満34歳。社会人歴17年目に突入。特定労働者派遣で働くこと10年目になる高卒エンジニアが綴る日々の所感です。

特定労働者派遣の良いところ

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 お疲れさまです。ちょりぽんです。

 業務メールのような出だしで始まる2回目の投稿。今回のテーマは、あまり語られることがない『特定労働者派遣の良い面』です。

 何かとイメージの良くない特定派遣です。遵法意識も低く、本当に酷い現状があることは事実です。奴隷制度や人身売買などと酷評されることもありますが、わたしにとっては良い面の方が大部分を占めます。

 記事を書くにあたり、わたしは『業務を知らずしてプログラミングするべからず』と考える人間であることを明言しておきます。ユーザーの業務に関心を示さず、プログラミングだけを追求したいというエンジニアは、技術に付加価値を生むような、それこそGoogleやYahoo!に就職するべきであり、業務改善を前提にしたアプリケーションの開発現場に居るべきではないと考えています。

 ということで、わたしが思う良い面を挙げたいと思います。

■気分転換

 特定派遣においては、案件毎に勤務場所が変わります。わたしはそもそも飽き性でして、目に映る風景に変化がないだけでも耐えられないクチです。不謹慎な言い方ですが、2年くらいで大体飽きてきます(どこからパクってきたのか、後輩がこのことを”システム・アーキテキター”と言っていました)。

  『変化がないということは、停滞ではなのか』と考えてしまうわたしにとって、勤務場所が変わることは良い気分転換となっています。もちろん、気分次第でいつでも途中退場するということではありません。一度案件に参画すると、最低でも1年間はいたりします。

■さまざまな業種に触れることができる

 システムを構築するにあたり、ユーザー企業の業務知識を習得することが前提にあるわけですから、案件をこなせば、多くの職種に触れることができます。

 転職を繰り返さずとも、多くの職業について知識や経験を得られる機会というのは、そうそうあるものではありません。これをメリットと捉えられるかは本人次第ですが、好奇心がベースにある人にとっては飽きることのない仕事だと思っています。

 わたしは今でも『ITだけが仕事じゃない』と考えており、異業種への興味は尽きません。

 周囲からは『天職ですね』とお褒めの言葉をいただくこともありますが、いまだにIT一本で生きていくとを決めかねています。将来的に重大な決断をする時が来たら、これまで触れてきた多くの企業、業種を材料にして、将来を決定できるのではないかと考えています。

 さらに、さまざまな職場で勤務してきた経験が、自分の考える『良い職場』、『良い会社』を形成する材料になっています。わたしは自社の体制について意見できる立場にありますが、その意見の根拠が日々の仕事の中に転がっているのです。

■格上エンジニアとの出会いと人脈の構築

 現在勤める会社は社員数50人に満たない零細企業です。ここで自分より格上のエンジニアを求めるとなると、どうしてもレベルが下がってしまいます(わたしが現在の会社に入社したとき、すでに格上は存在しませんでした)。

 社外で勤務していると凄腕のエンジニアと出会うことがあります。独学では知り得なかった設計手法、目から鱗のソースコードや圧倒的な生産性を“リアルな体験”として目の当たりにし、それらを貪欲に吸収してきた結果が今の自分を形成しています。  

 欲しいのは客観的でグローバルな視点での評価ですから、今の自分にない技能を持つであろう格上のエンジニアに接する機会を社外に求めることのできる勤務形態は、非常に有用であると考えます。

 さらに、他社エンジニアとの親睦が深まって、一緒に酒を飲む関係になると面白くなります。感銘や刺激を受けながら情報交換できる様な人脈(呑みながら麻雀をする関係でもある)を持つことで、社会人として次のステップに進むことができるでしょう。この人脈から受注に繋がることも少なくありません。これは会社の壁を越えた個人の財産となります。

■プロ意識が養われる

 極端な言い方をすれば、社内で勤務している若手社員は自分が失敗しても先輩や上司がフォローしてくれると考えているかもしれません。ところが客先では自社の看板を背負っているわけですから、このような甘えは一切通りません。何の保険もない“自分がやるしかない”状態に身を置くことで、達成のために何が必要かを自分で考える能力が身につくのです。自己の成長回路を回すことは個々に課せられた責任であり、社内か社外かで変わるものではありません。

 しかし、永遠と社内で勤務している内にこの前提が霞んでしまい、人によってはスキルの鍛錬やスケジュールの順守といった当然の責任に対して甘えが生じてしまうものです(温い環境では甘えを自覚することが難しい)。

 現在、自社内開発に従事している社員にも、社外で経験を積ませたいと思っています。エンジニアたるもの、”個”で勝負する経験があって然るべきです。

■自己の絶対的評価を知ることができる

 個人を評価するにあたり、派閥や慣習によって実績とは関係のない”甘辛調整”を施したり、上司の好き嫌いで査定されることもあるでしょう。これは企業によってさまざまですが、我が社では契約金を年収に反映する制度をとっています。つまり自分を評価する人間は月に一度しか会わない上司ではなく、一緒に仕事をしている常駐先の相手企業だということです。

 相手企業はより優秀なエンジニアを参画させたいわけですから、その評価は露骨なまでに正確なものとなります。そもそも違う会社なのですから、お情けが介入しない冷静で正確な評価を知ることができるのです(≒市場価値)。

