長時間労働依存症と、覚悟をしない人たち(シリーズのその9)
なんだか筆が進むにまかせて、IT業界は斜陽産業だとかIT技術者の仕事はなくなっていくとかIT技術者の悲しい性とか...(苦笑)
そういうことを書き進めたかったわけではなかったのに...(涙
今回は、それ以前に書いていたこと/書きたかったことをあらためて整理してみます。
◆仕事から離れる、の話
自分が取り組んでいる仕事の生産性を極大化するために、仕事からどんどん離れるべきである、と、何回か前に書きました。
うま~く仕事から離れれば(最終的に)生産性が上がるのは間違いないのですが、気をつけなければいけないのは目的(「生産性を極大化する」)がブレてはいけないということです。
目的がブレてしまうと、仕事から離れるイコールただのサボりということになってしまいますし、周りからもそう見えてしまうので、評価が下がります。
もっとはっきりいってしまうと、敵が増えます。
敵が増えると自分がどんだけパワーアップしたところで、チームや組織で仕事する際の全体の生産性を下げる原因になりかねないので、注意が必要です。
◆
仕事から離れる、とはいろいろあるのですがまずはマインドですね。
つまり、自分の仕事を常に俯瞰してみれる状況にしておくこと。
エンジニアリングの仕事というのは、精神的にどっぷり浸かれば浸かるほど、生産性が漸減していきます。
生産性が漸減するとはつまり、労働時間がだらだらと長くなっていくということです。
ただし最初は、どっぷり浸かる必要はあるのですが...
◆
比喩でいうと「乾いたスポンジの時期」はどんどん吸収したほうがいいと思います。
スポンジがだいぶ湿ってきて、自分けっこう「水も滴るいい男」になってきたかな?と(笑)組織の中で感じられる瞬間がかならずやってきます。そこが自分の仕事を一旦俯瞰してみる大チャンスです。
それにより、仕事も次のステージに上がっていく準備ができます。
それができないと、生産性は少しずつ下降線をたどり始めます。
よほど自分の仕事の「質」に対して意識的でない限り、本人は自身の生産性が漸減していることに気づきません。
そして指摘してくれる人もこの業界にはいません。
なぜならば、自チームや自組織のメンバーの生産性が下がったところで、長時間労働でカバーしてくれれば別に構わない、どころかなるべく長時間労働してくれないと困る、という空気があるからです。
朝早くきて午前中からテンション高め、完膚なきまでに仕事をこなして夕方颯爽と帰っていくような方が部署にいると、一般SEの「士気にかかわる」ので、いてほしくないんですよね(笑)。
そして、上昇の気運がある方が次のステージへいくことを誰も望んでいないのです。悲しいことに。
「仲間でいようよ~」という人間がうようよしているのです。
問題の所在は、もうとっくに次のステージに上がっているべきなのに「留まっている」方々が多すぎるということです。
生産性が漸減し続けている年輩SEが、加速度的に増加していてかつ若手の成長を阻害しているわけですから、そりゃこの業界の将来性は推して知るべし、ですよね...
◆
まぁでも、ずっとできなかった(しようともしなかった)方がいきなり自分の仕事を俯瞰してみるようになるというのはなかなかハードル高いので...
そのために必要なのが、時間です。時間的に仕事から離れる。
わかりやすくいえば、早く帰る。
あとは、会社携帯や会社PCから離れる。
あるいは電源を切る。
仕事から離れる時間が増えるほど、自分の仕事を俯瞰することができるようになります。
あまりにもあたりまえのことですが!
でも、長時間労働が常態になっているIT業界では、時間的に仕事から離れるのはなかなか難しいです。
特にIT業界では、勤怠管理の及ばないタコ部屋(「プロジェクトルーム」という名の)に監禁されたりしますからねえ...
時期によっては、家でも夜間休日オペからコール鳴りまくりということもありますし...
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わかります。難しいのはわかるんですけどね。私最近強く思うのは...
「やれてる人もいるでしょう」ということ。
若い時期はいろいろ遠慮もあったり、そもそも仕事をちゃっちゃとできなかったり、難しいのかもしれないけれど、問題なのは自分の裁量で仕事をちゃっちゃと済ませて帰れるポジションになっている人がたくさんいるのに、それができない方が多すぎるという事実です。
以前は、さまざまな事情で早く帰れないのだろうな、いろいろ大変なんだろうな...と多分に同情的でしたが最近は、ただ単に自身の生産性が漸減していることに気づいていない方ばかりなのだな...と結論づけています。
つまり、この業界の方々うちの多くは外的要因で早く帰ることを阻害されているわけじゃなくて本当に、仕事を一気呵成に終わらせることができなくなっているに違いない、と...
