エンジニア歴20年のおっさんが語る、いろいろな経験やこれからのソフトウェア業界についてです。

第9話 ソフトウェアビジネスの曲がり角

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 今回から新しいシリーズです。視点をエンジニアから少しずらして、働く「環境」を中心に話しを進めたいと思います。

 中にはエンジニアだけでなく、働く人全般にいえることも出てきますが、基本はエンジニアとして働く人に考えて欲しいです。大体3回から4回ぐらいになる予定ですのでまたお付き合いいただければ幸いです。

 今回はソフトウェアビジネスです。日本では「情報処理産業」のひとつとしてカウントされています。情報処理産業と言うと少し範囲が広いのですが、ここではソフトウェア開発を「ビジネス」として捉えた上での話をしたいと思います。

注意!
 以下の記述には違法コピーなどの記述がありますが、あくまでもわたし自身が感じていることを書いてあります。決して肯定する訳でも推奨する訳でも、またわたし自身が行っている訳でもありませんのでご了承下さい。いうまでもなく、違法コピーは犯罪です

■ソフトウェアビジネスの抱える問題

 今更ですが、ソフトウェアには明確な「形」がありません。また単体では何の意味も持ちません。それはプログラムだけではなく音楽や映像などのコンテンツも同じです。

 形がないため、金銭的対価と言うのは基本的に「人件費」となります。物といえばせいぜいメディアと印刷物ぐらいでしょうか。最近はインターネットのおかげでメディアすら必要ありません。完全に「電子データ」として取引可能です。

 ソフトウェアも人件費のため、価格の基準というのは存在しません。値段もピンからキリまでありますが、人気のソフトはライセンス違反や違法コピーの問題があり、思うように売上げが伸びません。ゲーム機でもマジコンやカスタムファームウェア等で同様な問題があります。これは映画のDVDや音楽ソフトでも同様です。着うたなどは正規ダウンロードよりも違法ダウンロードの方が多い(らしい)ぐらいですから単価が安いとはいえ、被害額はバカにならないと思います。

 ソフトウェアは例外なくデータのため、基本的にコピーは可能です。プロテクトなんかはわたしがパソコンを触りだした20数年前からありました(言い換えればその頃から違法コピーはあった)。最近ではネットワークアクティベートやハードウェアプロテクトもあります。でも、例外なくクラックされています。完全にイタチごっこですし、これからも続くと思います。

 以前のコラムにも書きましたがソフトウェアの価値は一般の人にはなかなか理解されません。違法コピーを生む土壌の根本はモラルの問題ですが、そこに「お金」が絡んでくる以上おそらくなくならないでしょう。欲しい側はなるべく安く欲しく、できればタダが良い、売る側は安く、もしくは無料で提供する。恐ろしいほど完璧に需要と供給がマッチしています。

 音楽は基本的に販売だけではなく、著作権としてテレビ局や舞台、カラオケやレンタルなどからも収入があり、それを管理する団体もあります。映像も基本的に二次制作(一度テレビや映画として作成してある程度収入を得てからソフトとする)がメインなので最低限の収入はあると言えます。しかし、コンピュータープログラムは販売が基本的にすべてなので違法コピーをされてしまうと、その分収入が減ります。

■ソフトウェアは製品かサービスか

 日本では、ソフトウェアをひとつの「製品」として考える人が多いです。逆に欧米ではソフトウェアを「サービス」として考えている人が多いです。これはどういうことかといえば、日本ではソフトウェアを作って売って収益を上げることをビジネスにしていますが、欧米では作ったソフトウェアを使って収益を上げてビジネスにしています。作って売ることをビジネスにしない訳ではありませんが、あくまでもその先の「サービス」がメインとなります。

