『カウンセリングのすべてがわかる』――目からウロコな「カウンセリング」基礎あれこれ
カウンセリングのすべてがわかる -カウンセラーが答える本当の心理学- 石村郁夫、羽鳥健司、浅野憲一 (著) 國分康孝、新井邦二郎 (監修) 技術評論社 2010年12月 ISBN-10: 4774144843 ISBN-13: 978-4774144849 1659円(税込) |
「カウンセリング」は、専門家のみが行うものである。
カウンセリングと心理療法は同じものである。
上記の文章に「Yes」と答えた人、または特に違和感を覚えなかった人は、本書の良い読者です。
「カウンセリング」「カウンセラー」という言葉は、今や誰もが知っています。しかし、カウンセリングの実態について知っている人は、それほど多くないのではないでしょうか。カウンセリングに対するイメージは人によってそれぞれですし、カウンセリングを受けたことがない人にとってはまるっきり未知の世界でしょう。
「そもそもカウンセリングって何?」
「カウンセラーになってみたいけど、具体的にどうやるの?」
「カウンセリングを受けてみたいけれど、どういう質問をされるのか不安で……」
「最近疲れ気味なので、カウンセリングの世界に興味がある」
本書は、カウンセリングに対するこれらの興味に、丁寧に答えてくれます。
■知っているようでいて知らない、カウンセリング基礎
カウンセリングとは何か?
この問いについて、本書は下記のように説明いしています。
- 教師や親や上司が仕事に生かすカウンセリング
- カウンセリングを本職とする人が行うカウンセリング
「教師や親や上司が仕事に生かすカウンセリング」、これは私たちの日常生活でよく見ることができます。元気がないメンバーに上司が声を掛けること、ミスが続くメンバーに面談を持ちかけること、面談で仕事上の悩みや不安を聞くこと、一緒に話し合って今後の方向性を決めること――これらは皆、立派なカウンセリングの一種です。
2つ目は、「カウンセリングを本職とする人が行うカウンセリング」です。これは文字どおり、専門家のもとへ相談に訪れることを指します。
■カウンセリングの本質は「問題のクリアを助ける」
本書ではまた、「心理療法」と「カウンセリング」の違いについても述べています。
- 心理療法:心の病を治す治療
- カウンセリング:人生において誰もが通過する問題を、クリアしていくのを助けること
「問題をクリアしていくのを助ける」――これがカウンセリングの本質です。ですから、カウンセリングには実にさまざまな形態・方法があります。企業や教育機関におけるカウンセリング、結婚やキャリア形成、育児など、トピックや目的別に整理すれば、その方法は膨大な数に上ります。
■基本の次は応用だ
私はカウンセラーになることに興味がありますが、漠然と「カウンセリングは専門家が行うもの」「心理療法とカウンセリングは同じもの」と思っていたので、本書の解説は目から鱗でした。
「問題をクリアしていくのを助ける」というカウンセリングの本質を理解すると、今度は「実際にはどのようなカウンセリングがあるのか」「どんな人がカウンセラーとなるのか」「どんな人がカウンセリングを受けるのか」といったさまざまな疑問が生じてきます。本書は、「そう! 私も知りたかった、それ!」と思わず言ってしまうような「よくある疑問」を網羅していて、非常に興味深いです。
「カウンセリングの実際」
- カウンセリングってなに?
- どんなことするの? など
「カウンセリングの方法」
- **法ってなに?(カウンセリングの各種手法の解説)
- カウンセリングってどう進めていくの? 料金は?
「カウンセリングにおける相談内容」
- どんな人がカウンセリングを受けるの?
- 女性、子どもなどさまざまな立場の人が相談する内容とは?
「さまざまな領域におけるカウンセリング」
- カウンセリングはどこで受けられるの?
- 精神科と心療内科で受けるカウンセリングは同じ?
「カウンセラーの実際」
- どんな人がカウンセラーに向いている?
- カウンセラーも悩むの?
- **カウンセラーって何をする人?(例:学校カウンセラー、産業カウンセラーなど各種カウンセラーについての解説)
- カウンセリングができれば人の心が読める?
「カウンセリングの今後の課題」
- 将来的に、どのようなことがカウンセリングに求められるか
本書はあくまで「概要を分かりやすく説明」しているので、各項目についてもっと深く知りたい場合は、本書を足掛かりにして専門書にチャレンジしてみるのもよいでしょう。また、カウンセリングにまつわるさまざまな疑問への回答を得られるため、カウンセリングを受けることをためらっていた人の背中を後押ししてくれると思います。
私は、カウンセリングを心理療法と同じように捉えていたため、カウンセリングが実はとても日常的で、身近なものであることに気付くことができました。家族や友人など身近で親しい人へのアドバイス、後輩への指導にも、本書を大いに生かせると思います。
(“アラサー”IT系女子の来し方行く末』コラムニスト 組長)