ITエンジニアの視点から見た、IT研修インストラクターという仕事(1)
このたび、エンジニアライフコラムニストを拝命しました中越です。ITエンジニアからみたIT研修インストラクターという仕事について、自分の経験を踏まえて書いていきたいと思っております。初回ということもありますので、まずはわたしの経歴から紹介させてください。
わたしの講師経験の原点は、学生時代の塾講師アルバイトです。実はこの時代は講師に立つのはとにかく辛かったという経験ばかりでした。親に言われていやいや来ているような(もちろん、そうでない子もそれなりにはいましたが)小中学生を相手に授業を成立させるというのは、わたしにとってはとにかく大変なことでした。正直に申し上げますとわたしは学習塾の講師としては落ちこぼれの部類で、生徒からの評判もひどいものでした(その塾では生徒に講師についてのアンケートをとって集計していた)。優秀な講師の方はそんな生徒相手でも彼らの興味・感心を引きつけてやる気を引き出し、うまく授業を運営していて、すごいなあとただ感心するばかりで、落ちこぼれ講師のわたしなどは、何度辞めようと思ったか分かりません。が、それでもなんとか4年間はそのアルバイトを続けました。
そんなわたしですので、もちろん社会人になっても講師などするつもりはさらさらなく、システム開発が中心のITベンチャーに就職しました。希望通り、最初の1カ月ほどは、開発業務に従事することができたのですが、5月になって、いきなり転機が訪れることになりました。
とある製品の研修講師の業務に参画することになったのです。今にして思えば、まさにベンチャーイズムだなあと思うのですが、テキストを渡され、数日は多少なりとも予習をし、一度、他の講師の研修に一通り受講者として参加したところで「じゃあ、来週から講師やってもらうから」というような調子でした。ほとんど、ぶっつけ本番に近いような感じで、わたしのIT研修インストラクターとしてのキャリアは始まったのです。
わたしには塾講師アルバイトの経験こそありましたが、上に書いたとおりの落ちこぼれ講師でしたし、習いに来る人=いやいや来る人=やる気がなく講師の言うことを聞かない人、というような固定観念がありましたから、とてもまともにできる自信はありませんでした。
しかしわたしの事前の予想はまったく見当外れだったのです。
IT研修に来る受講者は、ほとんどの方が講師の説明を真剣に聞き、メモを取る人も珍しくなく、講師が指示した内容をきちんとそのまま行ってくれるのです。帰り際には、ありがとうございました、と言ってくださる方もいます。また、規定の演習が終わらなければ居残りをする方もいるではないですか。
いや、それくらい当たり前だろう、とほとんどの方は思われると思うのですが、それまで小中学生しか相手にしたことのなかった当時のわたしにとってそれは驚きでした。「なんてやりやすいんだろう、やりがいがあるんだろう」というのが、わたしのIT研修インストラクターを始めたときの素直な気持ちでした。
それからは開発案件半分、インストラクター半分というような時期がしばらく続きました。ときには開発案件にどっぷりという期間も何年かあったりもしましたが、入社してから数年後にはついに研修業務の専任となっていました。3年前に独立して今の会社になってからも、業務の中心は研修関連でやっています。
といった経歴ですので、ITエンジニアと一緒に仕事をしたことも多くありますし、ITエンジニアの目線もそれなりに持ち合わせているつもりです。そんなわけで、次回からはいよいよ本題である「ITエンジニアから見たIT研修インストラクターという仕事」についてふれていきたいと思います。