 業務ソフト1つとっても違いがあります。例えばERPのような統合型システムは、日本ではパッケージをベースに導入する会社の業務形態に合わせてカスタマイズすることがほとんどです。そのため、最終的にはパッケージと呼べないほど専用のシステムになります。欧米では逆に導入する会社がパッケージに合わせて業務を変更します。ナゼかといえば、それが一番コストが安いからです。業務の効率を上げるためのソフトウェアを業務に合わせていては効率が上がらないのではないかという考え方もあります。

 サービスという点ではGoogleが一番分かりやすいでしょうか。従来有料で売っていたデスクトップのオフィスソフト(ワープロ、表計算、プレゼンテーション)をSaaSとして無料でユーザーに開放しています。会社自体は検索結果とそれに表示する広告収入で利益を上げています。日本では「mixi」や「GREE」などがこれに当てはまると思います。マイクロソフトですらこれにつられたかのように次期オフィスソフトの個人向けはSaaSで無料解放するらしいです。欧米ではカスタマイズの考え方があまりないので先ほど書いたERPですらSaaSで当たり前のように提供しています。流行のクラウドコンピューティングも考え方のベースは「サービス提供」といえます。

 国が違えば……といえないこともないのですが、コンピューターに関してはこれだけネットワークが発達してしまうと、世界の潮流に飲み込まれるのが常です。日本ではコストよりも「瑕疵担保」の方が占める割合が大きいので「製品」として成り立ちますが、そのうちそれだけでは収益を上げるのは困難でしょう。国外の企業もそれは認識していて少しずつ日本の市場に参入してきています。また、OS(サーバー)、ミドルウェア、アプリケーションなど多岐に渡るオープンソースソフトウェア(OSS)により、今までSIerに丸投げしていた企業ですら自分たちでシステム構築を模索し始めています。長いスパンで見ればソフトウェア開発は専門職ではなくなると思います。

 ソフトウェアを作っても売れない状況がだんだん広がれば、エンジニアの職場も少しずつ減っていくことにつながります。

■人月単価の謎

 コラムでもたびたび出てくる「人月単価」の問題ですが、わたしがソフトウェア開発の仕事を始めた頃は、見積と言えば確か「ステップ数」でした。ソースコードの1行がなんぼ、というやつです。環境としてはメインフレームやミニコン、オフコンなんて時代で言語はCOBOLやPL/Iでしょうか。確か見積手法なんて本もあったと記憶しています。

 そのうち「ダウンサイジング」と言う言葉が流行になり、大型のコンピューターが順次PCサーバー(UNIX)などに置き換わっていきます。パソコンもMS-DOSなどのキャラクタベースのOSからWindowsなどのグラフィカルなユーザーインタフェイス(GUI)やマルチタスクになり、低価格化もあいまって一般に普及します。プログラム開発も敷居が高かったのですが、VisualBasic(VB)の登場により一気に低くなりました。

 VBもそうですが、わたしが初めてVC++を触った時、本に載っていた「ワープロもどきのリッチテキストエディタ」を試しに作ってみたことがあります。凝った機能を付ければキリがないのですが、最低限の機能はわずか10数行程度で完成します。感動したというより、あまりのコード入力の少なさに驚きました。この時のインパクトはいまでも忘れられません。

 開発環境が特定のOSに特化されているので(本来、コンパイラ言語はソースレベルではOSに依存しないはず)一度、それでシステムを作ってしまえばそのOSがそのシステムの標準システムになります。OSや開発環境のバージョンが上がっても言語仕様があまり変わらないか、変わっても変換支援する機能が必ずあるので、ユーザーは同じシステムを使い続けていくことになります。途中での変更は、費用も期間もリスクも増えるだけとなります。

 話を戻すと、生産性向上のために極力コード入力を減らして面倒な仕組みのほとんどをシステム側で行っているため、従来の「ステップ数」で見積りを行うと、極端にシステム価格が安くなります。また、Webアプリケーションのように画面、ロジック、制御(MVC)と別々に開発するものでもステップ数だけでは見積もることは不可能です。特に、画像の加工やイラスト、データベースなどプログラム以外の要素も絡んでくるため、単純にステップ数やページ数で価格を出すことができません。

