働いている世のエンジニアの手助けになることを願う独り言

コードが書けるだけじゃ、もう生きていけない?

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〜ベテランエンジニアが『営業新人』として泥臭くPDCAを回し始めた理由〜

「黒い画面(ターミナル)に向かって黙々とコマンドを打ち込んでいれば、誰にも邪魔されずに価値を生み出せる――」
20年前、僕がIT業界に飛び込んだときは本気でそう思っていました。
しかし、20年という月日が流れた今、僕はPCの前ではなく、緊張で脇汗をかきながら顧客の会議室でプレゼン資料を開いています。
結論から言いましょう。ベテランエンジニアになればなるほど、開発スキルだけでは絶対に頭打ちになります。

■ ターミナルから出たエンジニアを待っていた「限界」の壁

エンジニア歴も20年を超えると、大抵のバグやトラブルには動じなくなります。「あ、このエラーね。昔も見たやつだ」とか、「このフレームワークのバグ、本家のGitHub Issueに上がってるやつだな」といった具合に、技術的な問題解決の引き出しは嫌になるほど増えていきます。

かつての僕は思っていました。「技術力さえ磨き続ければ、一生食いっぱぐれることはない」「良いプロダクトを作れば、勝手に売れるはずだ」と。

しかし、キャリアを重ねるにつれ、うっすらと感じていた違和感が巨大な壁となって立ちはだかるようになりました。

「どれだけ綺麗なコードを書いても、案件の単価が上がらない」
「どれだけ爆速で機能を実装しても、クライアントが思ったほど嬉しそうじゃない」

技術力の向上に伴う成長曲線は、ある一定のラインを超えると急激に鈍化します。いわゆる「限界効用低減の法則」です。最高スペックのアーキテクチャを組むことよりも、現場で求められているのは「そもそも何を作るべきか」「どうやってビジネスの課題を解決するか」という、技術の"手前"や"外側"にある問題だったのです。

■ ベテランエンジニアに求められる「非開発スキル」の現実

コードを書くだけでは生き残れないと悟った僕が、ここ数年で必死に身につけざるを得なかったスキルは、主に以下の4つでした。

1. 部下のマネジメント
「自分が書いた方が早い」をぐっと堪え、若手エンジニアのモチベーションを高めながらチームで成果を出す技術。コードのバグより人間の感情のバグの方が100倍デバッグが難しいと感じます。

2. 圧倒的な説明能力
非エンジニアの役員やクライアントに対し、専門用語を一切使わずにシステムの価値やリスクを納得させるトランスレーション(翻訳)能力。

3. セキュリティ対策
コードの美しさ以前に、たった1つの脆弱性が企業の命運を分ける時代。技術面だけでなくコンプライアンスや組織設計まで含めた防壁の構築が必要です。

4. 営業能力(最難関)
自社の技術やソリューションの価値を正しく伝え、案件を獲得し、適切な予算とスケジュールを握ってくる力。

マネジメントや説明能力、セキュリティは、ベテランになれば自然と背負わされる役割です。特に説明能力なんて、若手の頃は「なんでこの凄さが分からないんだよ」と心の中で悪態をついていた自分が恥ずかしくなります。分からないのは相手のせいではなく、自分の説明が下手くそだったからなんですよね。

しかし、これらの中でも僕が最近、最も大きな壁を感じ、そして激しく心を揺さぶられているのが「営業能力」です。

■ 営業現場での討ち死にと、手痛い失敗の数々

「営業なんて、要するに自社の製品を調子よくアピールする仕事でしょ?」
もし昔の僕と同じように思っているエンジニアがいたら、今すぐその思考をガベージコレクションしてください。

ここ数年、事業拡大や新規案件の受注のため、僕自身が営業のフロントに立って顧客のもとへ足を運ぶ機会が増えました。そして、見事に失敗のバーゲンセールを起こしました。

【失敗談】「技術スペックスゴイデス」の弾丸トークで撃沈
最初の頃の僕は、提案の場で自社システムがいかに最新の技術スタックを使っているか、どれほどマイクロサービス化されていて拡張性があるかを、目を輝かせて語り散らかしていました。
プレゼンが終わり、「どうだ!凄いだろ!」と達成感に浸る僕に対して、相手のCFO(最高財務責任者)が一言。