■人と打ち解けるプロセスが楽しめる

 わたしは、見ず知らずの他人同士が『はじめまして』と名刺を交換することからスタートし、徐々に打ち解けて行くという過程を楽しんでいます。『無理な要求をだしてくるユーザーかな』、『この人、どれだけできるんだろう』などと、最初の内はお互いを警戒(と言ったら大袈裟ですが)しているものです。それが幾多の困難を突破してくうちに互いの能力を認め合い、気心も知れるようになり、必要以上に堅苦しい敬語もなくなって”仲間”と呼べる関係に昇華していくのです。これはすごく楽しいことだと思います。

 このプロセスを繰り返し楽しむためには、新たに人と出会うしかありません。この点においても特定派遣にはメリットがあります。

■まとめ

 社会人は自己の努力も去ることながら、格上のエンジニアとの出会いによって技術的にも人間的にも成長を遂げるものです。その出会いを社外に求めることができる特定派遣事業は、多くの企業や人と接することのできる魅力的な環境です。

 ただし、現在は経験の少ない若手が辛い目に会うことも否定できません。わたしはエンジニアを免許制にすれば良いと考えていますが、それはまた別のテーマということで。

Comment(4)

コメント

ビガー

ビガーです。

先日の私のコラムで特定派遣について、私の狭い見識と経験で失礼な表現をしてしまいました。
大変失礼しました。

>我が社では契約金を年収に反映する制度をとっています。
私がお会いしてきた特定派遣で入られている方にも優秀な方はたくさんいましたが、仕事の範囲を極力広げないような消極的な行動の方が多かったような気がします。上記のような制度ならそういうことも少なくなりそうですね。

>一度案件に参画すると、最低でも1年間はいたりします。
私の場合は、一般派遣という形ですが、その案件で自分の目指すゴールを達成できた段階で契約終了(概ね半年程度で)を打診します。期間が短いので、スキル評価ができないお客様には不評ですが、できる(私ができると思っている)お客様には高い評価をいただけます。
ちょりぽんは、どういう基準で終了されるのですか?会社都合との兼ね合いが面倒そう?

失礼ながら、ちょりぽんさんのような方と仕事してみたいなぁと思いました。

ビガーさん、こんばんは。

>先日の私のコラムで特定派遣について、私の狭い見識と経験で失礼な表現をしてしまいました。
>大変失礼しました。

残念ながら、現状の特定派遣は酷評されて仕方ないと思っています。この業界はそもそも社交性に欠ける人の逃げ道としてスタートしてしまった節があり、私も8年以上業界にいますが、体感では接する8割以上のエンジニアが”至らない”人に分類されます。大部分が未熟者で構成されていると思うのです。

残り2割の同じような考えに至った貴重種とは滅多にお目にかかれませんが、一度お互いを認め合ったなら案件が終了しても交流が続きますね。


>仕事の範囲を極力広げないような消極的な行動の方が多かったような気がします。

一度でも過負荷で酷い目にあった中堅クラスが身に付ける”変なテクニック”ですね。発注側からすれば、本当に使いづらい人だと思います。ご立派に見える経歴書を掲げたベテランが、自分の範疇に引き籠る人たっただなんて発注側は予想できないですよね。これも一種の甘えだと思います。


>私の場合は、一般派遣という形ですが、その案件で自分の目指すゴールを達成できた段階で契約終了(概ね半年程度で)を打診します。期間が短いので、スキル評価ができないお客様には不評ですが、できる(私ができると思っている)お客様には高い評価をいただけます。
>ちょりぽんは、どういう基準で終了されるのですか?会社都合との兼ね合いが面倒そう

相場以上の単価を貰っている身分なので、撤退の打診は先方にとっても重要になりますね。私の場合は、どうしても私が居る必要が無くなったのであれば、撤退したいというアクションを起こす様にしています。フェーズとしては結合試験や受入前のテストで大きい不具合が無い状態に撤退することが多いです。

プロジェクト進行中は契約外ですがプロパーのティーチングをしたりします。私との出会いで何かを得て欲しいので。ですので私の撤退間際は周囲が成長しており、双方の合意のもとで円満に次の案件に移ってきました。

有りがたい事に、やることが無くなっても居て欲しいと言ってくれるお客さんが居ます。有事の際に、また”ハズレのエンジニア”を引くリスクを負うより、私にそのまま居て欲しいという打診も少なくありません(当然単価は下げられます)。ですがこちらも自社の利益を追求するため、やんわりとお断りしてきました。


>失礼ながら、ちょりぽんさんのような方と仕事してみたいなぁと思いました。

お褒め頂いてありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。

EarlGrey

はじめまして、EarlGreyです。

実は私も特定派遣で勤めていたことがありまして、
今思えば結構いいところもあったなあ・・・、と懐かしくなりました。

ただ、

> ■プロ意識が養われる
> ■自己の絶対的評価を知ることができる

というところは、制度上の影響が大きいのかな、というのが感想です。

こうした形態(契約金の○割が各社員に入る、といった)の会社さんと、
数年お付き合いがありましたが、やっぱり意識が高かった記憶があります。
ある種フリーと通常の正社員の中間のような位置にあるからですかね。
(個人事業主組合のような緩やかな共同体が、業態的に似ているかもしれない)

エンジニアの免許制はなかなか面白そうですね。
また拝読させていただきます。

EarlGreyさんはじめまして。
今後とも宜しくお願い致します。

> ただ、
>
> ■プロ意識が養われる
> ■自己の絶対的評価を知ることができる
>
> というところは、制度上の影響が大きいのかな、というのが感想です。


自社の看板を背負って結果を出すという意味でプロ意識を引き合いに出しましたが、給与制度とは関係無く特定派遣エンジニアが持つべき当然の意識だと考えています。如何でしょうか?

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