 そもそもソフトウェアのような「無形」の物に対する正当な「単価」をはじき出すこと自体難しいといえます。そういう意味では「ステップ数」も理にかなった方法ですが、今のシステムでは利益が上げられません。ステップ数が少なくなり、生産性も上がっている「はず」ですが、結果だけ見るとそうとも言い切れない背景もあります。

 ソフトウェア開発におけるコストのほとんどは「人件費」です。

 開発環境を購入してもプロジェクト毎に買う訳でもないので長い目で見れば人件費に比べ遙かに安いでしょう。そうなると単純に必要人件費+アルファ(このアルファの方が多いでしょうが)を請求した方が手っ取り早く、会社も原価計算がしやすいということになります。おそらくこれが人月単価の実態だと思います。

 人月単価になると今度はエンジニアそのものが商品となりそこに単価が付きます。これだけなら個人的には問題はないように思いますが、そこの基準が非常にあいまいで、エンジニア個人の能力を測る尺度(基準)がありません。だいたい経験年数、こなしたプロジェクト数、所有する資格、学歴などが主でしょうがどれも基準にするには統一されたものではありません。唯一資格だけが基準に出来そうですが、プロジェクトによって取得した方が良い資格は変わるので(例えば組み込み機器のプロジェクトにOracleMasterは取得してもしなくても影響があまりない)単価を決めるにはやや弱いと考えられます。

 結局、会社単位で単価を決めるのですがだいたい「エンジニアの人件費+利益+何かあった時の保険」となります。人件費の基準は給料の高い方が基準になるので極端な話、月40万円もらっているSEも20万円もらっているSEも同じ単価になります。残業を払う会社ならそれも考慮していると思います。もし、初めから他の会社や人材派遣会社、フリーの人を使ってメンバーの穴埋めを考えたら基準なんて存在しません。あくまでも会社が赤字にならず適当な利益を上げられるだけの見積が出来上がります。

 大手SIならそれで利益を上げられますが、下請けや技術者派遣の会社ではそうはいきません。自分たちがエンジニアの単価を決めることができず、元請け会社のいいなりになります。良心的な会社なら手数料程度を引いた単価を提示しますが、そうでなければ結構な額を引かれます。今までは好景気に支えられ、3次請けや4次請けなどもそれなりにやって行けましたが、これからはまずやって行けません。

 実際にはもう少し複雑な事情があるのですが、単純に考えて同じ単価なら、スキルがある会社(納期が短いもしくは少人数)よりスキルがない会社(納期が長いもしくは大人数)の方が確実に利益が上がるという、わけの分からない構図になります。

■ソフトウェアビジネスのこれから

 今までの慣習を突き破ることは、ソフトウェア業界に限らず容易ではありません。でも、もう考えなければいけないところまで来ていると思います。

 パッケージソフトの場合は先ほど書いた通り違法コピーの問題はどうしても避けて通れません。

 金額が安いものは普通にプロテクトをかけておけばあまり問題ないと思いますが(クラックしても手間なだけで欲しいなら買った方が安いので。仮にクラックして売ってももともとが安いのでリスクの割に利益は上がりません)高価で人気のソフトウェアは基本的に現状のようなネットワーク認証やユーザー登録の義務化などで対応するしかありませんが、基本的にどんな方法でもクラック可能なのであきらめるかSaaS化する方向が一番だと思います。もし、絶対にクラックされない方法があれば特許取って売り込めば相当儲かるでしょう。

