サイバー判断力を、点数ではなく地図で捉える

不審なメールのリンクを押さなかった人が、二人いたとします。
一人は、なんとなく怪しいと思い、リンクを開きませんでした。
もう一人は、送信元と依頼内容の食い違いに気づき、操作を止め、別の方法で確認しました。
結果は同じです。
けれど、そこに表れた判断力も同じなのでしょうか。
今日は、ここから考えてみます。
判断力は、どこに表れるのでしょうか
Human Hardeningが育てたいのは、デジタルの世界をしなやかに生きる力です。
私は、その力を「判断力」と「回復力」の二つから捉えようとしています。
判断力は、不確実な状況で、立ち止まり、確かめ、選び直す力。
回復力は、想定外のことが起きたあと、戻り、学び、次の行動を変える力です。
正解率だけで、判断力は測れるのでしょうか。
先ほどの二人を見ると、それだけでは足りません。
結果が同じでも、そこへ至る過程は違うからです。
そこで、まず判断力を四つの行動に分けて見てみます。
気づく。
違和感と、その理由を言葉にする。
止まる。
不確実なまま動かず、判断する時間をつくる。
確かめる。
事実と推測を分け、足りない情報や支援を取りにいく。
選び直す。
新しい情報を受けて、最初の判断を更新する。
判断力は、この一連の行動に表れます。
では、どう測るのでしょうか
稽古の前に、観察する行動を決めます。
稽古中は、正解か不正解かだけでなく、何に気づき、どこで止まり、何を確かめ、どの情報で判断を変えたのかを記録します。
必要であれば、気づくまで、相談するまでの時間も測ります。
ただし、速さだけでは評価しません。
状況に合った確認や相談ができたかも、合わせて見ます。
稽古のあとは、行動の記録と本人の振り返りを重ねます。
なぜ、そこで止まったのでしょうか。
何が判断を難しくしたのでしょうか。
何があれば、別の行動を選べたのでしょうか。
外から見えた行動と、本人が語った迷い。
その両方から判断を捉えます。
一つの点数にまとめてよいのでしょうか
ここで、一つの点数にまとめたくなります。
数字は比較しやすく、組織にも説明しやすいからです。
けれど、本当にそれでよいのでしょうか。
普段は止まれるのに、強く急かされると動いてしまう。
一人では迷うけれど、相談先が明確なら確かめられる。
判断力は、その人に固定された点数ではありません。
状況や環境によって、表れ方が変わります。
だから、難しさをある程度そろえながら条件を変え、稽古を繰り返します。
どのような状況なら立ち止まれるのか。
どこで判断が難しくなるのか。
どのような情報や支援があれば選び直せるのか。
状況と環境、そのときに表れた行動を並べていく。
そこに見えてくるのが、判断力の地図です。
測ることで、次に何を変えるのでしょうか
前回は、リンクを押してから違和感に気づいた。
今回は、押す前に止まった。
結果だけを見れば、違いが見えないこともあります。
しかし、そこに至る行動は変わっています。
私たちが見つけたいのは、この変化です。
立ち止まれない状況が分かれば、次の稽古をつくれます。
相談できない理由が分かれば、本人だけでなく、環境も変えられます。
判断力を測るとは、人に点数をつけることではありません。
その人が、どのような状況なら力を発揮でき、どこで難しくなるのかを知ることです。
測定は、答えを出して問いを閉じるためにあるのではありません。
次の問いと、次の支援を見つけるためにあります。
では、想定外のことが起きたあと、戻り、学び、さらにしなやかになる力は、どう測ればよいのでしょうか。
次回は、サイバー回復力の「何を」「どう測るか」を探ります。
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