エンジニアの言い分 -最終話

ワークスタイル

» 2015/02/10

　「百年の孤独さんからコメントが入りました」

　あ、メールが来てる。「百年の孤独」？！　あいつか！　また難癖をつけてきたのか。

　「それはあなたの思い込みであって正確な事実じゃない」ってか。正確じゃなくてもいいじゃないか。報道ジャーナリストじゃないんだから。

　プロのジャーナリストなら、事実の裏を取ってから報道するべきだ。でも私はプロではない。執筆料をもらっているわけでもないし時間もない。１つのテーマに対してネットでいくつかの記事を読むくらいだ。書いたことは必ずしも正確ではないだろう。そこを突っ込むなよ。正確な情報が知りたかったらNHKのニュースでも見ていればいいんだ。

　そもそも言いたいのはそこじゃない。私が書くコラムのパターンはこうだ。こんなニュースがありました。ところで、これはIT業界の○○にも似ている。だから△△しよう。ってパターン。
ここで言いたいのは△△の部分。そこに対しての議論ならいいけど、最初の部分はネタを振るための導入部。

　そこに突っ込んでくるのは、まさに話の腰を折るってこと。本筋の議論すべきことではない。読解力がないんじゃないの？

　私はときには根拠レスな思い込みで書いてしまうこともある。でもそこがコラムの面白いところだろう。事実と当たり前のことだけ書いていたらニュースや社説みたいになってしまう。常識を越えた思い込みは話を楽しくするスパイスでもあるんだ。

　だいたい、嫌なら読まなきゃいいんだよ。私だったら記事やコラムを読んで最初の何行かでつまらなかったら閉じるよ。わざわざ反論を書く内容ではないだろう。コラムに難癖つけてるから仕事ができねーんだ、って誰かも言ってたなあ。

　「百年の孤独」って名乗るくらいだから、きっと高校生のころから友達がいなかったに違いない。哀れなやつだ。

　でも、この百年の孤独さんの難癖のおかげさまで、私もコラムを書くのが上達してきたかもしれない。簡単に調べられることは調べるようにしたし、突っ込まれない文章になるように気をつけるようになったし。

　そういう意味では百年の孤独さんにちょっと感謝してもいいかな。

　鏡月でも飲みながらコメント返しを書くか。

■ツッコミストの言い分

　「ママ、晴耕雨読のロック」

　このコラムニストはいいつも調べもしないで思い込みでモノを書くからいけないんだよ。専門家みたいに詳しく知らなくてもいいけれど、事実と違うことを書くのはいけない。間違ったことを書くことで不快に思ったり傷ついたりする人だっているんだから。日記のようなブログに思ったことをそのまま書くのはまだいいよ。でもエンジニアライフはエンジニアたちの公共の場なんだから。少しは調べて正しいことだけ書けよ。

　思い込みが強いのもよくないね。カリスマ的な人だったら、カラスは白いと言っても信じる人がいる。でも一般の人が常識外れなことを言っても誰もついていかない。独自のことを主張するには確かな根拠が必要だ。思い込みだけを書いても滑稽になるだけさ。

　オチもつまらない。もうちょっとセンスのあるオチが欲しいね。つまらないオチなら無い方がマシだ。「こうすべきだ」、と立派な主張をしているのに、「でも私はできてないんだけど……」的なオチなんかつけるから文章が台無しになるんだ。バカだなあ。

　もっと考えて書けばいいコラムになるかもしれないのに。

　でも2年前と比べればずいぶん良くなったじゃないか。俺様の厳しい突っ込みのおかげで！

　あ、コラムのコメントの返事が書かれたぞ。訂正します、だって。

　俺のコメントの押しに負けて自説を曲げたな。ちょっと言われるとすぐに弱気になるのもいけないね。あいつは押されるとすぐに弱気になるんだから。高校生の頃から変わってないよ。

　あいつもまさか「百年の孤独」がこの久保田だとは思ってもいないだろうな。同級生が陰で辛口コメントで添削してあげているとは。

　「ママ、あそこにある日本酒ちょうだい！」

　ロックウォールに来るたびにこのお酒が気になっていたんだよね。あのコラムニストと同じ名前の、純米吟醸 「阿部勘」。

（完）

■あとがき

　いかがでしたでしょうか。最終話は私がコラムを書きながら思っていることと、思われているであろうことを書いてみました。

　今回初めて小説（のようなもの）を書きました。フィクションを書くのは結構楽しかったですね。一番苦労したこと言ったら、やはり執筆のために登場する多くの焼酎を飲んだこと（そこかいっ！！）。

　飲み代は経費としてサイトの編集担当に請求したいと思います(笑)。

 

　執筆裏話(3)

　「エンジニアの言い分 -第1話」