自衛隊式のやり方は、「10倍返しだ」ではなかった
「へーっ、自衛隊ってそうなんだ!」
PMのための「自衛隊式最強リーダーシップ」活用のポイントというPMAJ主催(※1)の、もと陸上自衛隊の石田英司氏によるミニセミナーに先日私は参加した。
■戦場での意志決定
陸上自衛隊では戦場での意思決定の際にMETTを判断基準の指針としている。
- Mission:自分の部隊の使命、任務は何か
- Enemy:敵はどのように動くか
- Terrain:戦場の地形はどうなっているか
- Time:利用可能な時間はどれだけあるか
これらの視点を押さえると戦況推移が読めるようになる。これを民間企業に当てはめると。
- Mission:期待されている自分の役割は
- Enemy:ライバル、競合他社の動きは
- Terrain:市場の動向は
- Time:いつまで時間があるか
となる。これに、Costomer Evaluation:顧客の評価 を加えれば民間のビジネスでも戦況推移が読めるようになるとのこと。
自衛隊では、戦闘時の戦術の立て方まで訓練してるのか。自衛隊の活動というと被災地での救出活動くらいしか見ていなかった。やっぱり戦闘の訓練もしっかりやってるのね。
■マニュアルになくても信条に従った行動を
マクドナルドなどではマニュアル中心で従業員が動いている。決められた対応をきちっと行うが、マニュアル以上のことはしない。それに対して、リッツカールトンホテルやディズニーランドでは従業員が信条に従って動いている。マニュアルに書いていないことでも、必要であれば信条に従って自発的に発想して行動する。従業員が気づく力を持っている。
自衛隊では、戦場ではマニュアルにはないような状況に置かれることもあるため、信条をもって自発的に行動することが必要とされているそうだ。
私が自衛隊に対して持っていたイメージは、マニュアルにない行動は許されず「上官が絶対だ」とか、回りは敵で「やられたらやり返す。10倍返しだ!」 という感じだった。でも話を聞いていると、昔の体育会系の根性論とは違って考え方は理論的。そして意外と個人の考えも重視され、マニュアル外の機転も必要なようだ。
IT業界のプロジェクトマネジメントは、特にPMBOKが登場してからはなんでもマニュアルやドキュメントで管理しようとしている。マニュアル以上の仕事ができるように、信条を持って行動しないといけないな。
■自衛隊式最強のリーダーシップを超えて
さらにこれからのプロジェクトマネジメントはこう変わっていくべきだという話になった。
- どう作るかの方法論重視から、目的と背景を踏まえた顧客の価値重視へ
- 指示されたことを行う態度から、信念を持って自発的に発想し行動する態度に
- 欠点を強制する指向から強みや尖っている部分を伸ばす指向へ
- プロジェクト計画書での管理による人間関係から、メンバーがワクワク感を持って取り組める関係へ
私はこのセミナーは自衛隊式リーダーシップの説明に終始するものだと思っていた。ところが実際は、それを超えたあるべき姿を追求する話になった。講師の石田氏は、自衛隊を出たあと民間企業で営業マネジメントの経験を積み今では教育の仕事を行っている。自衛隊式だけでは不充分だと認識してこの考えに至ったようだ。
マニュアルで管理されるばかりの仕事ではつまらない。これからのITプロジェクトは「ワクワク感を持って取り組める」ようになるといいな。と思った。悪い意味での「ドキドキ感」なら今でも持っているんだけど(^_^;)。
abekkanでした。
(※1)PMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)では、毎月例会として外部の講師を呼んでミニセミナーを行っている。詳しくはこちら 。
コメント
CaptainHide
abekkanさん、早速ありがとうございました。
ポイントをついてコラムにまとめていただきました。
信念、仕事観を持ってもらえれば、ここ一番に強いですよね。
ぶれない自分をもってもらえるように営業コーチをしています。
CapHideより
ほしゅそく
それは航空自衛隊とか幹部用。
下っ端の自衛官には相変わらずの根性論・体罰横行ですよ。
abekkan
>ほしゅそくさん
4年ほど前に聞いたセミナーなので私も詳しいことを忘れてしまいましたが、自衛隊も大きな組織ですから、きっといろいろなところがあるのでしょうね。
全部がこうだ、と思わせてしまうような書き方をしないように私も気をつけたいと思います。
コメントありがとうございました。