もしあの人がITを使ったら -第二話 かぐや姫(後編)
前編の続きです。
■鬼ヶ島で営業
「誰だっ、そこに隠れた白いヤツは?」
しまった。鬼に見つかったワン。
「なんだ犬か。何しに来た」
「わ、ワンたくし、決して怪しい者ではございません」
「犬がしゃべった時点で怪しいゾ。まさかお前も鬼退治に来たのか? ならば『鬼甘いしるこ』の具にして食ってやろう」
まずい。ワンりょくではかなわないし。なんとかごまかさなきゃ。そうだ、娘の彩の営業セットを預かっていたんだった。
「私はS社の携帯電話の営業マンです。実は今キャンペーン中でして、a社からS社に乗り換えるとこんなにお得なんですよ 」
「どれどれ。ほぅ、なるほど。じゃあS社に換えようかなあ」
「今人気のこのiPhone端末でしたらすぐに切り替えられますワン」
「お、これ鬼カッコいいじゃん。これにするー」
ほっ、ノリが軽くて助かったワン。営業セットを持っててよかった。
■つながらない電話
あれぇ、またつながらないわ。鬼ちゃんはいつも「あ、かぐやちゃ~ん♡」って折り返しかけてくるのにかけてもこない。どうしたのかしら? メールしてもいいんだけど、鬼ちゃんは漢字が読めないからなあ。
以前は私も漢字を読めなかったわ。ビリギャルと呼ばれてバカにされてた。でもそれから猛勉強してK大学に受かって映画にも出たんだから。あっ、いけない。今の私はかぐや姫の役だった。今の話はカットね。
今度は桃太郎が鬼退治に行くって教えてあげようと思ったのに。まあ、桃から生まれた男なんて海賊狩りの剣士やもと横綱に比べたら弱っちいから心配しなくても大丈夫よね。鬼ちゃんよろしくね!
■着信履歴は動かぬ証拠
「あなたっ、誰よこの女? かぐや姫って!」
しまった。鬼嫁に携帯の着信履歴を見られたっ。S社の端末に換えたばかりでまだ画面ロックのパスワードを設定してなかったんだよなあ。
「ち、ち、違うんだ、これは」(←浮気が見つかったときに誰でもが言うセリフ)
「この頃隠れて電話してるからなんかおかしいと思ってたのよ。やっぱり女だったのね。携帯は没収。当分は食事抜きよ(怒)!!」
えーっ、そんなあ。食事抜きなんて。お、鬼だーっ。(やっぱり)
■戦いが終わって
「ただいまー」
「お父さん、いったいどこに行ってたのよ? 私の営業セット持ったままで。またセーラームーンに会ってたとか言うんじゃないでしょうね」
「鬼ヶ島に行って桃太郎と一緒に鬼を退治したんだワン。私が偵察に行って鬼が食事抜きで腹ペコになるという情報をつかんだのだ。そして桃太郎に携帯電話で知らせて攻め込んで鬼に勝った。これからは情報社会だ。敵の情報を素早く仕入れた方が勝つんだワン」
「鬼ヶ島って、また馬鹿なことを言ってる。もう一度病院に連れて行ったほうがいいかしら?」
「いや、本当だ。そうだ、iPhoneの契約を鬼から取ってきてやったぞ。これが証拠だ」
桃太郎が鬼退治に行くことになったのも、鬼を退治できたのも、携帯電話があったからなのでした。
第2話 完
■あとがき
この話はフィクションです。実在する人間、犬やCMとは関係ありません。
いかがだったでしょうか。携帯電話のキャリア変更は慎重に! 第3話は実在した(しなかったという説もある)人物が登場します。お楽しみに!
コメント
通りすがり
これはひどいな。
おじさん、はしゃぎ過ぎですよ。
abekkan
いやあ、日ごろのストレスではじけちゃいました(^_^;)