 人月単価の問題はSIのビジネスモデルの考え方から変えないと無理だと思います。基本的に子会社や他社に丸投げ、実際に作業するにしても開発メンバーのエンジニアの半数以上は他社からの派遣(それも2次、3次請けもある)やフリーでまかなうと考えるなら、人月単価にしないと利益は上がりにくいからです。本来は人月ではなく、人件費も含めた工期予測と原価予想をきちんとして見積にすべきですが、エンジニアの多重派遣構造が問題を複雑にしています。特に中小のほとんどはエンジニアを正社員として雇用し、他社に派遣する会社が多いため、作業内容に関わらず人月単価になるのでなかなか難しいと思います。

 結局、ビジネスモデルと業界構造の両方をどうにかしないと片方だけというのは無理があると思います。ただ、このままいってもいずれは行き詰まるのは確実なので(それだけ案件が減っている)会社もエンジニアもそれなりに淘汰されてしまうと思います(人月単価も含め、この話は次回にもつながります)

 「製品」から「サービス」へ、「フルスクラッチ(完全オーダーメード)」から「パッケージ」へ考え方も転換し、その上でエンジニアを上手に活用する方向に持っていかないと厳しいでしょう。残業に評価や価格を反映させるのではなく、いかに早く品質の良い物を作った方が評価や価格が上がるように会社も顧客も考えなければ、無駄な費用だけが増えて自分たちの首を絞める結果となるでしょう。

 次回はエンジニアの働く環境について書きたいと思います。人間関係や病気、雇用などエンジニアを取り巻く環境は、年々厳しくなっています。何が悪いかは一概にいえませんが、少なくともエンジニア1りひとりが真剣に考えるべきときにきていると思います。

Comment(14)

コメント

インドリ

にゃん太郎さん今度のコラムも非常に読み応えがありました。
私も同意見です。人月単価から脱却しない限りこの業界に未来は無いと思います。
私の場合早くからフリーでしたので、情報サービスだけでは食べていけず、
他業種でも働いた経験がありますので余計に「人月単価」に違和感を感じました。
会計課に居た時余計に感じたのですが、他業種の普通の会社では原価管理やその他色々な事をしっかりと考えて会計をしております。
しかし、私が行ったソフトウェア会社では、原価管理すらまともに行われていない事が多くあり非常に驚きました。
その時社長や重役に聞いた所、人月単価なのでそこまで厳密に計算する必要がないとのことでした。
私はそのことを何年も前に聞いてからずっとこの業界そんな丼勘定で維持できるのかとずっと疑問に感じておりました。
ちなみに、私自身の場合はサービスと考えて、自分のサービスの価値を示しつつお客様と交渉して価格を決定しております。
この方法は非常に大変ですが、商談が成功した後は喜んで頂けます。
改めて考えてみれば、これは商売の基本だと思います。
その基本を忘れて人月単価という安易な方法に逃げてきたツケが色々な所に出ていると私は考えるしだいであります。

にゃん太郎

インドリさん、ありがとうございます。

 人月単価の話は次もその次も続きますが、会社だけではなく我々エンジニアもも
う少し自分の問題として捉えることが必要とも思います。インドリさんのようなフ
リーの方は当然考えていらっしゃるでしょうが、フリーじゃないエンジニアはどこ
かそういうのは他人事のように見えます。

 違法コピーは我々エンジニアでさえ平気でやっている人がいます。結局組織の中
で決まった給与でソフトウェアの開発をしているので仮に自分が作ったソフトウェ
アが違法コピーされてもあまり気にならないのが現実です。もし自分が作ったソフ
トウェアの売り上げで給料が左右されたら少しは自分ごとのようになるのでしょう
か。

 経営者も顧客もそしてエンジニアも丼勘定は自分たちの首をゆっくり絞めている
事に気が付くべきです。

インドリ

にゃん太郎さん、返信有難うございます。
違法コピーについてのコメントを忘れていましたので書きます。
違法コピーは本当に怖いですよね・・・
それにも関わらず無関心な開発者や、違法コピーする開発者まで居る始末。
にゃん太郎さんが仰るとおりで、これも自分の首を絞めていると思います。
困った事に違法コピーやクラックの類は比較的簡単ですよね。
ノイマン型である限り、絶対にクラック可能だと思います。
ですから、それを防ぐ方は本当に辛い。
一方のお客様方も違法コピーしたり、無理やりに買い叩いたり、看板だけ信じてブラック企業を生かす原因になっていたり・・・と、もう全ての人が情報産業を壊したいのかといいたくなるほどです。
本当に不思議な産業ですね。

