悩めるリーマンのための神経言語プログラミング――『夢をかなえるNLP』
夢をかなえるNLP 若本勝義(著) PHP研究所 2010年10月 ISBN-10: 4569773648 ISBN-13: 978-4569773643 1575円(税込) |
神経言語プログラミング(Neuro-Linguistic Programming:以下、NLP)というものをご存じでしょうか。「プログラミング」とありますが、IT業界におけるプログラミングとは意味が異なります。個人が持っている、情報の受け取り方や考え方のフィルタを「書き換える」という意味の「プログラミング」です。
NLPは、「3人の天才的セラピスト」、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のバージニア・サティア、催眠療法のミルトン・エリクソンが用いていた手法を研究・体系化したものです。1970年代のベトナム戦争によって、心に傷を負った人たちへの心理療法として効果を発揮したといわれています。心理療法ではあるものの、最近ではNLPやビジネスやスポーツなどの分野でも用いられています。
本書はNLPの入門書の1つですが、物語形式で書かれているため、実践的な面で非常に分かりやすいという点が特徴です。
■悩めるサラリーマンの物語
物語の主人公は、コンサルティング会社に勤務する宮本邦彦(35歳)。上司との確執で悩んでいました。
宮本は、ひょんなことから「カフェNLP(Natural Life&Play)」のマスター、リチャード田中に出会います。リチャードはカフェの店長でありながら、客の悩み相談(セッション)に乗って、問題解決へと導いています(彼の悩み相談の手法はNLPを用いていますが、物語中では「リチャード・マジック」と呼んでいます)。早速、宮本はリチャードのセッションを受けます。
■夢を阻んでいるものは何か?
まずリチャードは宮本に、「理想のゴール」を想像させます。そして、「そのゴールにたどり着いた場合、いまとどのような変化が起きているか」も想像させます。
ここまでは、一般的な自己啓発と同じかもしれません。しかし、この後でリチャードは宮本にこのように尋ねます。
「そうなることを止めているものは何ですか?」
そして宮本は、自身の深層心理に問い掛け、1つの答えにたどり着きます。それが何かは、本書で確認してください。
その後、宮本の奥さんや会社の同僚もリチャードのセッションを受け、それぞれの悩みを解決していきます。リチャード・マジックによって、全員がまるで運命が変わったかのように幸せになる、という物語です。
■「やりたくない」という否定的な信念の裏にあるもの
例えば、「ダイエットしたい」と思って行動に出ても、いつも失敗する場合。それは、「(そうまでして)痩せたくない」という信念(コア・ビリーフ)があるからかもしれません。では、どうして「痩せたくない」のでしょうか。ダイエットの食事制限がつらくて、「たくさん食べて満足したい」と感じているからかもしれません。「太っていることで安心できる(肉を身にまとっていることで心が傷つかずに済む)」と感じているからかもしれません。
「痩せたくない」という否定的なコア・ビリーフを支えている“肯定的な意図”(「たくさん食べて満足したい」「太っていることで安心できる」など)のことを「ポジティブ・インテンション」と呼びます。
では、ポジティブ・インテンションに気付いたら、それを変えればいいのでしょうか? そうではありません。NLPでは、ポジティブ・インテンションを尊重すべきだと説いています。つまり、「たくさん食べて満足したい」けど痩せたいのであれば、食べた分以上に運動すれば痩せられますし、「太っていることで安心できる」と思うのであれば、無理して「痩せよう」と思わなくてもいい、ということになります。ポジティブ・インテンションは無意識に感じていることであり、それに反した目標を意識的に立てると、無意識がブレーキをかけてきて悩んでしまうのです。
本書では、コア・ビリーフやポジティブ・インテンションの見つけ方について詳細に解説しています。また、本書の大半は「信念」をキーワードに「自己実現のためのNLP」について書かれていますが、後半ではNLPを用いて他者との円滑なコミュニケーションを取る方法についても触れています。
■キャリアプランを考える際にも有用
本書は、NLPに興味がある方の入門書として最適だと思います。また、悩みを持つ方にもお勧めです。本書を読み、自分と向き合うことで、何らかの答えが出るのではないでしょうか。
例えば、将来のキャリアプランを考えた際、バリバリ稼げるビジネスマンになりたいと思っていても、無意識下では長時間の残業や土日出勤、多忙になることに不安を感じているかもしれません。
仕事をするうえで、自分は何に価値観を置いているのか。それが見えれば、キャリアプランを立てるときに役立つのではないでしょうか。
本書を読んで自分なりに考えてみてもいいでしょうし、友人や家族に話を聞いてもらう、竹内義晴さんなどのNLPに精通したプロのコーチングを受ける、といった行動を通じて、自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
(『It’s Party Time!』コラムニスト あずK)