世界一を目指す楽天の技術部門から、旬な声をお届けします。

世界を目指せばエンジニアはもっとハッピーになる

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■はじめに

 楽天株式会社 開発部の安藤祐介です。アプリケーションエンジニアとしてPHPやRubyのフレームワークやオープンソースのツールの推進などの業務を行っています。また2008年末からは美谷さんからも紹介があったリンクシェアへ出張にいくことが多く、まもなく正式な赴任を控えています。

 社外ではPHPなどのオープンソースコミュニティでよく活動しており、昨年は20回弱社内外の勉強会などで講演をしました。そのおかげか昨年は情報処理推進機構(IPA)が例年開催している日本OSS貢献者賞の奨励賞をいただくことができました。

 社内での業務を直接オープンソース活動に繋げることは難しい時がありますが、アプリケーションフレームワーク、CakePHPのイベントに参加する為の旅費を会社負担で処理してくれたり社内のスペースを一般参加可能な勉強会の会場として利用するなどオープンソース活動に対して理解があり助かっています。

 しかし何よりも実際に海外の開発現場に業務として関われることが貴重だと感じ、「世界で活躍できるエンジニア」という目標を入社時に決めました。

■世界のエンジニアとのカルチャーギャップ

 赴任先の職場や海外で開催されているコミュニティのイベントでは様々な国のエンジニアに出会います。そこで発表されるセッションの内容や雑談は日本では得ることが難しい刺激がとても多くありました。特に印象的だった出来事をいくつか挙げてみます。

  • 多言語対応のシステム開発
    日本でのシステム開発は、表示や処理に日本語を使うことを前提にする場合がほとんどです。しかし海外では英語とスペイン語、英語とフランス語といったように複数の言語を扱うことが前提になることが多いようです。その為、実際のソースコードの中にメッセージなどを直接コーディングせずに定義ファイルを利用する機能などへの理解度がかなり高いようです。
  • 複数の通貨、時間帯への対応
    複数の国や地域で利用されるサービスの場合、通貨の単位を複数扱うことが前提になります。またその場合は補助通貨(ドルに対するセント)などの扱いも必要です。またサーバーの時間をどこの時間に合わせるのか?も日本では時間帯は1つだけですが、例えばアメリカには標準時が複数あります。こういった事柄へ自然にエンジニアが対応している姿はこれまでの経験では見られなかったので新鮮でした。
  • NoSQLに対する関心の高まり
    昨年後半あたりから日本でも話題になってきているNoSQLですが、海外のエンジニアの中での盛り上がりは日本よりも早かったようです。昨年前半の時点でCouchDBやMongoDBを使ってどのような実装をした?なんていう話で盛り上がっている様子を見ていると、日本のエンジニアは少し未知の事柄へ飛びつくスピードが遅れているかなという気もしました。
  • 日本のIT業界の認知度
    楽天は日本での知名度は高いといってよいでしょうが、今のところ海外のエンジニアで楽天やその他、日本のIT企業を知っているという人に出会ったことがありません。オープンソースプロダクトのTokyoCabinetは注目が高いようでセッション内で言及されているのを何度も見ています。また日本製であることも認知されているようです(名前のお陰ですね)。
  • 飲み会のハードさ
    日本でも勉強会などのイベントのあとは懇親会という形の飲み会が開催されることが常です。ですが欧米人の飲み会のスタイルはほとんど食べものも食べずにひたすら飲む! というスタイルでなおかつテンションが高いまま4次会、5次会と続くことが多く楽しいですがそのタフさには圧倒されます。

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ベルリンにて CakePHPのデベロッパFelixと。この体ならタフなのも納得

■”Think out side the box.”  自分の知らないことをどうやって知るか?

 経済やサービスがグローバル化に従って、海外を「脅威」のように捉えた言説を見ることがあります。先に色々とギャップについて触れましたが、「日本が世界より劣っている」という風なことを言いたい訳ではありません。

 エンジニアとして生きることの幸せの1つに「分からなかったことが分かるようになる」というのがあると、僕は思っています。誰もが最初は何も知らないはずですが、さまざまな技術知識や業界知識を身につけながら業務を行っていくはずです。思い返してみてもエンジニアになって最初の数年は驚異的な量の情報が入ってきて楽しかったのを思い出します。

 いろいろと知ったつもりになっていましたが、世界のエンジニアと接するようになってこれまで以上の刺激がありハッピーだと感じます。また逆に言えば、日本だけを考えたままでこれらのギャップに気づくことは非常に難しかったでしょう。

 企業やWEBサービスが世界を目指すアプローチについては最近、ブログ上でも議論が起こっています。「最初から世界へ」というまず視点を世界に向けるべきという意見もあれば、「世界に通用するサービスを作りたいなら日本で流行らないと」という風にまずは日本に目を向けるべきという意見もあるようです。ただエンジニアという立場から考える、とやはり日本という枠にとらわれる必要はないと考えています。

 本来、インターネットや技術には国内・海外という境界線はなく、日本も世界の一部分です。「日本で開発されたプログラミング言語しか使わない!」なんていう風なことを過剰に気にすること自体、エンジニアにとってはあまりないことだと思います。

 面白い技術や知らなかったノウハウに出会うのは楽しいことですし、そのためには視野を国内・海外にとらわれずに大きく持つのはよいことでしょう。またそういったエンジニアが増えていくことが日本のWEBサービスが世界に飛び出して為にもきっと良い影響があると信じています。どう転んだとしてもエンジニアにとっては楽しいことづくめですね!

 ということで、もし誰かに「なぜ世界を目指すのか?」と聞かれたら僕はこう答えます。

 「その方が楽しいから!」

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