新規事業立ち上げに立向かうベテラン技術者の現在進行形奮闘記

遠ざかる"i"

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 新規事業に中年SEがチャレンジ!

 なんて、大きな話を初めてしまって、実はここ何カ月かの間、相当に悩んでいました。書き始めてわかったのですが、書けないことが結構あるんですよね。顧客への配慮、社内への配慮、家族への配慮……なんて考え出すと、伏せないといけない事が多くって、わけの分からない話になっちゃう。

 そんなの構想段階で予想しておけって事なんでしょうが、予想をはるかに上回った。いわゆる、想定外ですね。私の場合は、ただの怠慢ですが。

 という事で各種の配慮をしつつ、久しぶりに話を前に進めていきたいと思います。あまりに長い間が空いてしまったので、おさらいです。

 前回までの話は、「iのわな」にハマり、中年のおっさんの進路が大きく変わった。それは「今のままで本当に良いのか?」という、自分自身への問いに対する回答でもあったわけで、そこに踏み出せたことで、ほんの一刻ではありましたが解放感を得られた。

 しかし、程なく「iの壁」にぶつかり、まったく前に進めなくなったのです。それはひとえに具体策がなかったから。気持ちばっかり先に進んでいって、肝心の歩き方が分かっていなかった。

 で、この辺の葛藤は面白くないという理由で、バッサリと割愛したところまでが、あらすじです。今回は具体策が出たところから、続けたいと思います。

 さて、早速、具体策とは……てな話をしたいのですが、その前に当社の課題の整理をしておかないといけませんね。

 多くの中小ソフトハウスに共通する問題なのですが、この業界の特徴から来ている、非常に大きな課題です。それは下請構造からの脱却なんです。

 私たちの会社ができた30年前には、まだコンピュータは一部の大手企業しか持っていない、ぜいたくで大きな投資が必要なツールでした。ソフトウェアの開発もすべてオーダーメイドであり、工数の掛かる仕事でした。

 ネットワークも今のように整備されていませんでしたから、コンピュータのあるビル、または、専用に回線をひいたビルでしかアクセスできないため、客先への常駐が普通。

 開発費が大きいという事は、それを受ける会社も、それなりの規模を持っていないと受けきれない。自然と大手が受けて下請けへ流すという構造ができ上がったわけです。

 今では、まったく開発にかかわらないマッチングだけの会社もあって、元請けから最下層まで、いったい何社を経由しているのか、聞くのが怖いほどの案件も珍しくないのです。

 我々のような会社は大手のSIerといわれる会社から、こんな技術者をいつ何名欲しいと言われて、要望に応えられなければ、仕事は他社へ渡ってしまう。うまく空いている技術者をすきまなく、次の開発へアサインする、これが営業の手腕となってくるわけです。

 肝心な技術者の値段も、実績がものを言う世界だったので、より良い仕事を会社も技術者も求めるのですが、営業的にはすきまの方が怖い。隙間が開けば、その間の売上はゼロ。何がなんでも隙間を開けられない。いわゆる技術者の稼働率向上こそが、営業の最大目標になってくるわけです。

 しかし、間に何社も入るので薄利となり、結果、多売必須という悲劇が待っているのです。

 多売=技術者を増やすわけですが、すきまのリスクが増加するのは避けたい。そこですきまの間は給料を出さなくて良い契約社員を多用する企業が続出します。一部の幹部社員以外は自分の給料は自分で営業してこいなんてのが日常茶飯事になる。当社は、何とかそうなることを避けられていますが、ビジネスモデルが改善されたわけではない。

 だから、技術者以外の売り物が必須だという認識までは、どこの会社も多かれ少なかれ持っている。

 そして、次のステップ! それが"具体策"なのです。あーやっと、具体策の話までこぎつけました。

 私はこういった認識を会社全体で持った上で、その具体策を考え、実行していく部署の責任者になったわけです。当初の計画は、頼りにしていた技術者が相次ぎ退社するという、"想定外"にやられ、計画スタート約1年で、別案を考えるハメになりました。 ※ここは各所への配慮という事で、詳細は伏せさせてください。

 ただ、この計画変更も営業担当からすれば、中小企業への飛込みを行う際の、1つのプロダクトが無くなったに過ぎなかったのです。自社に売るものが無ければ他社から調達する。ここから代理店として、他社製品やサービスを売る事が中心となっていきます。

 考え出したうたい文句は、「中小企業の情報システム部になる!」でした。各企業のIT課題に対して、長年のSEの経験を生かしたコンサルティング力を使って、ソリューションを提案する事が、このころの戦略だったわけです。

 しかし、最初の問題は、ITに絞って顧客に課題を話してもらおうとすると、なかなか、語ってくれないというものでした。それは、抱えている問題の解決策がITどうか、ユーザーにはなかなか判断できない事が原因でした。

 そこで、ITというキーワードは捨てて、すべての課題、問題について、聴きまくったのです。その結果、多くの企業が問題や課題を語ってくれる様になりました。

 そこで2つ目の問題にぶち当たるのです。語ってもらった問題、課題には、少なからずIT以外のものがあった。そりゃあそうですよね。でも、IT以外はやっぱり専門外。簡単にはいきません。聴いた以上、何とかしたいのが人情! なのですが、なんのソリューションも提示できない日々が続く事になります。

 自業自得ですが、せっかく腹を割って話してくれたのに、何もできない事が非常に心苦しい。その結果、ITでないサービスや商品の代理店に関わっていくという流れができてきていくわけです。

 こうして、当初の"i"の話からはドンドン遠ざかっていく。方角は合っているのですが、最初の微妙なズレは、時がたつにつれ、思いのほか大きなズレに……。

 さて、今回も長くなりましたので、ここまでとします。次回は、"i"から遠ざかるわたしたちが、軌道修正をして、"i"方向へ戻って行くストーリーを書いていきます!

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