「で、それで我が社の売上はいくら上がって、投資の回収期間は何ヶ月なんですか?」

......沈黙。相手が欲しかったのは「技術の凄さ」ではなく、「投資対効果(ROI)」だったのです。技術の話しかできないエンジニアの営業ほど、顧客にとって退屈な時間はありません。

何度もチャレンジしては失注し、打ち合わせの帰りに1人で「俺は何をやっているんだろう......」と落ち込む日々が続きました。

■ ふと気づいた。「これ、新人時代の開発PDCAと同じじゃないか?」

営業現場で討ち死にを繰り返していたある日、ふと強いデジャヴ(既視感)に襲われました。
「あれ? この『何をやっても上手くいかなくて、原因を探り、修正して再デプロイする』感じ......20年前にプログラミングを始めたばかりの時と全く同じじゃないか?」

【新人開発者のPDCA】
・Plan: 仕様書通りにコードを書くプランを立てる
・Do: 実装してみる(コンパイルエラー連発)
・Check: エラーログを読み、どこで落ちたか分析する
・Action: 構文やロジックを修正して再実行する

【営業新人のPDCA】
・Plan: 顧客の業界課題を仮説立てし、提案ストーリーを作る
・Do: プレゼン・ヒアリングを行う(反応が薄い)
・Check: 「なぜ刺さらなかったか?」商談メモから仮説検証する
・Action: 訴求軸を「技術論」から「コスト削減」に変えて再アプローチする

相手が「コンパイラ(PC)」なのか「人間(顧客)」かの違いであって、本質的なプロセスは全く変わらなかったのです。

PCは間違ったコードを打ち込めば明確なエラーメッセージを出してくれますが、人間は無言で「検討します(=不採用)」という冷酷なステータスコードを返してきます。人間のほうが例外処理がはるかに複雑で不確実ですが、「仮説を立て、試行し、失敗から学び、改善する」というPDCAサイクルそのものは、エンジニアが最も得意としてきた領域のはずなのです。

そう思えた瞬間、暗闇の中で霧が晴れていく感覚がありました。
「なんだ、俺は営業という新しい『未知の言語』をデバッグしているだけじゃないか」と。

■ 「ベテランエンジニア × プロの営業人」というハイブリッドモンスターを目指して

営業のPDCAを回し始めてから、少しずつですが成果が出始めています。
顧客の「ここが不便なんだよね」という何気ない一言から、頭の中でリアルタイムにデータベース設計とAPI構造を組み立て、「それなら、こういうシステムを組めば従来の半分のコストで解決できますよ」とその場で解像度の高い提案ができるようになりました。

これこそが、世の中の営業専門職には真似できない、技術を知り尽くしたベテランエンジニアだからこそ発揮できる営業力だと確信しています。

口達者なだけの営業は、時に現場のエンジニアに無理なスケジュールを押し付けたり、実現不可能な機能を約束して炎上させたりします。一方で、技術しか分からないエンジニアは、顧客の本当の痛みに寄り添えず、自己満足のシステムを作ってしまいます。

もし、エンジニア歴20年以上の泥臭い技術的バックボーンを持ちながら、顧客の経営課題をヒアリングし、自ら案件を勝ち取れる「プロの営業力」を兼ね備えた人材がいたらどうでしょうか?
それって、IT業界において市場価値がカンストした「最強のハイブリッドモンスター」になれると思いませんか?

■ 開発をやりつつ、営業の「新人」を楽しもう

ベテランになると、社内でも「教える側」「敬われる側」になりがちです。怒られることも、恥をかくことも減っていきます。だけど、それって実はすごくつまらないし、成長が止まっている証拠でもあるんですよね。

僕は現在、顧客の前で営業の「新人」として失敗し、汗をかきながらPDCAを回しています。そして同時進行で最新の技術トレンドを追いかけたり、自らコードを書いて手を動かしています。

「ベテランになると開発だけでは頭打ちになる」――これは絶望の言葉ではなく、「エンジニアとしての次のステージ(新しい冒険)が始まる合図」なのです。

キーボードを叩くだけの毎日に少し物足りなさを感じているベテランエンジニアの皆さん。
たまにはモニターの裏側から飛び出して、対人の世界でPDCAを回してみませんか?
失敗して、試行錯誤して、改善する。あのプログラミングを始めたばかりのワクワク感が、きっとそこには待っていますよ!

 

どこかで、エンジニアの価値を少しでもベースアップする手助けが出来てれば幸いです。

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