業務知識ゼロ、研究開発支援を主業務とする技術屋の述懐

わたしが趣味で培った4つの力

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 わたしはバイク好き1でしたが、学生時代に見た深夜番組 U・S の影響でジムカーナというモータースポーツに興味を持ちました。就職のために上京してから、アプリリア RS250が欲しくてお金を貯めていたのですが、駐輪場が確保できずに断念しました。その代わりにトヨタ MR2 G-Limitedを購入し、ずっと気になっていたジムカーナを始めました。

 わたしはうまいドライバーではありませんでしたし、MR2も(過給器なしでは)戦闘力のある車両ではないので、主にクローズドクラスのイベントに参加していました2。最近は車も乗り換えて、練習会すらご無沙汰な状態ですが、ジムカーナからいろいろなことを学びました。仕事をしているときに、以下の4つの力が培われたと実感しています。

#1 選択力

 練習会や競技会のエントリーフィー、燃料代、車両のメンテナンス代に消耗品代……とにかくお金が必要でした。うまいドライバーはメーカーやチューニングショップのスカラシップやスポンサー費用を足しにできるのですが、下手なわたしがそのような費用が得られるはずもなく、基本的に趣味の範ちゅうで活動していました。

 そのため、限りある予算(= 給料)を効果的に配分しなければなりません。自分の技量、車両の状態から、『いつ、何に注力するのか』優先順位を考えながら活動していました。車好きな人なら、エアロパーツや車高調サスペンション、大口径マフラーとかを付けたくなるところですが、グッと我慢して運転技術の向上を目指しました。

 このような経験のおかげで、作業の優先順位の決定や必須要件の見極めができるようになり、ずっと視野が広くなった気がします。

#2 想像力

 練習走行中、車両の中で必死に運転していますので、ハンドルやペダル操作や体感したGなどの主観的な情報は得られるのですが、客観的に車両がどのような挙動しているのか知ることができません。そこで、多くのドライバーはビデオカメラで仲間に自身の走行を撮影してもらって、ドライビングの分析を行っています3

 わたしは予算上、ビデオカメラを持っていませんでしたので、同じ駆動形式の車両の挙動を観察しながら、自分が走行しているときの挙動を想像したり、ビデオが入手可能な場合4は、自分が走行している部分を何度も見直して、走行時の操作(の記憶)と車両の挙動を結合してドライビングの分析を行っていました。

 これは、想像力を鍛えるいいトレーニングになった気がします。顧客から要求を聞いただけで、実装するシステムをイメージできることが多くなりました。

#3 競争力

 実は、ジムカーナをしていて「楽しい」と思ったことはほとんどありません。競技会で初優勝したときは楽しかったですが、走れば走るたびに課題が増えていきます。しかも、同じ駆動形式の車両に乗るドライバーがいとも簡単にやってのけてしまうと、悔しいやら情けないやら……。こうしてジムカーナにのめり込むようになりました。

 仕事をしていて、「これ、君にはできないだろうから、ほかの人に任せた」と言われると悔しくて仕方ありません。「見返してやろう」と思って日々の作業をこなした結果、同じ派遣先に10年以上も居座ることになってしまいました。

#4 行動力

 わたしのまわりにモータースポーツをしている人がいませんでした。ジムカーナを始めるために何をすればいいのか、アドバイスがもらえる環境がありませんでしたので、モータースポーツ誌のクラブ員募集に応募して、JAF登録クラブに入会しました。

 また、わたしの車両だけ駆動方式がMR(ほぼRR)だったせいもあって、クラブ内に師匠がいませんでしたので、練習会などでうまいドライバーにお願いしてアドバイスしてもらったり、同乗走行してもらいました。とにかく、自分で行動を起こさないと何も進展しない状況でした。

 このような経験から、進展しない状況においても他人より先に自分のできることを探して行動に移していることが多いように思います。きっと、派遣先の正社員には「でしゃばりすぎ」と思われているでしょう。けれど、空気を読んで停滞を甘受する気はありません。

おわりに……

 わたしは、仕事かそうでないかにかかわらず「経験したことに無駄なことはない」と思っています。何かしらの糧になっているはずです。わたしの場合はジムカーナというマイナーな趣味でしたが、真剣に取り組んで得られた経験は、何らかの形で仕事に良い効果をもたらしてくれるでしょう。「草食系」なんて決め付けずに、真剣に趣味に興じてみてはどうでしょうか。

 最近はジムカーナをしていませんが、全日本選手権に出場していたドライバーに混じって所属クラブ内イベントのカート大会に出場しています。いまはまだ圧倒的な実力差を見せつけられている状態ですが、あと2秒削って対等に勝負できるようになりたいと思っています。

1 親父と漫画「バリバリ伝説」の影響をもろに受けていました。
2 よく参加していた筑波サーキットビギナーズ・ジムカーナシリーズが今シーズンをもって休止することになったようです。残念です。
3 思いのほかIT業界の人が多く、動画比較ツールや光電管を使った計時システムを自作されるドライバーもいらっしゃいます。
4 練習会では、たまに走行風景をビデオ撮影してくれる主催者がいます。有料ですけどダビングしてくれたりします。

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