組み込み系システムに3年、オープン系システムに7年。徹夜がこたえるお年頃。独身貴族から平民へと降格したホリは、墓場へまっしぐらなのだろうか……。

ホーム&アウェー(1)~北京ダックを食べたことがありますか?

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 人は誰しも居心地の良い環境と、悪い環境がある。例えば「先週の飲み会はホームだったけど、今日の飲み会はアウェーな雰囲気だった」とか……。

 入籍して約4カ月。その間さまざまなイベントがあったが、家族が増えたと一番実感するのは正月ではないだろうか。

 慣れ親しんだ実家の正月であれば何も問題はない。しかし、今年からは“奥さんの実家に新年の挨拶へ行く”という大きなイベントがあったのだ。

 別に奥さんの実家と仲が悪いわけではない。どちらかと言えば気に入られていると思う。それでも自分の実家と奥さんの実家ではやはり違うのだ。多少なりとも緊張感を伴うのである。

 自分の実家がホームであるならば、奥さんの実家はアウェーなのだろう。

 日々の業務においてもホームとアウェーを感じることがある。慣れ親しんだチームといちからプロジェクトを進めていくのは、まさしくホームだ。個々のメンバーの得意分野や技術レベルを把握しているので、スムーズにプロジェクトを進めることができるのである。

 一方アウェーの場合はどうだろうか。どのような場面がアウェーかというのも難しいのだろう。僕の場合、過去に強烈なアウェー体験をしたことがあるのだ。

■アウェーの洗礼■

 あるプロジェクトに急遽参加することになった。そのプロジェクトは火を吹く直前であり、助っ人としてあるチームのリーダーをすることになった。何も分からず入った手前、チームメンバーに教えを請いながら進めていこうと思っていたのだが、その思惑は、あっけなく崩れ去ったのである。

 チームメンバーは日本語があまり得意ではない中国人PGが半数をしめていた。そして、それぞれが自分勝手に作業を進めていた。前のリーダーがそういう方針だったらしい。そんな中、突然舞い降りた新しいチームリーダーの言うことを素直に聞いてくれるはずがなかったのだ。

 上からはプレッシャーをかけられ、下とはうまくコミュニケーションがとれない。こんな状態では到底うまくいくはずがないのだ。半ばやけになりながら、アウェーの洗礼を受けていたのだった。

■起死回生の一言■

 つたない英語と理解しやすい日本語を駆使してなんとかコミュニケーションをとろうと努力したが手ごたえがない。仕様をどの程度理解しているのか、どこがわからないかもヒアリングできない。もう駄目かと思ったとき、奇跡は起こったのだ。

 「北京ダックを食べたことがありますか?」

 僕は何の脈略もなく、テレビで覚えたフレーズをそのまま中国語でしゃべったのだ。するとチームメンバーはニコリと笑いながら、「ある」と答えたのだ。僕の中ではただ自分が覚えた言葉が通じるか話してみたかっただけなのだが、そこから雰囲気ががらりと変わったのである。そう、アウェーからホームに変わったのである。

 なぜそこまで劇的に変わったのかは今でもよくわからない。中国語で話しかけたから打ち解けたなんてことはないと思うが、このことをきっかけとして雰囲気がよくなったのは確かだ。

 その日からチームメンバーがやけに協力的になり、一番日本語を理解できるPGが進んで通訳を買って出てくれたのだった。そのおかげもあり、チームの担当機能はとんとん拍子にうまくいったのである。何がアウェーをホームに変えるのかわからないのである。

■魔法の言葉は??■

 奥さんの実家にはすでに義理のお姉さん夫婦も来ていた。義理のお兄さんも僕と同じ立場なのだが、向こうはすでに3年先輩である。今年初めて経験する“奥さんの実家の正月”というのは、緊張感あふれるアウェーに変わりはないのである。

 つつがなく進む新年の挨拶。そして宴会。酒が入りリラックスしてきたころ、すでにアウェーという気分もなくなっていたのは確かかもしれない。

 知らず知らずのうちにプロジェクトをアウェーからホームに変えていたように、どうやら僕のある発言が“奥さんの実家”というアウェーをホームに変えていたようだ。

 それは僕にとってはまったく何でもないことだったのだが、奥さんの実家では大絶賛であった。

 それはどんな言葉なのだろうか? 気になるところで今回は終わりなのである。

 引っ張るつもりもなく、実際たいしたことではない。しかし、長くなったので次回に続くのである。

 続く

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