Time will tell
悪夢の続き-守秘義務
(このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。)
「あんまり自分を追い込まないほうがいいですよ。」
A課長はそう言った。私はそんなにひどい様子だったのだろうか。
「CSIRT室はいったん区切りをつけて、今日からは日常業務のかたわら、インシデント対応をすることになります。」
「報告会みたいなものはあるんですか?」
ほっとしながら私は尋ねた。
「私とB部長とで中間報告書はまとめます。調査は継続して、いずれ経営会議で報告することになります。」
なんだかA課長はすっかり達観しているみたいだった。達観というより諦観かもしれない。
「頭の中が疑問符だらけでおかしくなりそうです。」
「私もそうですよ。知れば知るほど、精神的にきつくなりますよ。」
「それでも知りたくて、気になって仕方ないんです。」
「すべてを知ることはできないと思いますよ。時間がたってから、あぁそういうことだったのかと、思うこともありますよ。」
「私は、知らないほうがいいんですか?」
「一日は24時間、人生は80年そこそこ、時間は有限です。その中で、無駄に自分を苦しめなくてもいいと思うだけですよ。」
「今のままでも苦しいです。」
「知ることで救われればいいのですが・・・」
「救われなくても教えてください。どうして、」
「どうして、という問いには、多分誰も答えられないと思いますよ。私が知っているのも、いつ、どこで、誰が、何をしたかという事実だけです。でも、その事実すら、今はまだ明かせません。」
私の言葉を遮るように、A課長にそう言われて、私は黙るしかなかった。
「少し気持ちを切り替えたほうがいいですよ。」
静かに穏やかにそう言われると、そうかもしれないという気がしてきた。
輝かない
仕事で輝こう、とは思わず、淡々と持ち場を守り、依頼に応える、そういう働き方がいいな、と思うようになりました。自分の成果をアピールしましょう、と言われるほど、そんなことはしたくないし、それをしなかった場合の結果を自分が受け入れることができればそれでいいやと思うようになりました。後ろ向きですが。
お読みいただき、ありがとうございました。