我がエンジニアライフに悔いなし? -第3話(後編)
第3話 後編 ワクワクするエンジニアライフとは
前編の続きです。
(故桜井桃子マネージャーの独白)
私のあとを引き継いだ菊地プロジェクトマネージャーはどうなったかしら。要領良くなったかなあ?
■社内の隠し合いはやめよう
「菊地君。君がバカ正直に報告するものだから、私がPMOの薔薇木さんに呼び出されてしまったよ」
「すいません、椿部長」
「でも、薔薇木さんと腹を割って話をしたら、うちの部署の状況も分かってもらえた。これからは実態に合った管理をしたいとも言ってくれた」
「よかった。うちの会社は形式だけの無駄な報告作業が多すぎますよね。忙しいときに全社会議があるからってそんな無駄な資料作り優先してメンバーにさせるとモチベーションも下がってしまいます。どうせ報告するなら有意義に使われるものにしたいですね」
菊地くん、やるじゃないの。言っても無駄かと思ってたけど言ってみるものね。
■メンバーを大切に
「すみれさん、がんばってるわね。体調はもう大丈夫?」
「松田さん、もう大丈夫です。いろいろ手伝っていただいてありがとうございました」
「いや、私よりも菊地マネージャーがいろいろ気を使ってすみれさんをサポートできるようにしてくれたのよ。あなたががんばってるとうちの若手の男どももがんばって働くからって」
「菊地マネージャーにはたいへんお世話になりました。これからはその分までがんばって恩返ししたいと思ってます」
あら、菊地くん株を上げているじゃないの。
「菊地マネージャーになってからプロジェクトに活気が出てきたわ。前任の桜井桃子マネージャーだったら人の気持ちなんて考えない人だったから、すみれさんはきっと見捨てられていたわ。あの人は冷たいのよ」
どうせ私は冷たいですよ。今では本当に血も涙もないし。
■ワクワクするエンジニアライフ?
「でも、桜井さんは敏腕美人マネージャーだったじゃないですか」
そうよ。梅宮さん分かってるじゃないの。
「違うわ。リスクから逃げるのがうまかっただけよ。危ない橋は渡らないの。少しでもリスクになりそうなことがあるとクライアントや下請けに責任を押し付けるの。特に下請けには評判は悪かったわ。
でもね、多少はリスクがある方がエンジニアはワクワクするものよ。リスクがない単純作業なんて面白くないもの。リスクがあるからこそ、充実したエンジニアライフが送れるの。あのおばさんはエンジニアの気持ちなんて分かってなかったのよ。部下からの評判も最悪だったわ。
それに若くないのにやたらと流行語を使うのも痛々しかった。あれならあべっかんのおやじギャグのほうがまだマシだわ」
ミシッ!
「きゃっ!」
「なに? ラップ現象? 桜井桃子マネージャーのたたり? まさか、ね」
松田百合子め、言ってくれるじゃないの(怒)。
■敏腕美人マネージャー?
でも的を射てるかもしれないわ。私がやっていたことは、社内で自分のプロジェクトの無難に見せていただけ。アイスティーメディアのような大きな会社に長くいると中間管理職はそうなっちゃうのよ。メンバーの士気のことまで考える余裕がなかったわ。リスクがある仕事の方がワクワクする? そんなものなのかしらねえ。そこまで考えつかなかった私は、敏腕美人マネージャーじゃなくって、ただの美人マネージャーだったってことかしら。
なんか虚しくなってきた。だから後編なんて書いて欲しくなかったのよ。あべっかんめ!
あ、川が見えてきた。これが三途の川ね。あら、なんか太ったのが川を泳いでいる。豚かしら? こっちの岸の河原には見覚えのある男の子がいる。あれはたしか、ブラックシステムから派遣で来てた子だわ。名前はなんだったかしら?
■あとがき
この話はフィクションです。実在する美人マネージャーなどとは関係ありません。
あなたは、リスクがある仕事の方がワクワクしますか?