次回も楽しみにしております。

あずK

マジコンという単語が出ていたので、マジコンに関して言えば、
平気で子供にマジコンを買って使わせる親もいますし、
少しでもマジコン対策を入れようものなら
「あの会社は何を考えているんだ」と憤慨しているようで…。
当然、小さい子供さんはゲームソフトの価値なんてわからないと思うので、
「マジコンは沢山のゲームが出来る機械」くらいにしか思ってないかもしれません。

ソフトウェアビジネス自体が昔からあるわけではないので、
モラルに欠けている方が出てくるのは仕方ないのかもしれませんが、
音楽等も含め、いいなと思ったものには対価を払うということを
子供のうちから(親子で)学習させる機会があった方が良いのかもしれませんね。
それが、ひいては「感謝する気持ち」に結びつくとも思います。
#平気でP2Pにソフトを流す人の中には
#「こんなものに金を出させようとする会社に腹が立つ」とさえ思う人もいるようなので…。

ヴァン

はじめまして。

うちの子供達もマジコンの話はしてます。
「友達が持ってる。あるとたくさんのゲームが出来る。」と言ってます。
子供達も欲しがりました。
でも、「こんなのが売れるとパパの仕事が無くなっちゃうよ」と説明すると諦めてくれました。

その友達は親が買ってくれたようですが、その親は学校の先生です。
その親も違法な事をしていると言う意識は無いようですが、
先生が...という気分ですね。


人月単価は...

うちの実家は農家ですが、作物を作って、それを市場に出荷する。
値段は市場が付けるので、良い時もあれば悪い時も有る。
人件費なんて全く考慮されていない世界です。

そういう世界から見れば、人件費を基準に価格を決めることはある意味良いことなのかなとも感じられます。得もしないが損もしないので。

このあたりは、個人経営の人と会社の経営者では違ってくると思いますね。

にゃん太郎

インドリさん、ありがとうございます。

> 本当に不思議な産業ですね。

 これは私も思います。エンジニアに限らないとは思いますがスキルの追求だけで
モラルやお金の事を考えない(正確には考える必要がない)現状が問題だと思いま
す。この辺は次のネタなので、また思うところがあれば意見を頂ければ幸いです。

にゃん太郎

あずKさん、ありがとうございます。

 マジコン擁護派の意見は「買いたくなるような面白いソフトを作らない方が悪
い」と言います。ゲームなんかは業務ソフトと違い、嗜好性が強いのでこの意見は
一理ありますが、それとマジコンの問題は別ですよね。面白いソフトを生み出せな
い会社はそのうちユーザーから見放され必然的に淘汰されていきます。でもマジコ
ンは面白いソフトを作る会社まで駆逐します。マジコンが無くなれば売り上げが上
がる保証はありませんが、少なくとも損害は無くなります。

 親もお金をかけず子供にソフトを与えられるという観点だけしか見ていません。
日本のように資源の少ない国ではコンテンツ産業は非常に重要ですが、こういう考
えが先々優秀なクリエイターやエンジニアを輩出出来なくなると思います。

 家庭や学校でモラルの教育が必要なのですが、教える方にもモラル教育が必要な
状況はどうしたもんでしょうかねぇ…ため息が出ます。

にゃん太郎

ヴァンさん、ありがとうございます。

> そういう世界から見れば、人件費を基準に価格を決めることはある意味良い
> ことなのかなとも感じられます。得もしないが損もしないので。

 人件費の考え方って実はエンジニアにはそぐわないものだと思います。次のコラ
ムのネタなので詳細は省きますが、一般論として品質の良いソフトを作るスキルの
高いエンジニアは短期間に作ることが出来ますが、品質があまり良くない動くだけ
のソフトを作るあまりスキルがないエンジニアは品質向上も含めて作るのに時間が
かかります。これを単純に人件費に当てはめると前者よりも後者の方が高くなりま
す。これが価格として跳ね返ってくるなら顧客から見たら「何それ?」と思うでし
ょう。

