるわけではない。その仕事の経験が伴わないと実戦で使えるようにはならない。それは分かっている。でも新しいことに取りかかるときは誰だって未経験だ。そんなときに浅くても広い知識を持っていれば役に立つはずだし。

　だいたい同期の松竹梅君なんて、IT業界の会社にいるのにTOPPERSも知らなかったんだから。OSといったら、WindowsかMacかLinuxだと思ってる。そのへんにある機械にはリアルタイムOSが使われているのに。目先の自分の部署の仕事しか見ていないと分からないんだろうな。

　そもそもエンジニアは技術が売り物だ。単純作業のアルバイトとは違う。日頃から勉強はしておくべき。イチローが毎晩素振りを欠かさないのと同じように。その積み重ねがエンジニアの技術となりプライドになる。

　そういえば、松竹梅君は同期と飲みに行くとか言ってたな。あいつらはいつもヒマだなあ。僕も今日はこれくらいにしてちょっと飲もうかな。たしか「神の河」が残ってたはず。

　あ、白鹿さんも飲み会に行ったのかな？

　……

　でも白鹿さんって綺麗だよなあ……

　今度誘われたら参加してみようかなあ。ヒマ人クラブの飲み会に。

 

■あとがき

　この話はフィクションです。実在する人物やマンガの登場人物とは関係ありません。

　前回に引き続き、単に酒を飲みながら愚痴るというのを書いてみました。第1話とのつながりは特にありません。登場人物のぼやきや批判は、実は過去や現在の私自身への反省でもあったりします。こんな感じでもう少し書いてみます。

　「エンジニアの言い分 -第3話」

　「エンジニアの言い分 -第1話」