シンガポールでアジアのエンジニアと一緒にソフトウエア開発をして日々感じること、アジャイル開発、.NET、SaaS、 Cloud computing について書きます。

中年おっさんによる、シンガポールの大学院入学の第一印象

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■シンガポールの大学院に入学した

 シンガポールの大学は8月が新学期である。最初の2週間は静かだったが、今週は新入生を歓迎するイベントやサークルへの勧誘で騒がしかった。今週は“freshman welcome”の週で、キャンパス中机を並べて、サークルへの勧誘で非常ににぎやかだった。この期間は1週間だけなので、来週からは再び、静かなキャンパスに戻るだろう。

 ところで、少々不満なことがある。私も一応新入生なので、18歳の新入生と一緒に勧誘の机を見て回るのだが、どこも私に声をかけてくれない。多分私のことを近所のおっさんか何かと思っているのだろう。

■講義は大きく分けて2種類

 講義は(私が勝手に決めた分類方法だが)大きく分けて2種類ある。1つはバイオそのものを教えてくれるもの。メンデルから、ワトソンとクリックのDNAの分子構造の発見、遺伝子工学、そして最近の第2世代のDNAシーケンス法の話まで、バイオの基本からバイオテクノロジを教えてくれる。これにはグループで行う課題がついてきたりする。

 おそらく簡単な内容なのだろうが、中にはHIVのDNAシーケンスをGenBankから引っ張ってきて、なんか研究ポイことをやらせるような課題もある。今のところは、何をどうやれば良いのかさっぱり分からないが、講義が進むにつれて、分かってくるのだろう。

 こちらでは、半年間で1000ページぐらいの教科書を読むぐらいの勉強をする必要がありそうだ。大量の本を読むのは、今までのプログラム技術習得で何度もやっていることなので、なんとかなると思うのだが、次から次へと専門用語が出てきて、それを覚えていくのはきついしかし、Wikiで意味を理解して、英語の発音はGoogleのTranslateを使って確認しながら、勉強を進めることができる。インターネットの時代は、実に効率よく勉強できてよい。

 さて、もう1種類は、数学やコンピュータサイエンスの話で、アルゴリズムや統計学や確率論などを、医療への応用や生物学の研究への応用をからめて教えてくれる。ある意味、私の専門なので、こちらは授業だけで理解できるかもしれない。指定されている教科書もそれほど厚いものでもないし、内容も専門用語がそれほど多く出るものではないので、かなりのスピードで読める。これこそ、今まで私がコンピュータ技術習得してきた方法をそのまま使える。

■授業の様子

 バイオインフォマティックスのマスタクラスの人数は、25人ぐらい。それぞれの講義には、その25人の他に、学部学生や他の学科の大学院の学生も来るので、かなり大きい。一番大きな講義は、Introduction of Bioinformaticsという授業で、大教室で、教授はマイクを使って授業する。さらに授業を録画して、それを学生がアクセスできるインターネットのサイトにアップロードしてくれる。MITやバークレー、さらにインドのITT、ついでに最近は東大などが、授業を世界に向けて公開しているが、NTUもその流れに乗ろうとしているのだろうか? 今は講義を世界に向けて公開とまではいかないが、多分そのうち、やるのだろう。

 しかし、個人的には、今の教授のBioinformaticsの授業ではそれは無理だと思う。今の教授の授業を世界に向けて公開したら、『シンガポールに留学しても、何を言っているのか分ない講義しかないので、行く意味なし』と、世界の学生が勘違いしてしまうかもしれない。この講義が唯一、シンガポール英語の克服が必要な授業だからだ。しかし、英語圏に向かう世界の留学生のほとんどは中国人で、彼らにとっての今の教授の授業は、分かりやすいのかもしれない。

 それ以外の講義は、比較的小さな教室で、教授もマイクを使わず講義する。我々日本人は、小学校のころは授業で活発に発言していたが、どういうわけか中学生になると、授業で発言しなくなる。少なくとも、私の時代はそうだった(なぜそうなるのか、よく分からないが)。

 こちらの授業では、様子が全然違う。特にインド人(実はクラスメートの8割ぐらいを占める)が、授業中にどんどん発言する。ほとんどは、教授に問われて発言するわけだ。インドでは、『発言しないと×』みたいな教育を受けてきているのかもしれない。自分が分かっているということを、教授にひたすら自己主張する。難しいところになると、静かになるので、そのあたりがよく分かる。こんな環境で授業をできる教授は、結構楽なのではないだろうか。人前で話をしていて、人からの反応がない時ほど話しづらいものはないが、それがうるさいほどある環境、教授にとっては非常に楽なのなのでは、と思う。

■奨学金制度

 最後に、PH.Dを取得できる、スカラシップを授業の中で説明されたので、紹介しておく。年齢制限は基本的にはないが、30以下が推奨されると書いてあるので50歳に手が届く私は、たとえ条件がそろったとししても無理だと思うが……。

■ITエンジニアの皆さん、目指してみては?

 これを読んでいるITエンジニアの方、生物学などやったこともないので無理などと思っているかもしれないが、Bioinformaticsの世界は生物学とコンピュータ技術者そして数学の専門家が協力して進める学問である。ITのプロなら、まったくもってウェルカムなのだ。現に私は、大学院の入学を許可されてしまった。どうせなら、海外に留学してPhDを目指してみてはどうだろうか。

 PhDなら、アメリカの大学が一番良いのだが、私費では相当お金がかかる。スカラシップもかなり難しいだろう。しかし、シンガポールのスカラシップはアメリカに比べて敷居が低そうだ。私が今、受講しているBioinformaticsでトップの成績をとれば、推薦を受けることができて、最大4年間の授業料が無料、ついでに生活費も出るスカラシップを取得できるらしい。

 シンガポールの研究体制は米国には及ばないし、日本の京大などにも及ばないかもしれないが、研究者の世界共通語の英語で、そしてかなりのレベルの研究ができる。シンガポールでのPhD取得スカラシップは、挑戦する価値があるかも。ご存じの通り、シンガポール政府はバイオに力を入れており、最近こんな記事を見つけた。ガン遺伝子の研究者は、米国に帰国するかもしれないが、他にも多くの世界の一流の研究者がシンガポールの研究機関で研究しているものと思う。

 興味のあるかた、私にコンタクトしてください。教授に可能性について問い合わせるぐらいのことはできます。

Comment(3)

コメント

yoshi umezu

はじめまして。来月7月から一ヶ月間、シンガポールのチョア・チュー・カンに滞在しようと考えております。シンガポールの環境についてあらかじめお話を伺いたいのですが、もしよろしければメールアドレスの方にメッセージを頂ければ幸いです。

Yumi

はじめまして。
シンガポール国立大学の大学院に大変興味があり、メッセージおくらせていただきました。
もし、よろしければ直接メールでのやり取りができればうれしいです。
よろしくお願いいたします。

Natsumi

はじめまして。
高い水準の教育と低コストの学費に魅力をかんじ、去年から シンガポール大学に興味をもっていました。生の声を聞きたいのでよろしければ直接メールのやり取りをしていただけませんか。よろしくお願いします。

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