 農家の例ではないのですが、本当は市場が価格を決めるようにならないとこの状
況は改善されないでしょう。作物の場合は量も質も見れば(食べれば)分かるかも
知れませんが、ソフトウェアは運用(動作させて)してみないと分からないのが難
しいところです。

虚人

はじめて「マジコン」ていう言葉の意味を知りました。
ほぉ~、そうだったんだ。
私が学生の頃は、「マジックコピー」とか「ベビーメイカー」だののパソコン向けのコピーツールがわんさか(笑)ありました。
私の子供の友達関係では、マジコンを持っている子供は居ないようですが、誰かが手に入れると、すぐに欲しくなるんでしょうねぇ。

にゃん太郎

虚人さん、ありがとうございます。

> 私が学生の頃は、「マジックコピー」とか「ベビーメイカー」だのの
> パソコン向けのコピーツールがわんさか(笑)ありました。

 私が高校生の時(20数年前)にはレンタルソフト屋やコピーソフトを売る店が
堂々とやってました。レンタルソフト屋にはコピーツールが売っていて、そうなる
と買うのは必然ですよね。私は高校生でお金がなかったので当時は正直に「いいな
ぁ」と思ったものですが、良く考えるととんでもないですよね。

HZ

>違法コピーやマジコン
マジコンは小学生の母親ネットワークの様な物で、
「これがあれば子どものゲーム代が節約出来る」
という口コミのみで違法という事を知らずに子供に買い与えてる母親が
結構居るようですが、これはある程度仕方無いと思っています。
まさか店に普通に置いてある物が違法だとは思わないでしょう。
ただ、ゲーム会社がマジコン販売業者を訴えたというのは
ニュースになっていましたのでニュースぐらいはチェックして
その時点で気づいて貰いたいものです。
ゲーム代を節約したいなら長く遊べるゲームを見極めて買い与えるでも良いです。

一方その他の違法コピーに関してはそこそこPCの知識がある人が
違法と知りつつやっていると思います。
配った人ではなく使っただけで逮捕者でも出れば少しは減るのでしょうか…。
でも証拠をつかむのが中々難しそうですよね。
別件で逮捕された人の家を調べてその様な痕跡があれば
違法コピーで再逮捕とかするだけでも少しは効果ありそうな気がします。

さらに、中にはIT業界で働いていながらマジコンを使っている輩もいます。
頑張ってソフトウェアを作った後で、
「このソフトウェアコピー出来たから賃金払わないよ」
と言われても平気なのでしょうか?
しかもこの業界で違法コピーしてる人って違法コピーを自慢げに話すんですよね。
一体何を勘違いしているんでしょうかね?
コピー出来る程技術力があるとでも自慢したいんでしょうか?
同じIT業界で働く人間として恥ずかしいです。

>人月単価とかの話
この部分に共感。
「残業に評価や価格を反映させるのではなく、いかに早く品質の良い物を作った方が評価や価格が上がるように会社も顧客も考えなければ、無駄な費用だけが増えて自分たちの首を絞める結果となるでしょう。」
Aさん:仕事が遅くミスが多く、いつも遅くまで残業をしている
Bさん:仕事が早くて正確、他人の作業まで手伝いつつも定時で帰る
技術職のメンバーの共通認識「Bさんは凄いなぁ…。」
上司の認識「Aはいつも遅くまで残って頑張ってるな。Bはやる気が無いのか?」
たまに技術職経験者なのか、正しい評価をする上司もいますが…。
「えぇ!?Bさんをこのタイミングで切っちゃうの!?」
という状況になり、その後デスマーチという事も少なくありません。
プロジェクトに誰を残すかを決める際は技術職のメンバーの意見を
取り入れた方が良いと思います。

にゃん太郎

HZさん、ありがとうございます。

> しかもこの業界で違法コピーしてる人って違法コピーを自慢げに話
> すんですよね。一体何を勘違いしているんでしょうかね?