最近のトレンド(?)にうまく便乗して、社会的強制力でもって仕事の時短が強引に、ゴリゴリと進められるのだとしたら、それはIT業界に属する人たちが自律的におこなうことができなかった、という証左でもあるわけで、悲しいことですよね。
当然それは、生産性が上がったから早く帰れるということではないわけで。
◆
まぁでも、最初は外圧や強要であっても、とにかく最初は、慢性的に仕事に心も身体もべったりな方は、まずは離れる必要があります。
それは、病院の治療、あるいは入院のようなものです。
いってみれば依存症ですので。
順番としては、バリバリと仕事ができるようになり、生産性が上がって早く仕事を終われるようになり、余暇時間が増えることによりプライベートも充実し、健康も促進され(睡眠時間が増える等)、気持ちがポジティブになってさらに仕事の生産性が上がる...
といったような正の循環ができるのが理想ではありますが...
硬直した組織、考え、ワークスタイルにがんじがらめになってしまっている状況だとそれも難しいので、各人の生産性が上がってくることを期待する前に、無理やり仕事からひきはがす必要があります。
IT業界では上司が、早く帰れよーと「口だけ」言いはするものの、その理由は自分の保身であり、自分の査定に影響するからポーズでそうつぶやいてるだけで、実は部下を気遣ってくれているわけでもありません。
そして口だけで何ら助けてもくれないですしね...
だから、まずは口だけをやめて強制的に帰すことです。そして自分も帰る(&変わる)ことです。上の人間の強いメッセージを伝えて、そういう組織にまずするということです。形から。
それが骨抜きになりさえしなければ、変われます。
言い方を変えると、そういう取り組みはIT業界では絶対に成就しなさそうので、書いていて虚しいものがあります。
◆結論?
要は、覚悟を決めるってことです。
管理職と上層部が。
必要なのはそれだけです。
一時的に、顧客からクレームが頻発する時期があるかもしれませんが、管理職が覚悟を決めて、真摯に対応するんです。
ふんぞりかえっている(いたい)上層部も、一時的に現場に戻ってくる覚悟が必要です。
そこから、ブレイクスルーが生まれてくるのですから...
形だけ、社員を家に帰せばいいんだろう?と、やたらめったら家で家族団らんしてる社員に電話してはいけません。
職場からは退出しろ、でも明日朝顧客との定例会だから資料は当然必要(わかってるよね?)、とハラスメントしてもいけません。
それではいつまで経っても変わりません。
というか抜け道考えてる時点で変わる気ないんですけどね...
◆
この業界見渡してみると、どうも管理職以上がやれそうにないんですよね。
「覚悟を決める」っていうのが。
特に、技術屋上がりの管理職が...
組織や風潮を変えるために、まず自分から変わればいいだけの話なのに、変わる覚悟がない。
まぁ変われないのも元はといえば生産性が低いからなんですけどね。昔は高かったのかもしれないけれど。
でも、仕方ない面もあります。我々のさらに上の世代が、連綿とブラックな問題を先送りにして、我々世代に押し付けてきたわけですから。
だからって我々世代も下に押し付けてよいかといったらそうではない。だから、我々で止める!という覚悟が必要。
まさかとは思いますが...原子力云々とか環境問題を次世代に先送りにするのはNo!で、この問題は先送りOK!とか言わないでしょうね(笑)
そういう覚悟をお持ちの方が、同世代とその周辺にきわめて少ないので、少しでも増えていくことを願っています。
◆
それにしても、20年ぐらい前、能力的スキル的に絶望的に落ちこぼれで、まったく馴染めなかった自分がなんでこんなエラそうなこと書いてるんだろう? って思いますね、正直(笑)。
でもおかげさまで、覚悟を決めてリスクを取るのは早かった。そうせざるを得なかっただけで別にそうしたかったわけじゃないけど(苦笑)。
どうしちゃったの? 昔からそんなだったっけ? いつの間にそんな「いかにもサラリーマン」になっちゃったの? 昔もっとトンガったSEじゃなかった?
などなど言いたい方が、同世代やちょっと上の先輩に多数(苦笑)。
けっこう見ていて歯がゆいんですよね。
覚悟を決めず、リスクを取らず、仮にサラリーマン時代はなんとか逃げ切れたとしても、老後は安泰ではないですからねえ...
その、「なんとかリスクをとらないままで逃げ切るにはどうしたらよいか?」というマインドが最大のリスクなんですよね。
リスクをとるなら今!若いうちがいい。もう若くないけれど(苦笑)、今この瞬間がいちばん若いのは間違いない(笑)。
おあとがよろしいようで...