@ITドラマ「残業課長 和久原アトム」第8話:残業課長はトーフとニシンを食う
@ITドラマ 「残業課長 和久原アトム」
[第8話]残業課長はトーフとニシンを食う
オレは、和久原アトム。小さなシステム会社で課長をしている。
人はオレのことをこう呼ぶ。
「残業課長、和久原」
新人の「がっきい」こと酒田ノリコと、その教育担当の朝田が休みなのに、トラブルが発生だ!
「わ、和久原課長、たたた、大変です!!」
血相変えて、安須がやってきた。
「おまえが慌てるなんて、相当やばい状態なのは分かった」
「これはかなり大変なことになるかもしれません……」
「大丈夫だ! オレにまかせろ!!」
「ほ、本当に大丈夫でしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ! それより、にっしーとひでみ、あと、さとっちも呼んでくれ! 和久原が助けてほしいっていやーきっとあいつらは来る」
「は、はい」
結局、昼から夜までずっと対応してなんとかなった。
「お疲れさん! よし、みんなでメシ……あ、今日はいいや。ちょっとオレ、用事あるから、ここで解散!」
「お疲れのようだね?」
ここのマスター、バー「デスマーチX」のマスターは、元エンジニアだけあって察しがいい。
「昼食えなかったからなぁ。何にするかなぁ……」
「トウフとニシン、でしょ?」
不意にオレの隣の席に誰かが座ってそういった。
「あ、モリメグ!」
「お疲れさま」
「それと……、マスター、あたしはいつものー! ワッキーもいつものー! ね?」
「あんたも久しぶりだねぇ。あいよ、いま作るよ」
最悪だ……。今日ぐらいゆっくり1人で疲れを癒したかったのに。
「ねえ」
「なんだよ」
「あのトラブルを半日で片付けるなんて、さっすがよね」
「まあな。そっちはなんとかしたのか?」
「あたしを誰だと思ってるの?」
なんだ、結局、両方ともなんとかなったのか。
「ねえ、あのセリフ、今日使ったんでしょ?」
「しらねーよ」
その瞬間、モリメグのデコピンがオレの頭に炸裂した。
「あはは、安須くん、言ってたよ。課長はとにかくすごかったってさ」
「別に、オレはなにもやってねえよ」
「そういえば、あんときも、あんたはいってたよね。
『大丈夫だ!オレにまかせろ!!』
って」
「……」
「ねえ、どうしてあの時、あんなことになっちゃったんだろう。」
「知るか!」
そこに、マスターが申しわけなさそうに、入ってきた。
「はい、おまちどうさん」
10年前と同じドリンクが2人の前に出てきた。
「よーし、じゃあモリメグとワッキーのコンビ再結成を……」
「かちょー!」
今日の主役達に加えて、酒田と朝田も入ってきた。
「あー、もうちょっと時間ずらして来るように言っておくんだったぁ-!」
朝田と酒田の2人には言いたいことが山ほどあるが、とりあえず今日は「がっきい」ってなんだか聞いておくか。
※このドラマは、作者の体験を元にしたフィクションです。