 私もそう思います。前のコラムでも書きましたが、そういう雑誌が当たり前のよ
うに並んでいる状況なのでちょっとITの知識があれば誰でも出来そうですよね。そ
れを自慢されても「アホじゃねーの?」と思ってしまいます。マジコンにしても雑
誌にしても他の商品と同じように並んでいるので、買う方からすると罪悪感が無い
のかもしれません。立ち読みしてみると結構えげつないと感じますが。

> プロジェクトに誰を残すかを決める際は技術職のメンバーの意見を
> 取り入れた方が良いと思います。

 昔からですが、出来る人ほど評価にしろ仕事にしろしわ寄せが来ますよね。で、
抜けていくのは優秀な人が多い。「遅くまで頑張っている」事だけを基準に評価す
る事はプロジェクト全体から見ても不幸だと思います。何とかならないものかいつ
も思案しています。

kuma

こんにちは

今回も、読み応えがありました。
とにかく、業界として今考えるべき大きな問題だと思います。
ビジネスモデルと人月構造の改革が必須ですね。
ゲームは別ですが、輸出(海外受注)より、国内需要だけでやってこれたことも
大きいのかもしれませんね。
とにかく「危機」ですし、変われる「チャンス」だと考えています。


>■ソフトウェアは製品かサービスか
私は、にゃん太郎さんと違って、昔からソフトウェアは「サービス」だと
思います。商品として販売して利益をあげています。基本的には、ゲーム
でもビジネス系でもそうですが、サービスを提供している事に違いないと
思います。特に、日本の業務系開発のように「カスタマイズ」は完全な
サービスだと思っております。


>■人月単価の謎
>「エンジニアの人件費+利益+何かあった時の保険」
にゃん太郎さんが言われていること、すごくわかります。

このほかにも
「速くいいもの仕上げたら売上が減る」
「何かあった時の保険(リスク)計算が確立されていない(しようとしない)」
あると思います。

人月だと、速くいいもの仕上げた場合に、売上が減ります。
これは、きついです。物流や製造業界だと、特急料金を頂けるのにです。
これも、長時間労働のがんばり屋さんを助長している部分があると思います。
あくまで、QCDのバランスが最優先ではありますが。


> エンジニア個人の能力を測る尺度(基準)がありません
これは、笑っちゃう話を思い出しました。
客先出向していた時に、電話口で「お宅の上級PGって何を基準に
上級っていってるの?」と話されていました。

たまに聞く、「上級」ってなんだろうなと以前から思っていました。
果物や野菜の等級じゃあるまいし(笑)
社内の職能として「上級」をつけるのは勝手ですが、お客様に
は全く関係がないですし、説得も納得もできない話しです。

こういうとこにも、いい加減さがあらわれている気がします。

にゃん太郎

kumaさん、ありがとうございます。

 ソフトウェアって形がないのでどこまでがサービスかって難しいのですが、現状
でほぼ人件費と考えれば物を作って売った対価ではなく、人が動いて発生した対価
なのでその他接客業と同じ「サービス」と言えるかも知れませんね(と、今気づい
た)

> これも、長時間労働のがんばり屋さんを助長している部分があると思います。

 個人的には尊敬するのですが、頑張る方向が正反対なのでそれはどうかなと常々
思っています。

 ちなみに私は前職は中級SEでした。何を持って中級かは未だにわかりませんが。
きっとほどほどだったんでしょう(笑)

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