いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

紙でできた巨塔(7)すでにそれが誤ちであるのに気づかないのか!?

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 そして月曜日の朝。まだ始業前というのに、オフィスは慌ただしかった。しかし、そこにはいつもと違った確信が満ちていた。曖昧さに曇ったプロジェクトの進行に一つ筋が通ったのだ。確信は共通認識となって会話を促した。今までは、それぞれの認識がバラバラだったため、相談しようにも話が通じなかった。そんなもどかしさを吹き飛ばし、オフィスには活気が満ちていた。

 この光景を目の当たりにした亀井部長は立ちすくんでいた。いったい何があったというのだと。プロジェクトのメンバーはほとんどが徹夜で作業をしていた。北斗野の作成したテンプレートで作りなおしたドキュメントが、亀井部長の机に積まれていた。

「一体、ドウシタトイフノダ・・・・。」

亀井部長はバグを踏んだプログラムのような顔で席についた。

 そして、業務開始のチャイムが鳴った。雑然と散らばっていたプロジェクトメンバーは整然と自分の席に戻った。そして、全員の視線は亀井部長に向いた。それでも亀井部長は表情一つ変えず目線をまっすぐ据えていた。

 北斗野が静かに立ち上がる。そして、亀井部長の机を指さした。

「亀井部長、ドキュメントが仕上がりました」

亀井部長はピクリと片眉をしかめてドキュメントを手に取った。・・・何という事だ。この整った書式は。どこかのWebページでもコピペしてきたといのか?今まで見てきたドキュメントと全てが違う。今まで作っていたドキュメントが、どこかの出版社で出版されたかのようだ。

「北斗野クン。コレハドウイウ事カネ?」

「普通にWordでドキュメントをまとめただけです。」

「何ヲシテイルンダネ、君ハ。ドキュメントヲ整エルダケ二、ドレダケの工数ヲ使ッテルンダネ!(゚Д゚ #)」

 一瞬、場が白けた。北斗野の隣に座っていた間宮が立ち上がり、亀井部長に指摘した。

「亀井部長、あなたは勘違いしています。そこにおいてあるドキュメントは、ほとんど北斗野クン一人で作っています。Wordでテンプレートの機能を使っただけです。この機能を使えば、これだけのドキュメントのレイアウトも彼一人で簡単に整える事ができます。」

「マタ、ヤヤコシイ機能ヲ使イオッテ・・・・」

チッ、チッ、チ。そう言わんばかりに間宮は指を三回振った。

「その機能、私が十分間で理解した機能ですよ。テンプレートさえできていれば、誰でも使いこなせます。これをヤヤコシイと言うなら、部長、あなたの能力は低いっ!」

 正論という一撃をくらい、亀井部長はたじろいだ。まぁいい。これだけの量のドキュメントだ。読んでいればいくらでもアラがあるはず・・・。なんだと!アラが見当たらないだと!!亀井部長は焦った。曖昧さに慣れ過ぎたためか、整ったドキュメントを見慣れていないせいか、どうアラを突けばいいか分からなくなっていた。

「亀井部長、そのドキュメントは私がレビューしました。 

フドウ課長が静かに言葉を発した。

「信じられないかもしれませんが、それがプロジェクトの真の仕様です。あなたの認識するものと大きく違うと思います。しかし、この内容をどこかで聞いた事がありませんか?」

 亀井部長は記憶をたどった。そう言えばどこかで聞いたような内容が・・・。そうだ、この前首を切ってやった派遣社員、椎戸(しいど)の言ってた内容だ。なぜだ。あの内容が公になったら持論が大きく崩される。責任を問われる上に大きく工数が増えて信用がガタ落ちだ。あいつを辞めさせて口封じをしたはずなのに・・・。なぜこの事を知っているんだ!

普段はおとなしい土岐さんが立ち上がった。

「これは北斗野が見つけた椎戸のダイニング・メッセージに書かれていた内容です。そして部長、あなたは大きな過ちを犯したっ!!」

次の瞬間、プロジェクトメンバーの声が綺麗にハモって、一斉に亀井部長を指さした。

「そう、あなたはプロジェクトの進行を理解していなかったのだ!!」

--続く--

Comment(3)

コメント

yomi

面白かったけど、なんか亀井部長バッシングになってきたなと思って
ちょっとテンションが下がりました。

でも、どうなるのかと言う期待はかわらないのですけどね

Anubis

>yomi さん
パクリネタの小説がきちんと分かるオチは用意してあります。

とりあえず、二ヶ月間の月曜朝の流れを繋げるのが目的なので、次回が最終回です。

saza

ダイニング・メッセージ
まぁ、よくあるタイポだよね

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